この地域にお住まいですとお気づきだと思いますが、
大阪の都市部にはクマゼミが多いことが知られています。
私が住む場所は大阪市内ではありませんが、
住宅地であり、ほとんどクマゼミの鳴き声しか聞くことが出来ません。
東京をはじめ、他の都市部のほとんどでは、
クマゼミよりもアブラゼミが多く見られるんですが、
大阪は違うようです。
なぜ、大阪にはクマゼミが多いのか?
私の子供の頃にはもっとアブラゼミもいて、
それが減ったのはヒートアイランド現象により、
気温が上昇、元々クマゼミがより暑い気候に暮らす南方系の種であり、
より住みやすい環境である彼らが生き残っているんだと、
私もそう聞いてきましたが、
それ以外の理由もあるのではないか、というお話です。
まずは事実から見てみましょう。
2011年の自然学習の一環で調査した抜け殻のデータによりますと、
大阪府全体では74%がクマゼミで、
アブラゼミは24%でした。
これを大阪市内に限ったデータですと、
クマゼミが98%、アブラゼミが2%とさらに極端になります。
大阪市内ではほとんどがクマゼミで、
これだけ少ないと、やがてアブラゼミが姿を消してしまう可能性もあります。
これらの2つの種のセミの生息個体数に
影響を与えている要因は何でしょうか?
産業技術総合研究所の森田実研究員は
その理由について2点を挙げています。
クマゼミでは夏に木の枝に卵を産み、
翌年の7月下旬~8月初旬に幼虫が孵化します。
これはアブラゼミやツクツクボウシなどより
遅いタイミングでの孵化になります。
この孵化の時期が近年早まっているようで、
その要因はやはりヒートアイランド現象による都市部の局地的な気温上昇で、
気温が高くなることで、孵化までの期間が短縮、
特にアブラゼミでは梅雨時にまでなってしまっているとか。
孵化したセミの幼虫は地中へ潜りますが、
この時、アリなどの天敵に襲われる危険性があるものの、
雨の日は比較的危険性が低くなるようです。
気温が高くなる、梅雨時に孵化する、クマゼミの幼虫の生存率が高まる、
ということですね。
そしてもう一つ。
森山研究員は、土の固さに着目、
様々な固さの土に4種のセミの幼虫に土を掘らせてみたところ、
固い土ではアブラゼミの幼虫は掘り進むのに苦労していて、
逆のクマゼミは土が固くても難なく掘ることが出来たとか。
もしも都市部の温暖化などで大阪都市部の土が乾燥化が進んでいるとすれば、
より土を掘る能力に長けたクマゼミが
より生き残ることが出来ているという説明です。
大阪市内でも例外もあり、中央区の靱(うつぼ)公園では、
クマゼミとアブラゼミの割合はほぼ同じだといいます。
靱公園はこのように木々があり、
この事から、大阪市立自然史博物館の初宿成彦主任学芸員は、
靱公園の林はうっそうとしているので、(市内の)長居公園よりも土の湿度が保たれていることが要因のひとつでは
と推測します。
東京23区と比較して、大阪市は面積全体に占める緑の割合が
2/3程度しかありません。
大阪府郊外の万博公園(吹田市)にも
たくさんのアブラゼミが確認されていて、
割合では72・1~77・6%、クマゼミ11.5~16.8%となっていて、
東住吉区の99%がクマゼミであるのと比べてみても、
こちらはアブラゼミのほうが暮らしやすい環境なのかもしれません。
東京「ジリジリ」大阪「シャッシャッ」東西でセミの鳴き声が異なる理由は…カギは大阪の“乾いて固い土”
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140803/wlf14080318000011-n1.htm
これらの話から、緑が繁るような土地があれば、
土も湿度を保つ事が出来、
アブラゼミも生息しやすくなるということになりそうですが、
事はそう単純でもないようです。
米蝉ナール
http://outdoor.geocities.jp/kawasemisou/index.html
京都産業大学附属中学高等学校生物部の活動の模様なんだそうですが、
ヒートアイランド現象や、
土の固さとセミの種の相関関係が認められないという結論に至っています。
ここ5年のデータがないのが残念ですが、
非常に興味深いので、
ご興味がございましたら、一読されてみてはいかがでしょうか?
クマゼミの増加、アブラゼミの減少については、
以上のような要因の他に、
米蝉ナールに見られる種ごとの樹種嗜好性の仮説もあり、
なかなか一筋縄では解決できない疑問であるようです。
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東京などの都市に少なく大阪都市部に多いクマゼミ、アブラゼミは減少…なぜ?
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