場所は北米大陸と南米大陸をつないでいるパナマの熱帯雨林。
この緑色の川の正体は、
中南米ではお馴染みのハキリアリの行進。
背中のトゲと長い脚が特長です。
彼女たちは体の2倍もの重さの葉っぱを運ぶことが出来、
葉っぱを運んでいる大きな体のアリは1.5cmほど。
小さいものは5mmほど、
大きい体のアリは大きな葉を、
小さなアリは小さめの葉を運ぶようです。。
そのハキリアリの行進の列を乱す大きなアリが。
葉っぱを運ばないだけでなく、
行列の流れを横切ったり。
大きさは2cmぐらいあります。
彼女は兵アリと呼ばれる戦闘要員。
働きアリの行進を警護しているところです。
ハキリアリの行進では、
前に通った仲間のフェロモンを道標に進むので、
彼女たちが通る経路はやがて
このように踏み固められた道になってしまうんですね。
そんな道に横たわる大きな枯れ葉が。
働きアリの行進に渋滞が発生しました。
そんな時に現れる道路整備担当のアリたち。
枯れ葉を大勢で引きずって、道端まで運びます。
作業時間は10分ほど。
この列は長いものだと10mにもなります。
こんなにもたくさんの葉っぱは
どこから持ってきているのでしょうか?
行列には葉っぱの流れと逆行する働きアリも見られます。
流れを遡りつつ、時に葉っぱを担いでいるアリと
頭をぶつけ合います。
こうして、葉っぱの位置などの情報を交換しているんです。
また、彼女たちは音でもコミュニケーションをとっていることが
最近わかってきました。
流れを遡ってみますと、
彼女たちは20m以上もある木の上から
葉っぱを切り出しているようでした。
そして、周囲を見てみますと、
他の木からの切り出していて、
どうやら、ハキリアリは
たくさんの種類の木の葉っぱを運んでいるようです。
こうして葉っぱを切断します。
大きな顎を鋏のようにするのではなく、
片方の顎を押し当てて、
缶切りのような使い方で切っていくんですね。
最後の切り落とす時にだけ、
鋏のようにして切り離します。
長い後ろ脚を葉っぱの端に掛けて、
そこからコンパスのように
頭部を回転しつつ切っていきます。
だから、こんな丸い切り口に。
観察していた葉っぱは直径30cmもある大きなものでしたが、
1時間半ほどで太い葉脈だけを残してなくなってしまいました。
小さな葉っぱだと、丸ごとなくなります。
こんなふうに、葉っぱを切り落とし続けていて、
この木は枯れてしまわないのでしょうか?
そして、森は大丈夫なのでしょうか?
ハキリアリは常に木の先端、
最も高い部分の葉っぱを切り落としています。
それは先端の葉っぱが若くて柔らかいため、
刈りやすいから。
逆にいえば、他の部分には手を付けないため、
木が丸裸になることはありません。
また、2000種もの木の葉っぱを運んでいるハキリアリですから、
常に目標の木を変更していて、
木や種に対するダメージが少なくなっています。
さらに、木の上の葉っぱを刈り取ることで、
樹冠に穴が開き、日光が地面にまで届くようになります。
このことで、若い植物が育ちやすくなる効果もあります。
森にとっては、とても意味のあるものだったんですね。
このようにして刈り取られたたくさんの葉っぱ。
行進して持って帰る先はもちろん自分たちの巣です。
そこでようやく、葉っぱを食べる…、
のではなく、葉っぱはある目的のためのものなんです。
これがハキリアリの巣の出入り口。
そして、これがその内部。
中ではアリたちが葉っぱを細かく切り分け、
この白いモノのところへと埋め込んでいきます。
この白いものはキノコです。
このキノコはこの葉っぱを肥料にして育ちます。
ハキリアリはこのキノコを食料にして生きていたんです。
人間以外で農業をする動物はとても稀。
ハキリアリはそのために、
葉っぱを長い道のり運んできていたんですね。
それに、このキノコはハキリアリの巣の中だけに見られる
特別な種です。
私たちがイメージするキノコには傘がありますが、
