コンコルドを最後に、
超音速旅客機はもう二度と現れないかと思っていましたが、
実は研究されていたんですね。
しかも、この分野をリードしているのが日本なんだとか。
先週はそんなお話でした。
約40年前、ニューヨークと東京が直行便で結ばれます。
パンアメリカン航空ボーイング747SP、
要した時間は約14時間。
今はどれぐらいでしょうか?
フライトタイム.jp
http://www.flighttime.jp/
こちらのサイトで確認してみますと、
出発便 [東京 → ニューヨーク] 約 12時間30分~13時間
帰国便 [ニューヨーク → 東京] 約 13時間40分~14時間20分
となっています。
40年近く経っているのに、
旅客機は進歩していないのでしょうか?
実は旅客機の飛行速度は全然変わっていません。
もっと速い旅客機は作れないのか、
その理由とそれを解決しようとしている研究があります。
作ることは可能で、
実際に製造され、運行もされていました。
それがこの機体です。
コンコルド
このコンコルドは、
音速をはるかに超える高速での飛行が可能でした。
その最高速度は
マッハ2.0
つまり、音速の2倍です。
音速を約1225km/hだとすれば、
1秒間に音は約340mも進むことが出来ます。
現在就航している国際線の旅客機の3倍ぐらいは
高速で飛行することが出来るものでした。
しかし、現在、コンコルドは就航していません。
20機が製造され、10年程前に全機が退役しています。
このコンコルドには大きな問題がありました。
その一つが
衝撃波
で、この問題については、
ロシア 巨大隕石大爆発 衝撃波について考える ~音速を超えると生じる衝撃波とは?~
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11474294068.html
こちらでご覧頂くとして、
この衝撃波とともに、
私たちが襲われることになるのが、
この
ソニックブーム
です。
移動する物体が音速を超えると、
この衝撃波とソニックブームが現れることになり、
超高高度を飛行するコンコルドでも、
ソニックブームの問題はクリアできませんでした。
航空機の機首の先端では空気が圧縮されて、
空気の密度の濃い部分が出来ます。
機首が空気を押しのけて移動しているからです。
この濃い部分が前方を含む四方八方へと拡散していき、
これが音として私たちの耳に届きます。
大気中に発生した音とは、
空気の波である訳ですが、
空気の波である以上、音速よりも速く進むことは出来ません。
音速、マッハ1で飛行した場合、
この空気の波は機首で圧縮されて溜まることになります。
航空機が音速を超えていると、
空気がより圧縮されてしまいます。
これは速度が速いほど、強く圧縮されることに。
これが衝撃波です。
このように、航空機のソニックブームは、
2つの音として聞こえることが一般的で、
まず最初の音は機首で圧縮された空気の波によるもので、
2つめの音は、機体後部は逆に空気が薄くなっているため、
それが戻る時に発生する音です。
このソニックブーム、つい最近、
私たちもテレビなどでそれを聞くことになってしまいました。
今年2月のロシア・ウラル地方のチェリャビンスクを襲った
隕石の動画です。
40秒過ぎにその爆発音を聞くことが出来ますが、
これは隕石が地上などに衝突した音ではなく、
これこそが超高速の隕石が発生させたソニックブームであり、
人や建物に被害を出した衝撃波なのでした。
コンコルドの場合、超高高度を飛ぶことで
衝撃波による被害を地上に及ぼさないようにしています
(高速で飛行するためでもありますが)。
しかし、ソニックブームは地上の私たちの耳に届いてしまいます。
この尖った機首、
この細い三角形の主翼、
そしてこのコンコルドの客室部分は、
なんと180cmほどの高さしかありません。
それもこれもマッハ2.0で飛ぶための設計です。
しかし、ソニックブームのため、
すぐに陸地の上で超音速での飛行を禁止されてしまいました。
英仏が共同で両国の威信を賭けたこのコンコルドでしたが、
このソニックブームの問題、
そして、時代は速度よりも大量輸送へとその要求がシフト。
コンコルドは最初で最後の超音速旅客機だと、
私はそう思っていました。
しかし、今、このソニックブームの問題をクリアし、
次世代の超音速旅客機を目指して研究している人がいます。
東京三鷹市にあるJAXA調布航空宇宙センター飛行場分室。
ソニックブーム研究のスペシャリスト、
牧野好和さんです。
コンコルドが発生させる衝撃波を
コンピューターにより可視化し、
特に強い部分を赤くしてみます。
このように機首には強い衝撃波が発生していますが、
すぐにその波は減衰していきます。
これならば、地上がソニックブームの爆音に
悩まされるはずはありませんが…
翼付近にまた強い衝撃波が出現しています。
そして、機体後部では、
機首のそれとは比較にならないほどの衝撃波が…
グラフで見てみます。
空気の圧力(衝撃波の強さ)を縦軸に、
