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青色LEDと研究者の流出と企業 -ノーベル物理学賞受賞-

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毎年のようにノーベル賞受賞者が出ているような感のある日本。
ノーベル賞は研究の価値を評価する一つに過ぎないとは思うものの、
やはり、日本人としては誇らしく思う限りです。
まあ、文学賞と平和賞については、
その価値を評価できないことも多いのですが。

2002年に小柴昌俊先生がニュートリノの観測で物理学賞を受賞された時、
その事を熱く語っていましたら、
「それが何の役に立つのか?」と問われて、
言葉に窮したことがあります。
私の場合、技術的な価値よりも、
自然界の根本に関わる基礎研究を面白がりますので、
私の想像力ではきっと実生活には役立たないだろうけれど、
ニュートリノの話は大好きだったりします。
ただ、今回の研究は違います。小柴先生も

すばらしいことだと思います。どちらかというと浮世離れした私の研究とは違い、大変に世の中の役に立つ研究に貢献してこられた皆様に心からおめでとうございますとお伝えしたいと思います

とコメントされています。

赤崎勇名城大終身教授、天野浩名古屋大教授、
中村修二カリフォルニア大サンタバーバラ校教授の研究ほど
身近にその研究の成果を感じるノーベル賞受賞があったでしょうか。
強い光を放つ青色発光ダイオードがなければ、
光の三原色が揃わず、
この21世紀の世の中は違ったものになっていたでしょう。
青色LEDを目にしない日はありません。
テレビや照明、Blu-ray、交通信号機、
スマートフォンなどの携帯電話、
大阪道頓堀のグリコの巨大看板もネオン管からLEDに変わりますね。
それに、発送電能力の乏しい途上国でも、
消費電力の小さいLEDなら活躍出来ることでしょう。
これらは青色LED、またはそこからの研究で生まれた技術がなければ、
不可能だったかもっと高コストであったはずです。

ただ、私にとって、この青色LEDの技術について、
最も記憶に残るのが中村先生の訴訟だったりもします。
それは中村先生が"日本人"とは言い切れないことに関わっています。

今世紀中に青色の発光ダイオードの実現は不可能

20世紀中にはそう言われていた青色LED。
これさえ出来れば、光の三原色である赤・緑・青が揃い、
白色光をLEDで実現することが出来るのはずなのに、
世界で研究されているにもかかわらず、
それを実現させる研究者は出てきませんでした。

1990年、日亜化学工業社員だった中村修二氏が
青色発光素子である窒化ガリウム結晶の作製を可能にする装置を発明、
日亜化学は同年に特許出願していて、3年後にそれが商品化、
この頃に私も新聞で大きく取り扱われていたことを覚えています。
その時、中村氏に支払われたのが報奨金の2万円だったそうです。

業務で開発した研究の成果は企業だけのものなのか?

2001年、中村氏は退社後に裁判でそれを問います。
3年後の東京地裁は被告の日亜化学に対し200億円の支払いを命じています。
しかし、日亜化学は控訴、高裁の和解勧告により、
双方が同意、その歳、日亜化学が支払うことになったのは、
8億4千万円となってしまっています。
この時の和解が、中村氏の本意でなかったことは、

日本の司法は腐っている

という彼の発言からもわかります。

彼は2000年にカリフォルニア大学サンタバーバラ校で
材料物性工学部教授に就任しています。
おそらく、日本という国が研究者にとって魅力的ではなかったからでしょう。
そこなら、正当な評価を得られるはず、
だから、彼は渡米して国籍を取得、
現在も同校の教授職です。
彼の訴訟の結果は、先生自身にとっては
不本意な終わり方だったのでしょうけれど、
後に大きな意味を持つことになります。

現行の特許法では、特許権は開発した社員に帰属することになっていますが
これはこのいわゆる中村裁判から始まった「企業と社員研究者」の問題が、
社会問題化したためです。
企業には開発のリスクとコストを伴います。
日亜化学も、この研究には開始段階で3億円を中村先生に使わせています。
もちろん、それが充分とは言えないでしょうが、
世の中、なかなか3億を使わせてくれる企業は少ないでしょう。
したがって、現在の制度は企業にとって厳しいとは思いますし、
今も特許法第35条「職務発明」については、
改正が議論されていると思います。
ただ、一ついえるのは、この日本に研究者にとっての魅力がない場合、
日本は見限られてしまうということです。
優秀な頭脳の流出は日本の国益を損ないます。
研究の成果は報われなくてはなりません。
それは、研究の成果の対価のみならず、
研究費、研究システムにもいえることです。
世界でトップの頭脳の持ち主の中で、
山中伸弥京都大学教授のように
金銭的に困難を極めても日本に留まり続ける研究者は
そうはいないのですから。




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