安倍総理大臣とオバマ大統領での会談で、
「例外品目」があり得るということになりました。
日本としては「米」を
まずは例外にすることを目指すのでしょうか?
何を守って何を守らないかという選択になるんですが、
守られなかった業種に対してはどうしていくつもりなのでしょうか?
前政権からずっと、一切それが聞こえてきません。
たとえば、砂糖の関税が撤廃された場合、
間違いなく国内の砂糖農家4万戸は壊滅状態となるでしょう。
「日本の農業は優れている。優れた作物を輸出して活路を」
という声は真実ではあるんですが、
砂糖において品質競争で戦ってみたところで、
それに魅力を感じる市場は限られています。
ということは、砂糖農家には転作か転職してもらわねばなりません。
砂糖に限らず、様々な分野でこの問題が起きることでしょう。
政府はこの問題をどうしていくのでしょうか?
韓国は米国とのFTAで上手く国内の構造を転換できているでしょうか?
私には韓国経済をとてもではありませんが、
健康だとは思えません。
「TPPはアメリカの策略だ」なんていう声もあります。
ただ、私はそうであっても、当然だと思っています。
米国政府は自国の利益のための外交を行っているのみで、
ならば、我が国も自国の利益のための外交が行われるべきで、
それがTPP参加ではないと言いたいだけです。
多数の国家が参加し、
関税が撤廃されている地域が既にあります。
欧州連合、EUがそうです。
EU加盟国の領域内であれば、
関税がかけられることなく、
物やサービスをやりとりできることになっています。
このEUで最も経済的に成功したのはドイツでしょうか。
唯一の勝ち組とまで言われていました。
それに加えてドイツの状態がいいため、
その恩恵でオーストリアがやや良いと言われてきました。
範囲を広げるならば、あとはベルギー、オランダ、ルクセンブルク、
北欧諸国も健全だとされています。
比較的勤勉な国民性と政治が安定している国々が
経済を支えています。
負け組と呼ばれている国では、
特にギリシャ、スペイン、イタリア、ポルトガルなどが酷く、
南ヨーロッパ、あるいはラテン系国家が特に負けているようです。
EUを席捲するドイツ製品。
優れた商品を提供できるドイツが勝つのは必然なら、
他の国々に対して、
それだったら、それぞれの国でも
良い品物を作ればいいではないか、
競争力のある品物を作れないのは、
その国の人の責任なのではないか、
そういう意見が出てくると思います。
しかし、国情はそれぞれ違うんです。
勤勉であるかどうかは別にしても、
たとえば、先に挙げた我が国の砂糖農家にしてみても、
どれだけ彼らが頑張ってみても、
競争力なんて備わるはずはありません。
24時間働きづめで働いたとしても。
努力でどうにかなる問題ではないんですから。
ドイツに経常黒字をもたらしたのは、
ドイツ国民の勝利なのかもしれません。
しかし、EU域内での需要が決まっているとすれば、
その供給を満たすモノにドイツ製が占める割合が増えた場合、
他の国、それがたとえ自国内でも
その国の品物は売れなくなってしまうことになります。
市場のパイは決まっています。
企業でも同じで、1社のシェアが大きくなっているとすれば、
同業他社の製品は売れなくなっていることになります。
それは国内の産業の衰退、
雇用の喪失に繋がります。
ドイツの成功は、
他のEU諸国の赤字によって成り立っているともいえます。
弱肉強食、それも当然という声もあろうかと思います。
しかし、ドイツの勝利の要因は、
他が負けているからだけではないんです。
ドイツは国内の労働者に対して、
賃金の上昇の抑制をかけていることで、
その競争力が得られているとすれば?
2000年代、ドイツの企業は収益を上昇させましたが、
その10年間で労働者賃金は約1%も低下しています。
ドイツの一般国民は経済的に幸福だとはいえないんです。
これはサムスン、ヒュンダイなどの輸出企業が、
国際的に成功しているにもかかわらず、
国民の労働者賃金が一向に上昇しない韓国と似ています。
(こちらはさらに物価高でもあるけれど)
そして、それで終わらないのが怖いところで、
昨年末ぐらいから、
ドイツの勝っている状態も怪しくなってきているんです。
EU域内の経済が冷えてしまいましたので、
輸出による利益が落ちてきています。
当然です。他国民の購買力が落ちているんですから。
相対的には負け組ではないはずですが、
既に勝ち組ではないのではないでしょうか。
この点については、これからまた持ち直すかもしれませんが。
もしも、日本が国際競争力を持とうとするなら、
ドイツのように賃金の上昇を抑制するか、
韓国のように低賃金で働くことを
私たちが受け入れることが最低条件となるでしょう。
事は農業だけの問題ではありません。
あらゆる産業が、
あらゆる状況を無視して、
世界の競争に晒されようとしているんです。
原発を動かさないままでは、
生産に欠かせない電力はさらに高騰するか高止まりでしょう。
それで国際競争力が獲得出来るでしょうか?
急激に円安になっていますが、
それでも円高なんです。
高い法人税、高い人件費など、
日本には関税以上の障害があります。
現在、東南アジア諸国や中国などからの製品が
日本国内に蔓延しているのは、
それぞれの土地で生産した方が低コストだからで、
仮に、TPPに参加したとしても、
それに変化が生まれるはずもありません。
もしも、TPP参加で産業の空洞化が改善されるのであれば、
話は違うのかもしれませんが、
そういう理論には出会いません。
なぜ、関税が設けられているのでしょうか?
一つには国家収入の意味もありますが、
それよりも大切なものが忘れられていませんか?
それを考えていただきたいと思います。
それを撤廃した時、
生ずる不利益を上回る利益が
私たちにもたらされるとでもいうのでしょうか?
国土も違う、風土も違う、
人口も違う、国民性も違う、
経済規模も違う、法律も違うんです。
関税とは、国内産業と市場の保護、
育成、振興のために設けられているものです。
それを取り払うことに、
どんなメリットがあるのか、
あるとすれば、国際的に商取引をしている企業だけ。
その企業に勤めている人も含めて、
ほとんどの国民は幸せになりません。
もしも、上手くいったとしても、
必ずこのシステムには無理が出てきます。
国土も違う、風土も違う、
人口も違う、国民性も違う、
経済規模も違う、法律も違うんですから。
その時、なぜ、こんなものを推し進めたのだろうか、
と言っても遅いかもしれません。
EUのように、
誰がこんなアイディアを出したんだ!?
不幸の始まりだったじゃないか!
と言われる日がきっと来ます。
まだ、日本は交渉参加を表明するであろうとされている段階です。
どんな誹りを受けてもいいですので、
出来る限り早い段階での撤退に期待しています。
願わくば、交渉が決裂して、
TPPなんていうアイディアそのものが、
この環太平洋地域から消えてなくなって欲しいものですが。
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