ギリシャ危機の問題をこのブログで最初に扱ったのは4年前。
その頃から、私の考えも変わりました。
現実をよりよく説明出来る理論に出会えば、
考えを変えなくてはなりませんので。
さて、今、ギリシャがたいへんです。
ずっとたいへんですが、
IMFへの返済期限を迎え、
いよいよ、いよいよという感じでしょうか。
自分のお金なのに、引き出せなくなるという事実、
そして、それが消え失せるかもしれないと思ってしまうと、
そりゃあ、誰でもとりあえずは少しでも現金を回収したいと思いますよね。
こういう騒動を取り付け騒ぎなどといいますが、
ギリシャ政府はその防止のためとして、
引き出し金額に上限を設けたようで、
しかし、それ自体が騒動の種になってしまいます。
ATMの現金枯渇し、観光客も悲鳴を上げているとも報じられてもいます。
日本にも取り付け騒ぎは何度もありました。
しかし、たいていは特定の金融機関に対する不信感などが原因で、
その対象も限られていて、国家規模、
全ての金融機関が対象となる取り付け騒ぎといいますと、
昭和恐慌
の時のこととなります。
その後の世界恐慌の時も「昭和恐慌」と呼ばれたりしますので、
この1927年(昭和2年)の恐慌は「昭和金融恐慌」としています。
原因としまして様々な要因があるんですけれど、
決定的となった要因は単純です。
当時の大蔵大臣・片岡直温が
東京渡辺銀行がとうとう破綻を致しました
なんて言ってしまったからです。
経営状態が悪いのは事実だったようですが、
破綻はしていません。
この事実に基づかない失言により、
東京渡辺銀行だけでなく、国内の金融機関に預金者が殺到しました。
このために日本国内の紙幣が不足、
混乱を収めるために、日本銀行は急遽二百円紙幣を発行しました。
(国立印刷局より)
裏が白紙です。それだけ急いで印刷したんですね。
表にしてみても、それは簡易なオフセット印刷であるようです。
この騒ぎで銀行は2日間の臨時休業、
その2日間に不眠不休でこのお札は印刷されてたんですね。
通称「裏白二百円」。
これは兌換券で、すぐに回収され、
その珍しさから現在は数百万円で取引されるんだとか。
ともあれ、これで国内の紙幣不足は沈静化、
ひとまず、取り付け騒ぎは収まったようです。
もしも、我が国が国内の中央銀行発行の通貨を使用していなければ、
このような策は打てません。
現在のギリシャを見てみます。
ギリシャは2001年1月1日にEUの経済連盟に加入し、
従来の独自通貨であるドラクマからユーロへと移行させました。
これが現在の騒動の最大の原因でしょう。
ハイパーインフレになろうがなんだろうが、
お札を刷ってバラ撒けば、とりあえずはなんとかなります。
ドラクマ時代のギリシャも、
現在同様、国外に多くの債権者がいたことでしょうが、
一時的とはいえ、その場を収めることが出来ます。
しかし、ユーロ導入後はこれが行えません。
これまでギリシャは何度も債務不履行、
あるいは債務条件の変更などが行われてきました。
その度に、ドラクマの価値は低下、
急激なドラクマ安になってきた訳ですが、
そのおかげで、観光客が増えたんですね。
観光大国であるギリシャですから、
その結果、今度はドラクマの価値が上昇します。
そして、また債務不履行などが起きると、
ドラクマ安になって、以下繰り返しとなります。
一時期、このままでは日本も
ギリシャのようになる
とさかんに言われていましたよね。
そういう人たち、今、どうしているのでしょうか?
その言について、訂正されたのでしょうか?
我が国は自国の中央銀行である日本銀行が発行している
独自通貨・日本円を使用しています。
よって、真実に基づいた情報が共有されている限り、
日本ではこのような状況にはならないでしょうし、
万が一起こりうるとしても、収束させる方法を持っています。
また、ギリシャのように、
国家としての債権者、国債の保有者が国外ばかりではありません。
日本の場合、国債の多くは日本銀行や他の金融機関が持っていて、
私たちは金融機関に対し、
預金という名前の貸し付けを行っているわけで、
つまり、私たちが債権者でもあり、
また、日本国と日本政府は世界一の対外純資産国、
世界2位の外貨準備高でもあります。
よく「国の借金」などといいまして、
「国民一人あたり」という意味のない喩えも目にします。
財務省によりますと
何でも、今は国民一人あたり800万円以上の借金を抱えている状態なんだとか。
政府の財政を家庭や企業の財務状態に喩えることが誤りですが、
それなら、なぜ日本が持っている債権が考慮されないのでしょうか?
