小学校では今でも顕微鏡でミジンコを見るのでしょうか?
肉眼でも確認出来る微生物だけに、
馴染み深さもあるわけですが、
新たな事実の発見と謎が生まれて実に楽しいです。
分類学で見ますと、ミジンコは節足動物門甲殻亜門ということで、
カニやエビなどと同じ甲殻類ですね。
漢字で書くと、微塵子だそうで、
他の表記では水蚤、でも英語では"water flea"なんですね。
東北大学大学院生命科学研究科・占部城太郎教授の研究チームによりますと、
国内の300ヵ所以上の池や湖で採集したミジンコのDNAや
ミトコンドリアDeNAを解析した結果、
その由来が北米であることがわかったそうなんです。
ミジンコは循環単為生殖という生活環です。
これはメスだけでの子(遺伝的にクローンのメス)を産む単為生殖を行いつつ、
餌不足などの環境の悪化があった場合、
オスを産んで有性生殖を行い、
乾燥などに耐えられる休眠卵を産むということです。
ところが、日本のミジンコの細胞核DNAを解析しますと、
核遺伝子型が1種類であることがわかったというんです。
有性生殖が行われた場合、
雌雄それぞれ由来の遺伝子が組み合わさった様々な配列が見られるはずで、
日本のミジンコはそうではなく、
つまり、有性生殖が行われた形跡がないということで、
絶対単為生殖型だということですね。
そして、日本のミジンコには4つパターンのミトコンドリアDNAがあり、
さらに、それはそれぞれ北米のミジンコに類似していた、と。
これらのことから、北米からミジンコ4個体が日本にやってきて、
そのまま定着、または交雑が起こって
現在に至ったというのがチームの結論となります。
帰化生物には人間が関わっていることが普通です。
近年は環境破壊の考え方が普及していますので、
多くの場合、それは非難されたりもするんですが、
日本の場合、長く外国との交流は制限されていて、
特に北米となると、ペリー以前には考えづらいです。
ミジンコ4個体はどのようにして、日本にやって来たのでしょうか?
進化生物学、分子進化学には分子時計という考え方があります。
DNAの塩基配列、
蛋白質のアミノ酸配列などの分子構造が変異することに着目し、
共通の祖先を持つ種が進化の過程で分岐した年代を推定するんですけれど、
この日本のミジンコの場合、4タイプのミジンコの場合、
近年の分岐であると推定されたものの、
残り2タイプは700~3000年前に
日本にやって来たのではないかという推定になりました。
コロンブスがアメリカ大陸に到達したのはそれ以後ですね。
大航海時代はヨーロッパ人によって作られ、
それ以前は、ネイティブ・アメリカン以外、
そこに大地があることを知りませんでした。
どうやら、ミジンコ4個体を日本に運んだのは人間ではないようです。
考えられるのは、渡り鳥ですけれど、
渡り鳥は周年で行き来をしていますので、
渡り鳥が定期的にミジンコを運んでいたなら、
遺伝子は現状よりも多様性が見られたはずです。
ミジンコはたった4個体を起源とする北米からの帰化種だった ―日本に生息する生物の意外な由来―-(PDF)
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20150407_01web.pdf
進化生物学は面白いですね。
NHKスペシャルで「目の進化」が扱われましたけれど、
今、進化論の考え方が大きく変化しています。
パラダイムシフトと呼んでもいいかもしれません。
こんなふうに、いろいろと今までの考え方では説明出来ない事実が発見され、
固定概念が覆されていくのは実に刺激的です。
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日本のミジンコは北米由来の4個体が起源 ~Youはどうして黒船前に?~
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