こちらからの続きです。
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11881323273.html
人間が他者に対しての感情、
愛情や愛着にはオキシトシンという体内の化学物質が
大きく影響を与えていることがわかりました。
そのオキシトシンの働きは、
進化の過程でより様々な対象への感情に
対応していってきたと考えられています。
これは魚類のオキシトシン細胞の模式図。
下方向へと伸びた突起により、
そこから産卵・出産のためのオキシトシンが放出されています。
これが爬虫類や鳥類のオキシトシン細胞。
魚類のそれから突起が別方向へと延び、
そこから母性のためのオキシトシンを放出しています。
哺乳類になりますと、母性を担っていた突起の先が
さらに延伸し仲間との信頼関係、
父性、男女間の愛情などにも対応するようになりました。
元々、子供を産むためのホルモンだったオキシトシンが
進化の過程で徐々に用途を増やしていき、
人間は成長までに多くの時間や労力を要するため、
母親のみならず、父親や社会の他人の手助けを経て
子供が成長していくために、
そのためのオキシトシン細胞が
進化してきているといえるでしょう。
しかし、このオキシトシンが他者との関係を
良好にする効果があるのであれば、
たとえば、子を持つ男性がパートナー以外の女性と
性的に親しくなってしまう可能性も高くなるのではないでしょうか?
いわゆる男性の"浮気"は、自分の子(とパートナー)に対する
手間や時間の"投資"が減少してしまうことになります。
それでは、子供が育ちにくくなりますので、
そのような要素が進化していくものでしょうか?
ドイツのボン大学での実験です。
被験者は既婚男性30人。
実験は一人ずつ行われ、
被験者の前方には独身女性が立っています。
この女性が少しずつ被験者に向かって歩いてきますので、
被験者は「違和感」を感じたところで女性を制止します。
その制止した時の距離を測るわけです。
まず最初に行われた15人の既婚男性の平均は55cmでした。
続いて、残りの15人でも同じ実験を行いますが、
この15人には事前にオキシトシンスプレーを使用してもらっています。
その結果は平均70cm。
オキシトシンスプレー使用により、
その距離が広がってしまいました。
男性は魅力的な女性がいる場合、
アプローチをしようとするもので、
しかし、既にパートナーがいる男性の場合、
オキシトシンはその行動意欲を減衰させる効果があるようです。
どうやら、オキシトシンは誰彼構わず、
親近感を持たせる効果を持っている訳ではなく、
"部外者"に対しては距離を置こうとするようで、
その人が"仲間"なのか"部外者"なのかを
見分ける作用もオキシトシンが担っていると考えられています。
記憶を司る海馬。
その中の神経細胞、樹状突起。
その表面には無数の出っ張りが樹状突起スパイン。
ここにオキシトシンが作用すると、
スパインは動き始め、
他の神経細胞と接続します。
新たな神経回路はこのようにして作り出され、
オキシトシンが多く出された時の記憶、
すなわち、パートナーとの愛情の記憶が
日々蓄積されていくこととなります。
では、ボン大学での実験はどう考えるべきでしょうか?
レネ・ハールマン博士の仮説では、
オキシトシンにより、
海馬のパートナーとの記憶がより強く思い出され、
脳の興奮が抑制され、
見知らぬ女性を遠ざけようとしたのだと説明されています。
しかし、男女間にはいわゆる一目惚れという出会いがあるのも事実。
それは初めて会った異性に対し、
いきなり愛情を抱くわけではなく、
ドーパミンなどの他の神経伝達物質の働きにより、
その異性を魅力的に感じ、
そして、時間をかけてその異性の記憶が増えていくことで、
オキシトシンの作用により、
強い愛情が生み出されていくのでしょう。
ところで、このオキシトシン、
あるいはオキシトシン受容体には
人により、多い少ないなどの個人差があります。
スウェーデンストックホルムのカロリンスカ研究所には、
スウェーデン国民の30万人ぶんの遺伝子が保存されており、
2年前、この遺伝子バンクで興味深い実験が行われました。
オキシトシンやその受容体が少ない人の遺伝子を見てみますと、
およそ10種類ほどの遺伝子が関わっていることがわかります。
この遺伝子バンクの遺伝子のうち、
全体の40%の人がそういった
オキシトシンやオキシトシン受容体が
少ない遺伝子タイプの人でした。
そこで、エモリー大学のハッセ・ワラム教授は
生まれつきその遺伝子タイプの既婚者に
夫婦生活に対するアンケートを行いました。
相手に対する意見の一致、感情表現、満足度、
協調性などで、オキシトシンが少ないタイプの人は、
通常の人よりもいずれもポイントが低いことがわかりました。
また、過去1年間に離婚の危機があったかという問いに対しては、
通常が11%だったのに対し、
オキシトシンが少ないタイプの人は16%と
これも高いポイントとなりました。
ワラム教授はオキシトシンや受容体が少ない人は
人間関係を重視しない傾向があり、
社会的交流が苦手な場合も多いのではないかと
そう話します。
4割もの人がオキシトシンとその受容体が少ないということは、
そういった少ない人にも進化の面で見れば、
何らかの有利な要素を持っていると考えてよいでしょう。
オキシトシンの影響を強く受けている人の場合、
仲間内では強い人間関係を築けますが、
部外者に対しては排他的になるかもしれません。
逆にオキシトシンの影響が比較的少ないタイプの人は、
仲間内での人間関係では希薄になるかもしれませんが、
部外者に対しても距離を置かずに
接することが出来るかもしれません。
社会性生物である人間にとっては、
どちらも意味があるといえるかもしれません。
以上は先天的な遺伝子の働きによる
オキシトシンの多寡についてでしたが
生活の中でも、体内のオキシトシンの量は変化しています。
アメリカクレアモント大学のポール・ザック教授は、
人間の様々な行動の前後で、
体内のオキシトシンの量が
どのように変化しているかを調べています。
それによると、ハグという行動は、
オキシトシンの量を増やす効果があるようです。
ただ相手に触れるだけでも、
オキシトシンは増えるとか。
また、話す時でも相手の目を見る、
相手の立場、気持ちを想像することも、
オキシトシンが増える効果があり、
初対面の人でも、スポーツやゲームを一緒にすることも、
オキシトシンには大きな意味を持つことがわかりました。
さらに、一人の時でもオキシトシンが増えることもわかっています。
映画や本などで感動するとオキシトシンは増えていて、
登場人物への感情移入が関わっているものと考えられています。
ザック教授はこのように話します。
オキシトシンが増えれば
脳の神経細胞が刺激され、他の人に優しくなれます。
人間は動物と違って、自らホルモンの働きを変えることが出来ます。
なりたい自分になれるのです
オキシトシン細胞のオキシトシン分泌量が増えると、
オキシトシン受容体はその数を増やします。
また、オキシトシン細胞自体にもオキシトシン受容体が存在し、
自らが放出したオキシトシンが増えることで、
自らのオキシトシン受容体も増えることに。
つまり、意図的にオキシトシンを増やそうとした場合、
それは一時的なものではないということになります。
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