家庭や企業なら、
貯蓄額などの債権が加算されて計上されることでしょう。
1000万円の負債を抱えている家庭でも、
それを上回る資産を保有していれば、
経済的に困窮していることにはなりません。
それなのに、そこは無視する。意図的に。
財政健全化、プライマリーバランス云々なんて、
嘘を用いなければ説得力を持たせることが出来ないのかもしれません。
そう印象づけたい連中は、自分たちに都合のよいところだけ喩えに用いて、
都合の悪いところは、見えないふりをする。
騙されてはいけません。
話を元に戻しますが、ギリシャはユーロを使用することとともに、
国内の経済政策を独自に行えなくなりました。
日本ならば、日本銀行と連携してという経済政策がとれますが、
ギリシャの場合、
いちいちECB(欧州中央銀行)にお伺いを立てねばなりません。
ここの了承が得られないと、国内の通貨流通量を増やせないばかりか、
税率決定などまでも行えません。
現在のギリシャは深刻なデフレですが、
その解消のための経済政策が打てないんです。
本来独立国が有しているはずの経済政策決定権、
これを手放してしまったんですね。
幸い、日本は独自の経済政策を行うことが出来ます。
しかし、今後はどうでしょう?
まずはTPPですね。
停滞することを期待していたアメリカの議会で進展があり、
話が前に進んでしまいそうですが、
あれは、我が国が持っている経済政策決定権の一部を手放すという協定です。
自国の各品目の関税を決めることは、
独立国として当然の権利ですが、
ここを放棄するんですね。
今後は、自国の産業を守るための関税、
その産業に従事している国民の生活を守るための関税が取り払われるのです。
我が国やアメリカ、イギリスなどの先進国は、
保護貿易で成長してきたわけです。
保護貿易の何が悪いのか、
自由化することで何が得られるのか、
皆、なんとなく
自由=素晴らしい
みたいになっていますけれど、
その先入観を取り払って考えてみますと、
各国それぞれの国民にとって、
単純な貿易自由化は不利益であるという結論にはならないでしょうか。
ECBは量的緩和を実施中、それでデフレが解消されたでしょうか。
EU全体がデフレであることと、
加盟国間での貿易で関税が発生しないことは無関係でしょうか。
日本の現在を見ればわかるように、
通貨流通量を増やすことはデフレで無意味ではありませんが、
それだけで、景気を浮上させることは不可能です。
如何に需要を増やすか、それが問題になります。
そのためには、収入を増やす、
国内の労働者の実質賃金を上げるためには、
その国独自の経済政策が必要です。
その国にはその国にしかない気候や風土、
国民性などの独自の事情があります。
私たちは選挙で国会議員を選出し、
私たちの代表たる各議員が予算、法案を採決していきます。
しかし、TPPのような国際間の協定の場合、
私たちの意思がそれらに関わることは出来ません。
私たちの意思によらない政策決定が、
協定の中で行われるんです。
EUは成功しているでしょうか?
ドイツの一人勝ち、欧州全体でデフレに陥っているではありませんか。
イギリスは脱退の可能性を踏まえた国民投票を行うといいます。
一つの製品を求めようとするとき、
皆がより価格の低い品を求めてしまえば、
そうでない品は売れなくなり、
その産業に従事している人の収入は低下するでしょう。
収入が減るわけですから、当然、デフレになります。
ギリシャの場合、政府の放漫財政、
勤勉ではない国民性などが原因ともいわれますが、
ギリシャのみならず、EU各国がデフレに陥っている現状から、
EUというシステムの構造的欠陥に原因があると判断しなければなりません。
EUの欠陥が明らかになってきているのに、
TPPにこだわる人の神経がわかりません。
日本はギリシャのようになるな
この言葉は「国の借金」という
誤った情報を広めるために使用されましたが、
私はこの言葉を自国の権利たる独自の経済政策を行使する権利を放棄すると、
ギリシャのようになってしまうという意味で、
日本はギリシャのようになるな
と、これを主張することとしましょう。
まだこの言葉にはもう一つの意味があるんですが、
それはまた。既に脱線部分でお書きしてはいますが。
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