軍師官兵衛第29話「天下の秘策」その背景～清水宗治の切腹～

前話で安国寺恵瓊に黒田官兵衛が
明智光秀により織田信長が討たれたことを明かし、
それを踏まえた上で、恵瓊は羽柴秀吉との講和を進め、
小早川隆景も、それを知っても
京へと戻る秀吉の軍を追撃しようとしませんでした。
吉川元春は追撃しようとしていて、
それを隆景が制止したという話があります。
信長が討たれたことを
実は隆景と恵瓊は早い段階から知っていて、
秀吉の天下になった時のための裏取引があったのでは、
そういう説もあったりします。
後の豊臣政権における彼らの立位置からの推量でしょうけれど、
ドラマではそれを匂わせる描写だったのかもしれませんね。

それはさておき、次回以降、中国大返しからの山崎の戦いになりますが、
ここでは備中高松城の戦いの最後、
清水宗治の切腹についてお書きしたいと思います。

記事としては

軍師官兵衛第27話「高松城水攻め」その背景～備中高松城の戦い～
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11892532037.html

これの後に繋がるでしょうか。

浮世をば今こそ渡れ
　　武士の名を高松の苔に残して-

清水宗治の辞世の句です。

この備中での戦を、宗治は命を以て終わらせる訳ですが、
毛利とて、彼を切り捨てようとしていた訳ではありません。
元々、講和条件として羽柴秀吉側は
「五国割譲+清水宗治の首」としていて、
毛利側は領地の割譲は飲めても、
宗治の死については拒否し続けていました。
最終的に宗治は腹を切りますが、
それも、講和条件としてというよりも、
宗治の自発的な行動ということになっています。
それほど、毛利は宗治の忠義を評価していて、
実際に、戦前の秀吉側から
「降服すれば備中を与える」という破格の条件も
拒否するほどの人物でした。

1582年6月2日、本能寺の変。
清水宗治は織田信長の死を知らなかったことでしょう。
その翌々日、彼は兄の月清(宗知)、弟の難波伝兵衛、
そして家臣2名と小舟に乗り込みます。
羽柴の陣に近づいた小舟の上で、
宗治は一差しの舞を披露した後切腹、家臣が介錯。
この時、彼の兄と弟もこの船で腹を切っています。
後に小早川隆景に秀吉は
「宗治は武士の鑑であった」と話したそうです。

彼の切腹を両軍の大勢の兵たちが見守っていた訳ですが、
おそらく、最も多くの人に腹を切る姿を
見せつけた人物であろうかと思います。
記録の上では平安末期の源為朝が
武士としての最初の切腹とされていますが、
武士として潔い最期として切腹を定着したのには、
この清水宗治の死に様が大きく影響しているのではという説もあります。

これは絵師・落合芳幾による「太平記英勇伝清水長左衛門宗治」。
幕末の作ですね。
その切腹から300年が過ぎた頃でも、
武者絵に描かれていたんですねえ。