防犯の基本はまず自らが自ら身を守ること。
テレビでも防犯アドバイザーの方を見かけることがあり、
この番組でも過去、扱われてきたテーマでした。
今回のお話は犯罪社会学がご専門の
立正大学教授文学部社会学科の小宮信夫教授。
先生は日本での防犯常識の中に
多くの非常識が含まれていることを懸念されています。
住宅街を帰宅のために歩いている二十代女性A子さんが
時計を見ると既に午前1時前になっていました。
うわ! もうこんな時間
彼女は急ぎ足になりますが、
そういえば、冷蔵庫に何も入ってなかったっけ…
分かれ道で右を見て
あそこは暗いし怖いな…、コンビニ寄ってこ
と、左に見える明るいコンビニの中に入っていきました。
この彼女の言動の中で、
防犯の観点から誤りであるものがあります。
それはどれでしょうか?
明るいコンビニに立ち寄ったことについて考えてみましょう。
明るいということは、彼女にとって周囲が見えるということですが、
それは犯罪者にとっても同じ事。
コンビニはガラス張りのところが多く、
外から中の彼女を観察することが出来ます。
現実に、深夜のコンビニ、スーパーで
ターゲットを物色した例が多数あり、
最近にも、そのような強盗殺人のニュースがありました。
次はたくさんの子供たちが遊んでいる公園。
公園では公園の中、遊具に向かって
ベンチが設置されていることがあります。
このベンチで、保護者などが子供たちを見守ることが出来ますが、
一方で、犯罪者が子供を物色する場所にもなります。
諸外国では、公園を悪用する人間を予め想定し、
様々な工夫がなされています。
フェンスで子供と大人のエリアを明確に分けつつ、
外向きにベンチを設置しています。
もしも、犯罪者が子供に近づこうと思えば、
どうしてもベンチの保護者と目を合わせることになります。
それが犯罪者への心理的抑制の意味を持つことに。
公園で保護者がすべきことは、
子供を見ること以上に、
子供を見ている大人を見張る
ことが重要ということになります。
小宮先生は日本人で初めて、
ケンブリッジ大学院で犯罪学を専攻、
法務省や国連アジア極東犯罪防止研修所などで
犯罪対策を研究し続けてきました。
この著書の中などで、
間違った防犯常識に対して警鐘を鳴らします。
日本はあまりにも安全だったので
防犯知識も防犯対策も
ずっと低いままで来てしまいました。
しかし、犯罪が多かった海外では、
防犯の研究が大きく進歩しました。
その最新の正しい知識さえ持てれば、
ほとんどの犯罪は防げます防犯といえば、私たちはこのような事を教わります。
ここにも大きな間違いがあります。
間違いがおわかりになるでしょうか?
1. 不審者に気をつける
2. 知らない人についていかない
3. 危なくなったら防犯ブザーを鳴らす小宮先生は全てが誤りだと指摘します。
「不審者」とはいうものの、
不審者とそうでない人はどのようにして見分けるのでしょうか?
あからさまに怪しくげな人のみが犯罪者なのでしょうか?
