ハチクマです。
夏には日本でも見られますが、
今回の舞台は12月の台湾。
見た目の通りのタカ科の猛禽で、
ハチを主食とするクマタカという意味で、
この名前があります。
番組では以前、土中のクロスズメバチの巣を襲う
クマタカを日本で取材しましたが、
今回は台湾のツマアカスズメバチ。
大きさが桁違いで、
性質も凶暴です。
この巨大な巣の中に、ツマアカスズメバチは数千匹、
巣の外にたくさん出てきていて、何やら、警戒中。
近くにハチクマを見つけたようですね。
そのハチクマが上空に現れました。
しかし、巣には接近しません。
1匹のツマアカスズメバチがハチクマの後を追います。
攻撃してはいなくとも、
スズメバチたちの警戒は厳重です。
ひと月後、この巣はたくさんのハチクマに取り囲まれていました。
タカやワシは、食料を独占しようとする傾向が強いんですが、
ハチクマはあまり同種間での争いをしません。
狩りも共同で行ったりもします。
いよいよ、目標をあの巣に決めたようです。
1羽のハチクマが小さな声を上げ始めると、
他のハチクマたちも同じように鳴き始めました。
お互いに鳴き交わした後、
1羽のハチクマが巣に飛び移りました。
当然、スズメバチの一斉攻撃を受けることになり、
体を振って振り払おうと懸命ですが、
このハチクマは撤退するしかありませんでした。
ハチクマたちがスズメバチの巣を取り囲んでから数日が経ちました。
ハチクマの中でもとりわけ大きい体の白いメスが巣に飛び移ります。
今回もスズメバチの攻撃を受け、
前回同様、撤退してしまいました。
ここまでハチクマたちは2回、巣に攻撃を仕掛け、
2回とも巣を攻略出来ませんでした。
それでも、このスズメバチの巣にこだわるのは、
この中に、約1万引きの幼虫や蛹がいるからで、
その栄養価の高い食料のために、
危険を承知で攻撃しようとしているのでした。
それに、ハチクマの体は他のタカとは少し違う特別製です。
堅い羽毛は対スズメバチ仕様。
特に顔の周りは密度の細かい短い羽毛で覆われています。
それでも、凶暴で大きなツマアカスズメバチの攻撃には、
逃げなければならないこともあるようです。
あの大きい白いメスのハチクマがまた巣に飛び乗りました。
なぜか今回はスズメバチたちが襲ってきません。
この白いメスは巣に穴を開け始めました。
それでも、スズメバチは無抵抗です。
前回までは、巣を守るために攻撃してきたスズメバチですが、
今回はなぜされるがままなのでしょか?
たしかなことはわかっていませんが、
これはハチクマの体から、
何らかの物質を放出しているのではないかと考えられています。
スズメバチ研究の玉川大学農学部、小野正人教授は、
通常であれば反撃は続けられるはずです。
そのことを考えると、ハチクマの体臭成分の中に
スズメバチの反撃を抑えるような機能を持つ物質が
含まれると考えると、うまく説明がつくのではないでしょうか
と話します。
ハチクマは何度か巣に接触するたびに、
その匂い物質を放出し、その場に残して飛び去ります。
その物質には、スズメバチの攻撃性を失わせる効果があり、
やがて、ハチクマは
スズメバチの攻撃対象ではなくなるという仮説です。
別のハチクマが木から飛び立ちました。
速度を上げてスズメバチの巣にに跳び蹴りです。
穴を広げようという訳です。
今度はそのオスが巣に飛び移り、
クチバシで巣を崩していきます。
巣の中からは無数のスズメバチが出てきますが、
それでも、このハチクマは攻撃されません。
あの白いメスもやってきて、
巣を崩壊させていきます。
他のハチクマたちも飛来、
中の幼虫は食べ放題。
ハチクマは食料を独占しませんので、
他のハチクマを追い払うこともありません。
ハチクマ軍団がこの巣に目を付けてから1ヶ月、
ついに巣を陥落させることに成功しました。
何からの物質により、他を騙すというのは、
先週のカクレクマノミもそうでしたね。
ハチやアリのうち、
スズメバチのような真社会性の種はフェロモンにより、
個体間の信号伝達を行っています。
敵味方の識別もフェロモンによるものなんですけれど、
そこを偽装できたなら、騙すことは可能になります。
化学的な擬態ですね。
たとえば、小型のコオロギの一種には、
アリの巣の中に住み着くために、
その巣の仲間だと認識させるフェロモンを放出して居候、
しかも、無数のガードウーマン付きで
安全な住処とする種がいます。
この仲間認識フェロモンは巣ごとに違いがあるため、
同じ巣のアリどうしで悲劇が起こることも。
巣が別の巣と戦いになったアリの場合、
敵中深く攻め込んで帰還した英雄であるはずのアリが、
自分の巣に帰ると袋叩きを食らって殺されてしまうことに。
その英雄が身にまとっているのは、
敵の巣の中で体に付着した敵のフェロモン。
敵だという信号ですので、殺されてしまいます。
もしも、ハチクマが「敵ではない」とか「身内だ」とか、
スズメバチ固有のフェロモン様の物質を放出できるなら、
それに騙されても当然なのでしょうね。
その巣固有の物質にも似せられたり、とかも?
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