時間の変化を横軸にとっています。
最初に現れる小さめの山が機首から発生した衝撃波で、
次の大きな山が翼から、
最後の大きな谷になっているのが機体後部からの衝撃波です。
これらの衝撃波が地上に地上に到達するまでの変化を見ます。
それぞれの衝撃波は時間とともに減衰していきますが、
やがて機首から衝撃波と、
翼からの衝撃波が合わさってしまいました。
衝撃波はより強いものほど、
高速で進むという性質があります。
機首からのそれよりも翼からのそれのほうが強く高速であるため、
追いついてしまいこのような現象が起きます。
以後、衝撃波はほとんど弱くなりませんでした。
だから、地上にまでソニックブームは届いてしまい、
また、それが2回の爆発音として聞こえるのでした。
合体した衝撃波はなかなか弱くならない。
では、合体しなければソニックブームも
大きくならないはず。
その発想からデザインされた機体が
D-SEND#2
この機首からのシルエットをご覧下さい。
コンコルドのように尖ってはいるものの、
コンコルドのように直線的ではありません。
わずかに波打っています。
これが衝撃波を統合させない工夫です。
コンピューター上のシミュレーションでも、
衝撃波が分散している様子が確認出来ます。
また、機首下部の丸みは、
あえて強い衝撃波を発生させるために付けられました。
コンコルドでは翼の衝撃波よりも
機首の衝撃波よりも弱いために、
翼の衝撃波に追いつかれてしまっていましたが、
機首で強い衝撃波を発生させれば、
追いつかれることはなくなります。
これらの工夫の結果、衝撃波はコンコルドと比べて、
1/4
にまで軽減出来るという計算になりました。
JAXA D-SEND#2 落下試験
このD-SEND#2の他にも、
日本では超音速旅客機の研究がされています。
東北大学流体科学研究所の大林茂教授が提案するのは、
なんと、超音速の
複葉機
です。
私たちには、このようなクラシカルなイメージしかない
二枚羽根の複葉機ですが、
翼をこのように対向させた場合、
それぞれの翼が発生させる衝撃波を、
もう一方の翼の衝撃波が打ち消す効果があるというのです。
その理論に基づいてデザインされたのが、
MISORA
この機体では衝撃波がほとんど発生しないと教授は説明します。
さらにそれを低減させ、その目標は
ノックの音
のレベルなんだそうです。
また、NASAではこのような
可変斜め翼(オブリーク翼)機AD-1での
ソニックブーム軽減効果の研究を進めているそうです。
超音速旅客機はもう二度と現れないかと思っていましたが、
実は研究されていたんですね。
しかも、この分野をリードしているのが日本なんだとか。
先週はそんなお話でした。
約40年前、ニューヨークと東京が直行便で結ばれます。
パンアメリカン航空ボーイング747SP、
要した時間は約14時間。
今はどれぐらいでしょうか?
フライトタイム.jp
http://www.flighttime.jp/
こちらのサイトで確認してみますと、
出発便 [東京 → ニューヨーク] 約 12時間30分~13時間
帰国便 [ニューヨーク → 東京] 約 13時間40分~14時間20分
となっています。
40年近く経っているのに、
旅客機は進歩していないのでしょうか?
実は旅客機の飛行速度は全然変わっていません。
もっと速い旅客機は作れないのか、
その理由とそれを解決しようとしている研究があります。
作ることは可能で、
実際に製造され、運行もされていました。
それがこの機体です。
コンコルド
このコンコルドは、
音速をはるかに超える高速での飛行が可能でした。
その最高速度は
マッハ2.0
つまり、音速の2倍です。
音速を約1225km/hだとすれば、
1秒間に音は約340mも進むことが出来ます。
現在就航している国際線の旅客機の3倍ぐらいは
高速で飛行することが出来るものでした。
しかし、現在、コンコルドは就航していません。
20機が製造され、10年程前に全機が退役しています。
このコンコルドには大きな問題がありました。
その一つが
衝撃波
で、この問題については、
ロシア 巨大隕石大爆発 衝撃波について考える ~音速を超えると生じる衝撃波とは?~
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11474294068.html
こちらでご覧頂くとして、
この衝撃波とともに、
私たちが襲われることになるのが、
この
ソニックブーム
です。
移動する物体が音速を超えると、
この衝撃波とソニックブームが現れることになり、
超高高度を飛行するコンコルドでも、
ソニックブームの問題はクリアできませんでした。
航空機の機首の先端では空気が圧縮されて、
空気の密度の濃い部分が出来ます。
機首が空気を押しのけて移動しているからです。
この濃い部分が前方を含む四方八方へと拡散していき、
これが音として私たちの耳に届きます。
大気中に発生した音とは、
空気の波である訳ですが、
