血液型と性格「関連なし」 九州大・縄田講師による1万人調査
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11897141321.html
ここで関連性はないという論文をご紹介しています。
一般に「ある」と「ない」の対立においては、
「ある」側に立証責任がある訳で、
それは「ない」事の「完全な証明」は不可能だからです。
それでも、この発表がなされた訳で、
その意義は大きいと思います。
「ある」という結論の論文も出て来ればと期待しています。
さて、血液型(ABO式)と性格の相関関係については、
私も考えさせられることが多く、
せっかくですので、考えをまとめてみたいと思います。
まずはその歴史から考えてみましょう。
1900年にオーストリアの病理学者、
カール・ラントシュタイナーがABO式血液型分類法を発見し、
「JIN-仁-」完結編 第4話 "江戸から消える" その背景 ~輸血と血液型~
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10887060059.html
輸血などの技術に劇的な進歩をもたらした功績で、
後に彼はノーベル医学生理学賞を受賞することになります。
20世紀のはじめ、ヨーロッパを中心に、
血液型の研究が盛んに行われ、
その中にの考察もありました。
ドイツのE・フォン・デュンゲルンもその研究者の一人でした。
1910年、当時の研究では、多くの脊髄動物の中から
A型はチンパンジーからのみ発見され、
その他のほとんどからはB型だけが確認されていたんだそうです。
一方、ヨーロッパではA型の人の割合が高く、
B型は比較的少ない数であり、
ここにダーウィンの進化論が誤用されて、
「より進化しているのはA型であり、B型はA型に劣る」
という考えが生まれます。
ヨーロッパ各国はアジア、アフリカに植民地支配を広げていて、
その植民地に住む人たち、
黒人や黄色人種にはB型が多いはずだ、
だからこそ、我々高等なA型の白人が支配するべきなのだ
という理窟が生まれます。
もちろん、それは事実を無視していて、
科学でもなんでもありません。
我々モンゴロイドには
コーカソイドと比べてB型が多いのは事実ですが、
ネグロイドではO型が多数を占めています。
それと、チンパンジーからしかA型が発見されなかった、
と伝わっていますけれど、
おそらく、他の動物でもA型は見つかっていたのではないでしょうか。
A型が多い脊椎動物は珍しくないのではないか思いますので。
たとえば、ネコの9割以上はA型ですし、
ブタも9割がそうです。
動物の血液型を調べるのに、
これらを調べないということはあり得ないでしょう。
自分たちにとって都合の悪いデータを
捨てたんだと私は思います。
当時のヨーロッパは、自分たちが他地域を支配する
「正当な」理窟が欲しかったため事実をねじ曲げて
このようなことを言い出したのだと私は考えています。
他にもドイツでは
「学者にはA型が多く犯罪者にはB型が多い」という
論文も出ていたりして、優生学的な発想、
これらは後のナチズムにも重なります。
いっぽう、日本で血液型の臨床以外の部分で研究したのは
1916年の原来復(はらきまた)によるものだとされています。
彼はデュンゲルンに師事していた人物でした。
彼は血液型に人の性質などの特徴があるのかを考察していますが、
彼自身は論文で
未ダ全ク不明
としつつ、
Aノ方ハ柔順ニテ成積優等級ノ首席ヲ占ヌルニ、Bノ方ハ粗暴ニシテ級ノ最下等ノ成積ヲ有セリ
続けて、偶然こういうこともあるもかしれない、
調査してみれば面白いだろうとしています。
例えば、ということで出しただけかもしれませんが、
A型がB型よりも優れているという書き方です。
もちろん、ここまでお書きしているA型がB型よりも進化している、
優れているという事実はありません。
原来復自身は、これ以上、血液型と人間の性質について
何かの結論を持っていた訳ではないようですが、
1927年、東京女子高等師範学校の心理学者古川竹二が
日本で最初にこのテーマを科学的に研究しようとし、
論文「血液型による気質の研究」を発表、
1932年に「血液型と気質」を出版しています。
彼によれば、アンケートで得られた回答と、
彼による血液型別性格の分類は
80%以上の確率で一致しているとしていて、
ここに金沢大学医学部教授・古畑種基、
長崎医科大学教授・浅田一が加わり、
この3人がメディアなどで古川の説を広めていくことになり、
軍部が兵員の編成において血液型が利用出来るのではないか、
そういう考え方も生まれました。
以後、戦中戦後、ほとんどなりを潜めていた
血液型と性格についての考察でしたが、
1971年、古川説に大きく影響受けた能見正比古が出現します。
彼は東京大学を卒業していますが、工学部であり、
後に法学部に入学するものの、
放送作家、文筆家として活動するうちに中退しています。
彼が血液型と性格の関係に興味を持ったのは、
姉が古川竹二から教えを受けていて、
それが弟の入口となったようです。
彼の著作「血液型人間学」は大ヒット、
その後も血液型と性格の相関関係があることを前提にした著作を連発、
後に息子の俊賢が跡を継ぎ、
血液型と性格は関係があるという思い込みが、
日本のみならず、東アジアを中心に広まることになります。
学説は「誰が」ではなく、
「何を」言っているかが重要ではありますが、
彼らのそれは学説でもなんでもなく、
彼ら自身、生物学、医学、心理学などを学んだ形跡が見られません。
統計学はどうだったでしょうか?
彼らの著作からはその痕跡を感じませんでしたが。
そんな彼らの著作が広まったことが
現在にも悪影響を与えているといえます。
以上のように、それは科学と呼べるものではないんですが、
もしも、あるとすれば、ということで、
血液型と病気の罹りやすさが性格に影響を与えたのでは、
そういうお話もお書きしておきたいと思っています。
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血液型と性格の相関関係(1) ~血液型性格判断の歴史~
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