現実にはそうではありません。
本物の不審者は怪しげな外見、
言動はしないことがほとんどです。
不審者は帽子とサングラスにマスク姿ではありません。
次の「知らない人」については、
子供に対して諭す時に気をつけるべきことで、
たとえば、公園で「ブランコ上手だね」と話しかけてきた人も、
子供にとっては既に
知らない人ではなくなってしまっている可能性があります。
知っている人に誘われたので一緒に行く、
そうなってしまうことも。
「防犯ブザー」については、
自らに危害を加えようとしている犯罪者に対峙して、
それを鳴らすことが出来るのかどうかという問題。
頭が真っ白になるかもしれませんし、
恐怖を制御するできるかどうかもわかりません。
また、ブザーの音が犯罪者を刺激する可能性も。
加えて「知らない人」の場合のように、
甘言を用いて騙された場合、
子供たちにそれを鳴らす動機はありません。
(1)雑踏の目撃者子供連れのお母さんたちが話し込んでいます。
この街は平和で、
駅前もこうやって人通りも多いし安全よね人通りが多い場所と人通りが少ない場所、
どちらが安全かと問われれば、たいていの人は
人通りが多いほうが安全だと答えるでしょう。
疑われることのなかった防犯常識、
それが犯罪者につけ込む隙を与えています。
この時点で、子供たちは安全ではないでしょう。
人通りが多いほど、獲物を選び放題、
物色には最適です。
深夜のコンビニの例と同じく、
実際の犯行現場は人通りが少ない場所となっていても、
物色や尾行は人通りの多い場所から
始まっていることがほとんどです。
人通りが多い場所で期待する「人の目」についても、
我が子に注目しているのはその子の親だけ。
親が目を切ってしまえば、
誰も見ていない状態に等しくなってしまいます。
自分が雑踏にいる時のことを思い出してみて下さい。
関心は様々な方向へと分散しているはずです。
逆に、今の時代はスマートフォンなどに集中してしまっているかも。
よって、「人の目」は期待しないほうが賢明といえます。
(2)無関心のサイン通学路を帰宅する学校の制服姿の彼女。
そこへワゴン車が近づき、
男が降りてきて市役所までの道を尋ねています。
これでは、クルマの中に引きずり込まれかねません。
彼女はここを「普通の通学路」だと考えていました。
しかし、ここが危険であるという印は
そこかしこにあったのです。
この地域に対し、関心が払われていないこと、
警戒が薄いことを、これらの不法投棄が伝えています。
「ホンマでっか!?TV」 ブロークンウィンドウズ理論 broken windows theoryhttp://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10945805317.html
また、もしも、クルマの連れ去りが警戒される車道脇の歩道では、
より車道から離れた位置を歩くのが正しいといえます。
GPSの利用が進み、道を尋ねる人が減っていることも、
知っておくべきかもしれません。
(3)青色の落とし穴夜道を歩く一人の女性。
この道もずいぶんと安全になったなぁと独り言。
それは、ここに
青色防犯灯が設置されたからでした。
青色は光源をより明るく感じる効果や、
色彩心理学で、犯罪者の犯意を抑制するとされています。
2005年から日本でも設置されてきましたが、
元々はイギリス・グラスゴーで始まったもの。
ただ、グラスゴーは白い石畳で光の反射率が高く、
日本の黒いアスファルトとは違います。
それと、番組では軽く扱われましたが、
上の先生の「犯罪は予測できる」では、
これはグラスゴーにおいては目抜き通りのみに設置されているもので、
これを担当している市役所の部署は都市再生課。
街のイメージアップのために取り付けられたといえます。
グラスゴーでは白色灯に戻す動きも。
加えて、著作では色彩心理学での研究成果についても、
先生は反論しています。
現在の教育の現場では、防犯対策が欠かせません。
校門などには関係者以外立入禁止の看板を掲げますが、
それに従ってくれる犯罪者はいるでしょうか。
小宮先生は、その対策として、
神奈川県藤沢市を評価しています。
藤沢の全55の校で採用されている防犯対策です。
この黄色の線がそれです。
これのどこが防犯対策なのか。
この線は校門から受け付けへのガイドラインとなっていて、
学校に何らかの用事で訪れた人に対しての道案内です。
もしも、侵入者が学校にやって来た場合、
誰かに見られるとします。
当然、どういう用事かと学校の人間は質問することとなります。
すると、侵入者はどう答えるでしょうか?
受付を探してるんですけれど道に迷ってしまって…こう返されてしまうと、
咎めることは難しくなります。
この黄色の線があれば、
線の案内に従わない部外者は不審者だという判断が出来ます。
今の日本の学校は、侵入者が入ってきてからの訓練、
たとえば刺股などの訓練をしていますけれど、
その前に侵入されない工夫が必要だと、
小宮先生は訴えます。