自然科学ではわかりきっていることでも、
実験や調査などを経て、
その事実ははじめて事実として確認されるもので、
昨日の読売新聞の記事はそういうものでしたね。
血液型と性格「関連なし」…日米1万人超を調査
http://www.yomiuri.co.jp/science/20140719-OYT1T50087.html
社会心理学、集団力学、組織心理学がご専門の縄田健悟講師は
2004~05年に実施された経済学の調査データに注目、
それは1万人以上を対象にしたもので、
生活上の行動や意識について質問されていて、
この回答には回答者の血液型も記されていたことから、
これを今回の研究用のデータとして使用することにしたようです。
論文を見てみますと、その質問は
「日頃の生活の中で充実感を感じている」
「ほかの人の生活水準を意識している」
「他人との生活水準との差は、2,3年と比べて大きくなった」など。
2004年と2005年の日本、
2004年の米のそれぞれのデータで、
論文ではその項目各21~26が確認出来、
全体ではのべ68項目になります。
この回答と血液型を統計的に集計しますと、
血液型別に差異があったと考えられるのは3項目に過ぎず、
その差異もわずか。
よって、この論文では
日本でもアメリカでもほとんどの項目で意味のある違いは存在しなかった。その違いの大きさも極めて小さく、ほぼゼロと見なせるものであった。本研究の知見は、血液型と性格の無関連性を、積極的に示す実証的根拠を提供した。血液型と性格は無関連である
と結論づけています。
縄田先生のサイトで概要が確認出来ます。
血液型と性格の無関連性――日本と米国の大規模社会調査を用いた実証的論拠――
http://nawatakengo.web.fc2.com/works/jjp2_abst_jp.htm
また、原著論文は
「心理学研究」論文ID: 85.13016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_85.13016/_pdf
で、PDFで閲覧出来、
これからは、血液型性格判断を批判している雰囲気も感じられます。
当然、この論文でその相関々係が「ない」ことを
完全に証明することは出来ませんが、
そもそも「ない」ことを完全に証明することは不可能で、
「ない」ことを証明するよりも簡単なはずの
「ある」ことを証明する論文は今まで存在していません。
私も世間話に出て来る血液型と性格の話題が嫌いで、
自分の血液型もほとんど公表していません。
なぜ、合理的な理論もなく、
それを肯定する研究が皆無であるのに、
血液型と性格を結びつけようとするのかが私にはわかりません。
唯一、血液型別の疾病の発症の頻度、罹患率と
それが性格に与える影響を考察した説もありましたが、
現状、学説と呼べるようになったという話は知りません。
私が医師の診察を受けているとして、
もしも、その医師が世間話ででも、
「あなたはX型ですよね。だから、○○○なんじゃないですか」
などと口にしたなら、その病院はその日限りにするでしょう。
そんな医師はいないと思いますが。
血液型に限らず、占いを占いとして楽しむぶんには
いいかもしれせんが、そこに商売が絡んだり、
差別が絡んでくると話は違ってきます。
一時期、韓国では血液型により採用不採用、
配置部署などを決めるという就職差別、雇用差別を
先進的だと肯定的に報じていたマスコミもあったりして、
後に韓国でも変化はあったでしょうけれど、
人種差別が否定されるべきであるように、
こういった風潮についても考え直さなくてはならないでしょう。
人間の心理状態なんて、
周囲の影響を受けて常に変化しているもので、
血液型と性格についての話では、
「X型が読む本」のような本の表紙を
別の血液型の本に付け替えて読ませても、
自分に合致していると思い込んだりします。
そもそも、ひと口に血液型といっても、
ABO式だけではなく、Rh式、MN式、MNSs式、P式、
ルイス式、ダフィー式、ディエゴ式などなど、
血液の型を分類する方法は300以上にもなり、
それだけ、地球上には多種多様な人間が生まれ
生活していることになります。
ABO式の4つの型だけを取り出して、
個人の性格について判断すべきではありません。
それぞれの違いを認識し尊重することは大切ですが、
ただ一つだけの事柄だけで、
その人の全てを判断するような意識は
差別へと繋がる可能性を生み出します。
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血液型と性格「関連なし」 九州大・縄田講師による1万人調査
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