この巣の中のキノコは傘を作りません。
その必要がないからです。
傘は子孫を残す目的で胞子を飛ばすためのものですが、
このキノコはハキリアリたちが子孫を増やしてくれるので、
傘を作る必要はないんです。
いくつもの土の部屋の中に畑が作られ、
同時にそれは住処ともなります。
大きな巣では畑が100以上、
ここで生活するハキリアリの個体数は100万匹ほどにもなります。
大きさは4cmもあります。
この巨大な巣のアリたちも、元はといえば、
1匹の女王から生まれた子供たちです。
寿命は20年、生涯で2億個もの卵を産みます。
それにしても、彼女が産んだ子供たちは、
姉妹なのに、体の大きさもバラバラ。
高度に分業化されているため役割も様々です。
同じ遺伝子なのに、
なぜここまで異なる個体となるかについては、
まだはっきりとわかっていません。
キノコの欠片を他へ接続しようとしているアリは、
農地を拡大する係です。
キノコをくまなく触覚で調べて、
異常がないかを確認しているのは、
作物の管理を担当しています。
中にはサナギに1ヶ月間も動かずしがみついて
傷つきやすいこの時期の子供を守る係までいます。
今まで見てきた中にも、
葉っぱの収穫と運搬担当、
道路の整備を担当する係、
戦闘部隊もいました。
こんな葉っぱの上で楽をしているように見えるアリにも、
大切な役割があります。
運搬中のアリは無防備になります。
ある種のハエはハキリアリなどの頭部に卵を産み付けます。
やがてその卵は孵り、アリの頭の中を食べて育ちます。
運ばれている葉っぱの上の小さなアリは、
それを防ぐために見張っています。
触覚を延ばし、常に顎を開いています。
ハエ対策に特化した特殊部隊なんですね。
ある日、ハキリアリがいつものように葉っぱを運んでいると、
急に雨が降ってきました。
熱帯雨林には雨期があります。
雨になると、それまで遠くから担いできた葉っぱを捨ててしまいます。
巣の中の湿度は常に適度に保たれていて、
濡れた葉っぱを巣の中に持ち込むわけにはいかないのでした。
そして、私たち人間にはただの雨粒でも、
小さなアリたちには命を奪う脅威となります。
自分たちが踏み固めた道は、
水路に変わり、その流れに飲まれれば命はありません。
そうでなくても、急激に失われる体温、
水が持つ重量、粘性、表面張力などがアリを動けなくしてしまいます。
雨が止んだら、生き残った者たちで復旧作業です。
周囲の落ち葉や泥を運びます。
いつも道路整備を担当しているアリはもちろん、
この時ばかり運搬担当も、戦闘要員も復旧作業にあたります。
雨の季節が終われば、こんな光景が見られるようになります。
運んでいるのは、花。
花もキノコのための肥料となります。
こんなハキリアリの部隊もいました。
彼女たちが運んでいるのは、
古くなったキノコの欠片です。
キノコが古くなると、
よくない菌が発生するかもしれません。
そのために巣の外へ捨ててしまう、
そんな役割のハキリアリです。
ただ、彼女たちのゴミ捨てにはこだわりがあるようで、
ゴミを担いで少し木に登り、
そこからゴミを落とします。
こうすることで、悪い菌がついているかもしれないゴミの山に
体が触れることなく、ゴミ捨てが出来るという訳ですね。
穴の縁から落とすこともありますが、
彼女たちの仕事は古くなったキノコを捨てるだけではありません。
巣の中で弱っている仲間を運び出して捨てるのも大切な役割です。
ハキリアリは死が近づくと、
ある種のフェロモンを放出します。
それを感知した場合、
この弱っているアリは外へ運び出されることになります。
死体が腐敗すれば巣の中で悪い菌が繁殖する、
それを防ぐための習性です。
ハキリアリは、成虫となった後はたった3ヶ月の命。
それぞれの使命を果たすため、
1匹1匹が懸命に生きています。
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