こちらの記事からの続きです。
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これはフランスのドミニク・アングルが描いた
「アフロディーテ(アプロディーテー)の誕生」。
そしてこれよりも有名なのが
イタリアのサンドロ・ボッティチェッリのこの絵。
「ヴィーナスの誕生です」。
ローマ神話のヴィーナス(ウェヌス)が
ギリシャではアフロディーテに当たります。
古代ギリシャのキプロス島、
ここには若き独身の国王、ピュグマリオンがいました。
彼には愛する女性がいます。
その女性を愛するが故に、ずっと彼は独身だったのです。
彼が愛する彼女の名前はガラテア、
ピュグマリオンが彫った彫刻です。
彼は現実の女性に失望し、理想の女性の像を自ら彫りました。
彼女が裸であることを可哀想に思うと服を用意、
彼女が何も食べていないこと可哀想に思うと、
食事を用意しました。
起きている時も、寝ている時も、
頭の中にはガラテアだけ。
しかし、相手は彫刻。
ベッドで添い寝をしても、
ガラテアの体からは鼓動が感じられず、
体温を伝えてはくれませんでした。
ピュグマリオンは願います。
ガラテアを生身の女性に、そして我が妻に
その願いを愛の女神、アフロディーテが聞き届けます。
ガラテアの体に拍動が、
そして、抱きしめると温もりを返してくれるようになりました。
二人は愛し合い、子供が産まれます。
二人はこの幸せを与えてくれたことに感謝し、
代々永遠にアフロディーテを祀ることを誓ったのです。
時は過ぎ、ピュグマリオンとガラテアの曾孫で
美しく育った王女のミュルラ(ミュラー)は、
女神への崇拝を怠っていました。
そんな彼女が恋をします。
しかし、それは誰にも話せないこと。
決して、愛してはならない相手だったのです。
身を投げて全てを終わらせようとも考えました。
それを止めてくれたのが彼女の乳母、
乳母は自分にだけは訳を話して下さいと願います。
王女から話を聞いた乳母は、
死んでは愛する人の顔も二度と見る事が出来ないと、
諭します。
乳母は王女が愛する彼と引き合わせることにしました。
祭の夜、王女は愛する相手が泥酔しているのを見て、
その寝所へと忍び込みます。
身分も顔も隠したままで。
相手には顔を見ないという約束で、
夜を共にしました。
毎夜毎夜、彼女は彼の寝所にやって来て、
夜を共に過ごしていきます。
12回目の夜、彼は彼女が誰なのか、
どういう姿をしているのかを見る事にしました。
灯りを手に取り、隣に寝ている彼女の顔を見た彼は叫びました。
ミュルラ!?
彼はキニュラス王。
ミュルラの父だったのです。
それはアフロディーテの、
自分への崇拝を疎かにしたミュルラへの罰。
愛してはならない、実の父への恋だったのです。
ミュルラは走り出しました。
城を飛び出し、一目散に森の中へと走ります。
走りながらも、彼女は一つの事実を自覚していました。
自分が父の子を宿しているという事を。
城には帰れない、城どころか国にも帰れない、
身籠もっている彼女は死ぬに死ねません。
禁断の罪を犯した自分は天界にもいけないでしょう。
彼女は願いました。
この罪を背負ったまま生き続けなければならないならば、
この世の者でもなく、
黄泉の国の者でもない者となりとうございます。
両腕を天に差し上げ、そう叫ぶと、
彼女の脚は動かなくなっていきました。
体を揺らす事も出ません。
わずかに揺らす事が出来たのが腕だけ。
その腕も自らの意志で動かしているのではなく、
風が彼女の腕を揺らしていたのでした。
彼女を憐れに思った神々が、
彼女の願いを叶えたのです。
彼女は木の姿になってしまいました。
この木の名前はミュルラ。
彼女が流す涙、樹液には殺菌効果があり、
古代エジプトでは死者を墓所に葬る際に、
防腐効果を得るために使用していました。
墓所の中のその遺体は、ミイラと呼ばれています。
…番組では、この後、1分足らずで話を終えているんですが、
私としましては、それで終わるのも気持ちが悪いので、
続きをお書きすることとします。
今夜で終われませんでした。
お書きしていて気付きました。
語る側になりますと、ギリシャ神話はキリがありません。
番組ではもう一つ、ヘラクレスの出生の話も扱われていましたが、
そちらのほうまで手が回りませんので、
ミュルラのお腹の中の子、アドニスについてのお話を、
明晩お書きして、ひとまずの最後にするつもりです。
なお、ミュルラがアフロディーテに呪われた理由に、
こう書いている資料もありまして、
それも少しだけご紹介しておきます。
ミュルラはたいへん美しかったそうです。
あまりの美しさのミュルラを讃えて
アフロディーテも敵うまい
と言った人物がいたとか。
それが彼女の父のキニュラス王なのか、彼の一族の誰かなのか。
それに怒った女神がミュルラに呪いをかけた、
という話もあります。
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