抗インフルエンザ薬として現れた
マルボキシル(商品名ゾフルーザ)が効かないウイルスが見つかったとして、
メディアが騒いでいます。
ゾフルーザが使用可能になったのは昨年3月のことで、
今冬になってメディアが注目の新薬として
センセーショナルに採り上げてきました。
抗インフルエンザ薬で最も有名なのは
タミフルですが、これはカプセルタイプとドライシロップの形で、
1日2回5日間服用することになります。
次に有名なのはリレンザですが、
こちらは吸入薬になります。
これも1日2回5日間ですね。
吸入薬ですので、説明しても練習してもできない人が出るのは仕方なく、
子ども用のこんな動画もありますが、
飲み薬と比べてややハードルが高いかなと思います。
イナビルも吸入薬ですが、こちらは4回吸入するというものですので
すぐに吸入してしまえば、継続して使用する必要はありません。
ただ、これも吸入薬であり
練習用の吸入器もありますが
できない人はできないというものではあります。
あとはラピアクタがありますけれど、
こちらは点滴薬ですので、
一般がどうこう考える必要はないでしょう。
ゾフルーザは飲み薬でしかも1回の服用で効果を発揮するというものです。
しかし、日本小児科学会の2018-2019の関連文書を確認しますと、
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2018_2019_influenza_all.pdf
バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ(R))は、インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害する。ウイルスのmRNA合成を阻害し、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する新しい作用機序の抗インフルエンザ薬として2018年2月より製造販売承認を受けている3,4)。同薬の使用については当委員会では十分なデータを持たず、現時点では検討中である。
としています。
また、日本感染症学会もその使用を推奨していません。
昨年10月の文書では
今後の臨床症例を蓄積して、当薬剤の位置づけを決めていく必要がある。
http://www.kansensho.or.jp/guidelines/1810_endonuclease.html
としています。
そもそも、臨床試験(治験)の段階で既に、
成人で1割、小児で2割にゾフルーザは耐性ウイルスが確認されていたのに
マスコミはゾフルーザのメリットばかりを伝えて
こういったリスクの面を採り上げなかったことが問題なのです。
一方、
「ゾフルーザ効かない」ウイルス 全国で警報レベル
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20190125-00410602-fnn-soci
こういう見出しも大間違いです。
大間違いどころか煽り見出しです。
フジテレビの動画ニュースですが、
このタイトルは前半と後半で別のことを言っており、
前半はゾフルーザ耐性ウイルスについて、
後半ではインフルエンザの流行が全国で警報レベルだと言っています。
これでは、ゾフルーザ耐性ウイルスが全国で流行しているように見えます。
このニュースの中で川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は
ただちにこれでゾフルーザがだめだとか、インフルエンザウイルス薬はもうだめだというところには結びついていかないので、慎重な継続調査が必要である
としています。
おそらく、抗インフルエンザ薬を使用する場合は
タミフルが多いかと思います。
マスコミはタミフルが異常行動を誘発すると散々報道してきました。
実際はタミフルの服用の有無にかかわらず、
インフルエンザ患者に異常行動を起こすケースはあり、
その確率も服用の有無で変わりませんでした。
子どもがインフルエンザにかかったら、
タミフルを飲もうが飲むまいが
異常行動への注意が必要だということになります。
ゾフルーザの問題も、
まともな医師ならその点を認識しているはずで、
基本的に使わないとしている医師も少なくないでしょう。
ゾフルーザに耐性ウイルスが!
と大きく報じられていますが、
一般の私たちはあまり大騒ぎすることではないように思います。