「実験刑事トトリ」
で都鳥が動物学者時代に描いたらしい絵が出てきましたけれど、
ここで彼がオシドリの生態について少し触れていましたね。
これは歌川広重の「花におし鳥」。
昔から仲睦まじい夫婦の姿として捉えられていたそうで、
「オシ」も「愛し」と同根だとも言われています。
これがオシドリのカップル。
鳥類で雌雄の外見が大きく異なる場合、
たいていは派手な方がオスで、
地味な方がメスです(鳥類以外でも)。
このオスのカラフルさは日本の野鳥で一番だとも。
結婚式を指して
鴛鴦の誓い
「えんおうのちかい」なんて、
電報でも聞かなくなったかもしれませんが、
おしどり夫婦
という慣用句も含めまして、
その仲の良さが人間の目に留まってきました。
では、実際のオシドリのオスとメスの関係は
どうなのでしょうか?
秋、その池ではさながら集団お見合いのように、
オシドリが集まっていました。
色とりどりで派手な羽毛のオス、
そして、この「イチョウ羽」と呼ばれるピンと立った部分、
メスには見られない特徴です。
このオスが生きていくには不要であるはずなのに、
このような特徴があるということは、
何かしらの特別な意味があるはずです。
オシドリの場合、ここがピンと美しく立っているかどうかを、
メスが審査しているんです。
もう一度、この2枚のオスを見比べてみて下さい。
メスといる時のほうが、
イチョウ羽により力が入っていることがわかると思います。
そして、頭。
メスに一所懸命にアピールしているんですね。
羽毛が美しいということは、
自分が健康体であることを表しています。
そしてダンス。
首を前後に振って、メスに猛アピールです。
この動画では、多数のオスに言い寄られている1羽のメスが見られます。
フラれることもあります。
しかし、1度ぐらい袖にされても諦めません。
情熱的で押しが強くないと、
メスは選んでくれないでしょう。
もしも、メスにその気があるなら、
オスと同じように、ただし少し控えめに首を前後に振ることになります。
こうして、真の「おしどり夫婦」が誕生しました。
一度カップルが成立すると、
オスは片時もメスから離れなくなります。
この動画では、20秒ぐらいからカップルの姿が映っていますが、
時々、メスの羽毛の世話を焼いている様子も見られます。
なぜ、オスはメスから離れないのか?
繁殖期に必ずしも、全てのオスが
メスとカップルになれる訳ではありません。
必ず、多数の「あぶれオス」が出てしまいます。
このあぶれオスはカップルの近くでうろつき、
隙あらばと、メスを奪おうとします。
だから、オスはメスから離れられないという訳なんですね。
このメスにぴったりと寄り添う姿が、
私たちの目には仲睦まじく写るため、
「おしどり夫婦」という言葉が生まれたのでしょうか。
オシドリ雑食ですが、主に植物食です。
藻などの水草を食べることが多いようで、
この動画ではドングリをくわえています。
特に餌の少ない冬は、
森の中でドングリを食べることも多いそうですね。
カップルとなったオシドリは、
メスが食事をしていても、
オスだけは辺りを見回していることがあります。
オシドリは警戒心の強い水鳥ですが、
食事中のメスに危険がないか、
見張っているのでしょうか。
すると、上空にトビが現れました。
メスは食事中でまだ気付いていません。
いち早くトビに気付いたオスは、
大きな水音を立てて、飛び立ちました…?
オスが先に逃げてしまいました。
少し遅れて飛び立つメス。
その時、メスの元いた場所にオスはいました。
あえて派手な動きを見せ、
戻って見せることで、トビの気を惹き、
メスを逃がそうというのでしょうか。
メスが田んぼに向かえば、
オスもそれについていきます。
メスが木の枝に止まれば、
オスも後に続きます。
こうしてべったりとメスからオスが離れないのは、
自分の子孫を残すため。
どういう訳だか、オシドリの雌雄の出生率は偏っていて、
メス1に対して、オスはその1.5倍も生まれています。
だから、たくさんのあぶれオスが出てしまうんですね。
このあぶれオスたちも自分の子孫を残そうと懸命な訳で、
カップルのそばをうろつくことになります。
半年間一緒のカップルであろうとも、
隙あらば、という訳です。
守る側のオスも必死で、
オスが近づいてきたならば、
他のオスたちも追い払わねばなりません。
体当たりして、追い立てて、クチバシで突いて…
カップルになったオスは油断大敵なんです。
美しい羽毛のオスのオシドリ。
しかし、初夏にもなると、
羽毛の生え替わりの時期となり、
こんな姿になってしまいます。
では、この時期のメスがどうしているかというと、
産卵に備えています。
オスには与り知らないことです。
この時期には既に、カップルではなくなっているんです。
産卵の時期にもなれば、
あぶれオスへの警戒も不要になります。
だから、もうメスの後をついて回る必要もなくなったという訳です。
鳥類の研究では、雌雄の姿が大きく異なる種ほど、
オスが子育てに参加しない傾向にあることがわかっていて、
オシドリもその例に漏れないということに。
秋にカップル成立、そして冬を越して、
春、初夏と半年で夫婦生活は終わり、
また次の秋になると、集団お見合いで、
新しい組み合わせのカップルが誕生します。
これが生態学でのおしどり夫婦という訳ですね。
(パートナーが変わるのはカモ類共通ではありますが)
産卵期の頃のオスはオスだけの群れで暮らす一方、
メスは産卵のための準備をしています。
オシドリが産卵するのは、
水鳥なのに木の洞が多いようで、
この中で、何日もかけて十数個の卵を産みます。
その卵の下には柔らかそうな羽毛が。
これはお母さんが自分の胸から抜いた羽毛なんだそうです。
お母さんも時には食事に出かけます。
その間、卵を守る者はいなくなりますが、
巣から出る時にお母さんは、
羽毛を卵にちゃんとかぶせてから、
上からは卵が見えないように、
そして、卵が冷えないようにしてからなので大丈夫です。
巣箱の中ですと、こんな感じ。
産卵から1ヶ月ほどすると、卵が孵ります。
次の日の朝、お母さんが洞から顔を出しました。
背中には生まれたばかりのヒナが乗っかっていますが…
その次の瞬間…
お母さんと一緒に飛び降りてしまいました。
10m以上の高さからのダイビングでしたが、
ヒナは無事です。
そして、巣の中では我先にと、
他のヒナたちが出口に殺到していました。
これがオシドリのヒナの巣立ち。
現在まで、ヒナが怪我したとかいう報告は聞かれません。
飛び降りたら、急いでお母さんの後をついていきます。
天敵に襲われないように必死のヒナたちなのでした。
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