昨夜は国防に関する待ったなしで必要なことをと訴えた訳ですが、
その記事を作りながら思い出した話を一つ。
日本にも自衛軍のような軍隊組織が必要と考える人たちが
よく引き合いに出してきたのがスイスでした。
永世中立国スイス連邦。
どこの紛争にも第三者であり続けるために、
自国は自分たちで守る。そのための軍備を怠らない。
私たちにはそういうイメージがありました。
1815年、ナポレオン戦争終結後の
欧州の領土と秩序について開催されたウイーン会議にて、
スイスは永世中立国として認められました。
昔、スイスには傭兵として
国外に出ていた男性がたくさんいました。
それが主な産業の一つでもあったんです。
それは資源が少ないこともあり、
国内で収入となる産業が少なかったためです。
ビーバップ!ハイヒール 名作アニメで読み解く世界史 その1 ~アルプスの少女ハイジ~
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11500904094.html
ここでは"アルムおんじ"の過去についてお書きしていますが、
スイスには現在も自分の国は
自分で守る「国民皆兵」という考え方があります。
よって徴兵制が設けられ、
20万人以上の予備役を常に確保し続けています。
第二次世界大戦が起ころうとする時には、
国民総動員の態勢を布き、
大量の兵器を購入し、他国軍が侵略してきたならば、
国内の土地や建物など、
侵略者の補給となりうるものを全て焼き払うべしと、
いわゆる焦土作戦を行うとしていました。
侵略者に対しては毅然とした態度で対応するという姿勢は、
当時、スイス空軍がどれだけの自軍機を撃墜されていても、
逆に枢軸軍機、連合国軍機合わせて、
250機もの領空侵犯機を撃墜していたとでもよくわかります。
どちらにも与しないという宣言は、
どちらにとっても敵になり得るという宣言でもありますから。
そんなスイスですが、今年の2月、
このような事件がありました。
2月16日深夜、エチオピア・アディスアベバ発ローマ行き
エチオピア航空ET702便乗客200人のボーイング767-300が
ハイジャックされました。
機長が席を離れた隙に操縦室を占拠、
副機長がハイジャックしたと宣言したのです。
翌朝、スイス・ジュネーブ空港に着陸した同機の操縦席窓から、
ロープが垂らされ、
副操縦士はスイスへの政治亡命を求めました。
副操縦士はスイス警察に捕らえられ、乗客乗員に怪我人はなく、
この事件自体はこれで終わりともいえるんですが…
発生当時、ソチへ行くという話も出ていた事件ですね。
しかし、事件そのものよりも私たちは知ることになった
スイス軍の実情に驚かされることになります。
このハイジャック機に対して、
イタリア空軍はユーロファイターを発進させ、
北イタリア上空で当該の旅客機を発見し監視を開始、
フランスの領空に入ったところで、
フランス空軍のミラージュに役目を引き継ぎました。
ここにスイス空軍の機体は出てきません。
ハイジャック機がジュネーブに向かって来ていることは
わかっていたはずですが。
なんと、スイス空軍の緊急発進は
午前8時から午後5時までの間に限られるというのです。
それ以外の時間帯については
イタリアとフランスにお願いしているんだとか。
徴兵制についても、疑問の声が高まっており、
軍事費に対する国民の視線も年々厳しくなっているとのこと。
政府は24時間のスイス空軍機の運用をと考えているようですが、
国内は反対意見のほうが多いようです。
ただ、もしもこのハイジャック機が空港へ着陸せず、
どこかの建造物に突っ込もうとしていたとすれば、
これは外国の空軍任せで対処出来るでしょうか?
スイスの安全保障の考え方は、
侵略者にとって利益にならないことを示すものでした。
得るものよりも失うものがはるかに大きいと、
侵略者に予測させることが
国防に繋がるというものなんで、
スイスの国民にはそういう意識があるものと考えていましたが、
このスイス空軍の現状から見るに、
その意識も今は昔ということなのでしょうか。
まさか軍隊と呼ばれる組織が、
定時勤務を非常事態対応よりも優先しているとは驚きです。
スイス空軍出動せず=「業務時間外」で-エチオピア機乗っ取り
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201402/2014021800061
早朝のハイジャック、スイス空軍出動せず、理由は「業務時間外」…“鉄壁の永世中立国スイス”の現実http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140425/waf14042507000001-n3.htm
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スイス空軍「業務時間外につき、ハイジャック機には対応出来ません」
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