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NHKスペシャル 病の起源 プロローグ「人類進化700万年の宿命」 ~腰痛~

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5月にあったこの番組について、
時々記事にしていこうと思います。
何年か前に同様のテーマで番組が作られていて、
重なる部分もあるんですが。

ヒトという種は、極めて特殊な生態、形態へと進化してきました。
そのため、私たちの全地球上の環境へと適応するという
能力を手に入れました。
しかし、その代わりに、得た苦しみもあります。

たとえば、ガンで死亡する人は3人に1人とも言われます。
しかし、人間とDNAがほとんど違わないチンパンジーのデータでは、
ほんの数%程度。
人間が人間になり、繁栄することで得た病といえるでしょう。

進化医学

という分野があります。
従来の医学では

What と How

についての答えを求めてきました。
その病の要因は何で、
どのように発症するのかを考えています。
進化医学ではそれよりももっと究極的な部分、

Why

という問いかけをします。
なぜ病気が起こるのかを考えます。
たとえば、高血圧や糖尿病は肥満も主要因とされていて、
肥満の多くはエネルギー摂取が過剰であることから起きているとすれば
進化医学ではなぜ人は必要以上に食べようとするのかを考えます。
それは人の歴史のほとんどの時間で、
私たちが常に飢えていたからだと説明されます。
そして、病気の成因をより深く理解し、
それに基づいて新しい治療法を考えます。


腰痛

日本人の8割は一度は腰痛を経験しているとされています。
悪化すると脚の痺れ、
歩行困難どころか、貼って歩くのも難しくなります。
私たちはなぜこのような生存に不利な病が生まれたのでしょうか?

700万年前、現在のチンパンジーは
私たちと共通の祖先から分かれました。



彼らが枝にぶら下がっている時、
腰に負担がかかることはありません。



地上に降りて4本の手足で歩いている時も、
腰には負担はかかりません。

ところが、なぜか私たちは2本の脚で立ち上がりました。



チンパンジーとヒトの腰部の骨格です。
これで見る腰椎は、
チンパンジーが下2つが骨盤内に入っていて動きません。
それに対し、ヒトは腰が長く、
腰椎の数も増えました。
私たちが二足歩行する時、
体を左右、前後に揺らすことで体重移動しつつ
脚を踏み出しています。
私たちの腰はそのためのスイングが
しやすい構造になっているんです。
この動きを滑らかに行うことを実現させているのが、
椎骨と椎骨の間にある椎間板で、
これはコラーゲンなどの弾力のある物質で出来ています。
直立している体重72kgの男性で計測しますと、
この椎間板には66kgの力が
常にかかりつづていることがわかります。
彼が立ち続けている限り。

なぜ人類は立つことになったのでしょうか?
約360年前頃のことだとされています。
これには様々な説が存在します。

人間の直立二足歩行に新説? 「食べ物を独占するため」
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11199879614.html

という話もあるようですが、
この番組では「プレゼント」で説明していました。
オスがメスに食料をプレゼントする、
それは現在も野生動物で見られる行動ですが、
もしも、直立二足歩行が可能であるなら、
多くの食料を抱えて運ぶことが出来ます。
そのオスはメスによりよく選ばれ、
多くの子孫を残すことが出来たでしょう。
こうして、私たち人類に腰痛の種が出来たことになります。

さらに1万3千年前、
私たち人類は農耕を始めました。
それまでは狩猟採集生活を続けていましたが、
農耕を始めたことにより、
食料をより安定的に確保することが出来るようになります。
人が集まり、村や町が出来ていき、
それは文明を生んでいきました。

しかし、農耕には前屈みの姿勢が多く、
私たちの腰には
強い負担が強いられるようになります。



私たちが前屈みになると、
上半身を支えるために、背筋は強く収縮しますが、
この時、椎間板にかかる負荷は一気に増えます。
上の直立している体重72kgの男性で計測した時には、
この椎間板には66kgの負荷がかかっていましたが、
前屈みになると、それは

235kg

にも達します。
農耕作業では、この前屈みを長時間続けることになります。
これに椎間板が対応しきれなくなってしまいました。

シリアのアブ・フレイラ遺跡、
この農耕の遺跡でここの人たちが
腰痛に苦しんでいたことを示す証が見つかりました。



正常な椎骨は横から見ると、
長方形をしていますが、



この椎骨は前のほうが変形してしまっています。

現代人も、農耕に限らず、
腰に強い負荷をかけて生活しています。
私たちの生活の変化に、
私たちの腰の進化は追いついていないことになります。


腰に強い負荷が掛けられ続けた場合、
最初に椎間板が変形してしまいます。



これは幼少期から剣道に打ち込み、
激しい動きを繰り返すうちに腰を痛めた24歳女性の腰部です。
椎間板に水分があれば、
白く写るはずですが、
彼女の椎間板は黒く写っていて、
そこに水分が失われていることがわかります。
特に下の椎間板は飛び出してしまっています。
その治療のため、彼女は

細胞移植による椎間板再生

という治療法の世界初の臨床試験に臨むことにしました。

まず下の損傷した椎間板を摘出し、
その隙間を固定、
摘出した椎間板から取り出した細胞を
骨髄間葉系幹細胞とともに培養します。
すると、椎間板の細胞が活性化し、
これを上の椎間板に移植、
こうして腰を長持ちさせようという方法です。
現在、20代を対象に行われているこの臨床試験では、
彼女の場合、移植した上の椎間板は
正常に近い状態へと近づきつつあります。

椎間板を再生させること、
そのための次の段階への研究が続けられています。







ねてしてタペ


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