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ビーバップ!ハイヒール「その一皿に人生が詰まっている… 最期のご馳走」 その1

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私は様々なジャンルの番組を見ていますが、
グルメ情報だけで終わりそうな番組は見ません。
何が面白いのか全くわからないんですね。

先週のビーバップ!ハイヒールで、
事前に食べ物の話だと聞いていたので、
今回はハズレかと思っていましたら、
開始15分で涙を流してしまいました。

今回のカシコブレーンは
淀川キリスト教病院に勤務されている管理栄養士の大谷幸子さん。
この病院はホスピス・こどもホスピス病院も運営、
ホスピスでは終末期ケアが行われます。

淀川キリスト教病院のホスピスの病院食では、
週1回、「リクエスト食」が出されています。
患者は食べたい物を食べることができます。
「本当は毎日できれば」と、大谷さんは仰いますが、
毎日最大で15人ぶんのメニューを用意するのは不可能で、
現在の週1回でも、現場の負担は大きいようです。

このリクエスト食を発案したのが大谷さんでした。
日本初となる国立病院での栄養サポートチームを確立した実績もあります。
ホスピスでの食事について、
大谷さんはこのように話します。

たいていの方は癌と闘って、
手を尽くしたというような状況で入って来られるので、
副作用で食欲が低下する、辛くて食べられない、
という思いを持っていらっしゃる方が多いですね


手術や抗癌剤、放射線治療を経て、
完治を目指すのではなく、
このホスピスで療養する患者たち。
ここで人生を終えることになるのであろう患者たちに、
もう一度、食べる喜びを。

リクエスト食というアイディアはご自身の体験から生まれたそうです。
国立病院に勤務されていた頃、
夫からの電話で彼が癌であることを知らされます。
余命1ヶ月。
彼に食べたい物を訊くと、
メロンが食べたいと言います。
しかし、彼は腹水が溜まっていて物が食べられない状態です。
切ったメロンに浮かぶ果汁をスプーンですくって
彼の口へと運びます。

美味い

これが彼の最期の食事となりました。

2012年、淀川キリスト教病院のホスピスでリクエスト食が始まります。
いつものように、何が食べたいかを質問すると、
咽頭癌の手術で声が出せないある男性患者が文字で返事しました。

らっきょう2、3粒

大谷さんは、なぜらっきょうで、
なぜ2、3粒なのかが気になりながらも、
それを出したところ、
たいへん喜んでもらえたそうです。
その直後、この患者の容態が急変、
数日後、彼は亡くなってしまいました。

それからは、「食べたい料理」に加え、
「なぜ、それが食べたいのか」を質問するようにしました。
「白いご飯」をリクエストしたある患者は、
貧しかった頃に食べた白米の思い出からのものでした。
ある患者の「鯖寿司」は、
それまで何かいいことがあると食べていたもの。
人生最後のご褒美、最後の幸せがそれぞれの料理なのです。


ホスピスという性質から、
事前に準備することが困難なリクエスト食。
悲しいことですが、入院期間がわずか数日の患者もいます。
金曜日の午後、大谷さんはリクエストを訊くために病室をまわります。
当時70歳だったその男性患者は
2週間前に直腸癌が見つかり、余命1ヶ月の宣告を受けていました。

コロッケ、お願いできる?
ジャガイモだけのシンプルなやつがええわ
素朴な味が美味しかったなぁ


コロッケと言われたからといって、
ただコロッケを作るだけではありません。
食材、味付け、量など、
その料理について望んでいるものを知らなくてはなりません。
この男性患者は昭和40年代半ば頃、
京橋に住んでいて、ある日、通勤途中に新しい店を見つけました。
そこはコロッケ定食のお店でした。
メニューはジャガイモコロッケとクリームコロッケだけ。
カリッと揚げられた衣に中はホクホク。
お皿にはキャベツが添えられていました。

話は当時のお仕事へと移ります。
彼の勤め先は心斎橋プランタン。
心斎橋筋商店街にあったプランタンは、1956年創業の喫茶店。
2003年に惜しまれつつ閉店するまで、
動物パンなどでも親しまれていました。
彼は20歳の頃からここにウエイターとして勤務。

スパゲティもお願いできますか?

当時の思い出を話す中で、
彼の記憶が蘇ります。
プランタンで食べていた
賄いのイタリアンスパゲティがリクエストが加わりました。
プランタンでは、湯がいたパスタを一晩冷蔵庫で寝かせて、
翌日、調理していました。

これが、ごっつ美味いんですわ

リクエストを聞いた大谷さんは厨房へと向かいます。
それぞれの患者のためだけのリクエスト食を実現するためには、
調理師たちとのミーティングが欠かせません。
さらに、彼女は京橋へと向かいました。
彼が望んだコロッケを再現するために。
しかし、彼が食べたとされる店は既になく、
聞き込みや、ネットからの情報を頼りに味の再現のための情報を集めます。

リクエスト食当日。
もしも、リクエストどおりの料理を再現できるとしても、
それをそのまま出せばいいという訳ではありません。
ここは病院。
療養病棟とはいえ、塩分量など、
患者の体のために考えなくてはならないこともあり、
また、歯が弱いなどの事情にも配慮しなければなりません。

これや、これや
上手に作ったぁるわ
泣けてきそうや


人間の記憶はいい加減なもので、不変ではありません。
味の記憶が美化されていることも多いでしょう。
思い出の味を完全に再現できることはあまりないのかもしれません。
それでも、自分のためだけに料理を用意してくれる人がいる。
その事が、その料理の味の一部ともなります。
出されたその食事は、
言葉どおりの「ご馳走」なのです。


…続きます。






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