空気の波である以上、音速よりも速く進むことは出来ません。
音速、マッハ1で飛行した場合、
この空気の波は機首で圧縮されて溜まることになります。
航空機が音速を超えていると、
空気がより圧縮されてしまいます。
これは速度が速いほど、強く圧縮されることに。
これが衝撃波です。
このように、航空機のソニックブームは、
2つの音として聞こえることが一般的で、
まず最初の音は機首で圧縮された空気の波によるもので、
2つめの音は、機体後部は逆に空気が薄くなっているため、
それが戻る時に発生する音です。
このソニックブーム、つい最近、
私たちもテレビなどでそれを聞くことになってしまいました。
今年2月のロシア・ウラル地方のチェリャビンスクを襲った
隕石の動画です。
40秒過ぎにその爆発音を聞くことが出来ますが、
これは隕石が地上などに衝突した音ではなく、
これこそが超高速の隕石が発生させたソニックブームであり、
人や建物に被害を出した衝撃波なのでした。
コンコルドの場合、超高高度を飛ぶことで
衝撃波による被害を地上に及ぼさないようにしています
(高速で飛行するためでもありますが)。
しかし、ソニックブームは地上の私たちの耳に届いてしまいます。
この尖った機首、
この細い三角形の主翼、
そしてこのコンコルドの客室部分は、
なんと180cmほどの高さしかありません。
それもこれもマッハ2.0で飛ぶための設計です。
しかし、ソニックブームのため、
すぐに陸地の上で超音速での飛行を禁止されてしまいました。
英仏が共同で両国の威信を賭けたこのコンコルドでしたが、
このソニックブームの問題、
そして、時代は速度よりも大量輸送へとその要求がシフト。
コンコルドは最初で最後の超音速旅客機だと、
私はそう思っていました。
しかし、今、このソニックブームの問題をクリアし、
次世代の超音速旅客機を目指して研究している人がいます。
東京三鷹市にあるJAXA調布航空宇宙センター飛行場分室。
ソニックブーム研究のスペシャリスト、
牧野好和さんです。
コンコルドが発生させる衝撃波を
コンピューターにより可視化し、
特に強い部分を赤くしてみます。
このように機首には強い衝撃波が発生していますが、
すぐにその波は減衰していきます。
これならば、地上がソニックブームの爆音に
悩まされるはずはありませんが…
翼付近にまた強い衝撃波が出現しています。
そして、機体後部では、
機首のそれとは比較にならないほどの衝撃波が…
グラフで見てみます。
空気の圧力(衝撃波の強さ)を縦軸に、
時間の変化を横軸にとっています。
最初に現れる小さめの山が機首から発生した衝撃波で、
次の大きな山が翼から、
最後の大きな谷になっているのが機体後部からの衝撃波です。
これらの衝撃波が地上に地上に到達するまでの変化を見ます。
それぞれの衝撃波は時間とともに減衰していきますが、
やがて機首から衝撃波と、
翼からの衝撃波が合わさってしまいました。
衝撃波はより強いものほど、
高速で進むという性質があります。
機首からのそれよりも翼からのそれのほうが強く高速であるため、
追いついてしまいこのような現象が起きます。
以後、衝撃波はほとんど弱くなりませんでした。
だから、地上にまでソニックブームは届いてしまい、
また、それが2回の爆発音として聞こえるのでした。
合体した衝撃波はなかなか弱くならない。
では、合体しなければソニックブームも
大きくならないはず。
その発想からデザインされた機体が
D-SEND#2
この機首からのシルエットをご覧下さい。
コンコルドのように尖ってはいるものの、
コンコルドのように直線的ではありません。
わずかに波打っています。
これが衝撃波を統合させない工夫です。
コンピューター上のシミュレーションでも、
衝撃波が分散している様子が確認出来ます。
また、機首下部の丸みは、
あえて強い衝撃波を発生させるために付けられました。
コンコルドでは翼の衝撃波よりも
機首の衝撃波よりも弱いために、
翼の衝撃波に追いつかれてしまっていましたが、
機首で強い衝撃波を発生させれば、
追いつかれることはなくなります。
これらの工夫の結果、衝撃波はコンコルドと比べて、
1/4
にまで軽減出来るという計算になりました。
JAXA D-SEND#2 落下試験
このD-SEND#2の他にも、
日本では超音速旅客機の研究がされています。
東北大学流体科学研究所の大林茂教授が提案するのは、
なんと、超音速の
複葉機
です。
私たちには、このようなクラシカルなイメージしかない
二枚羽根の複葉機ですが、
翼をこのように対向させた場合、
それぞれの翼が発生させる衝撃波を、
もう一方の翼の衝撃波が打ち消す効果があるというのです。
その理論に基づいてデザインされたのが、
MISORA
この機体では衝撃波がほとんど発生しないと教授は説明します。
さらにそれを低減させ、その目標は
ノックの音
のレベルなんだそうです。
また、NASAではこのような
可変斜め翼(オブリーク翼)機AD-1での
ソニックブーム軽減効果の研究を進めているそうです。