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カンボジアに架けられた日本橋 ~技術者と兵士たちの闘い~

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前に猫ひろしさんの件で、
私なりの意見をお書きしてみたんですが、
その後、カンボジアと日本の関わりについて知りたいと思い、
出来れば織豊時代ぐらいの話をと思いつつ、
そちらはまた時間のある時にでも捜すとしまして、
今回はこんなお話。
先週の「ビーバップハイヒール」からです。
このエピソードは、昔「プロジェクトX」でも扱われましたね。

お話はお金、世界の紙幣についてでした。
紙幣といえば、我が国でもそうですが、
人物の肖像画が描かれているという印象があるんですが、
必ずしもそうではなくて、
たとえば、このカンボジアの

1000Riel Cambodia banknote

旧1000リエルには工事現場の絵があります。
重機と人が描かれています。

私たちにとっては紙幣に工事現場の絵というのは、
考えられないことです。
なぜ、このような絵がお札に描かれることになったのでしょうか。

1966年、我が国の援助で架けられた橋、
この橋の通称が日本橋でした。

しかし、1973年から内戦が始まり、
この橋は1979年、反政府ゲリラによって破壊されてしまいました。
その後、この橋は再建されずにいました。

この橋はプノンペンとカンボジア東北部の農村地帯を結ぶ、
経済的にも重要な意味を持っていた橋で、
ここが復旧されないということは
国内の経済発展の障害ともなっていました。

時の首相、フン・センは日本政府に依頼し、
1993年、橋の修復の計画がスタートしました。

現場責任者は大林組の田辺勝義。
彼はそれまでも多くの途上国で橋を架けてきていて、
まさしく架橋のスペシャリストでした。
しかし、日本からのスタッフは通訳を入れてもほんの数名、
そしてカンボジアには雨期があります。
この期間に工事は出来ません。
工期はそれまでの半年間しかありませんでした。

さらに、地雷。
軍の地雷撤去を待たなければ、工事が出来ません。
ただでさえ、時間がない工事です。
しかし、それ以上に問題だったのが、
橋を架ける技術者がこのカンボジアには一人もいなかった事です。
田辺は現地で50人ほどの技術者を集めるつもりでいましたが、
カンボジアの技術者は先の内戦で
ほとんどが殺されてしまっていたのでした。

そこで田辺は軍から人員を集めることにしました。
内戦が落ち着き、失業寸前の軍人なら、ということでしたが、
時間やヘルメット、安全靴の着用など、
規則や安全面から田辺が大声で怒鳴りつつ教えていかねばなりません。
そして、作業が遅れていようと、
時間がくれば構わず帰る彼らたち。
田辺はまた怒鳴り散らして彼らを指導していました。
彼には自信がありました。
これまで数多くの途上国での経験で、
厳しく叱る事が現場をまとめるコツだと知っていたのです。
最初は反発を受けるものの、
最後には一丸となる事が出来るはずだと。

しかし、カンボジアでその経験則は通用しませんでした。
作業員と田辺たちの関係は悪化するのみ。

見かねた通訳が教えてくれました。

強圧的に作業をさせられるということが、
現地ではどうしてもポル・ポト時代の
強制労働を思い起こさせるというのです。

彼らが遅刻していたのは家に時計がないから。
これまでヘルメットや安全靴がなくても問題なかったから。
それがカンボジアでの常識だったのです。

田辺はそれから言葉ではなく、
自らそれぞれの作業をやってみせることで、
作業内容を教えることにしました。
そして、なぜヘルメットが必要なのか、
それぞれの規則は何のためにあるのか、
丁寧に話して聞かせました。

やがて、彼らのほうから田辺たちに質問してくるようになり、
見違えるように働くようになります。

ようやく、作業が順調に進み始めます。
しかし、そんな時、この橋の爆破予告が。
これ以上建設を進めるのであれば、
橋を爆破するというのです。
ポル・ポト派からのものでした。
実際に日本人が殺されるに及び、
多くの日本人はカンボジアを脱出、
田辺は帰国すべきかどうか、
現場責任者として決断しなければなりません。

彼はここに残るとカンボジアの作業員たちに宣言します。
橋が出来るまで帰らないと。
そして、カンボジアの作業員たちは、
もしも何があれば自分たちが守る、と誓い合いました。

厳重な警備の中、さらなるポル・ポト派による脅迫、
飛び交う銃弾にも負けず、
一丸となって工事は続けられました。

1994年、日本橋再建完了。


その後も彼らはカンボジア国内に13の橋を建設、
命がけで橋を架けたそんな彼らの姿を、
カンボジア政府は1000リエル紙幣に描く事にしたという訳なのでした。

1000Riel Cambodia banknote




ねてしてタペ


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