軍師官兵衛 第36話「試練の新天地」 その背景 ～検地・年貢・一揆 領民と施政者の関係～

佐々成政が太閤検地を行い、
それに反発した領民が一揆を起こしました。
今回は年貢や一揆の関係のお話を。
関係ないんですが、佐々成政の子孫には
「水戸黄門」の佐々木助三郎のモデル佐々宗淳が、
また、現代には内閣安全保障室室長だった佐々淳行氏がいます。
彼の最近の著作では、

これが非常に面白かったです。
彼の政治家に対する評価が書かれているもので、
マスコミが書いてきたイメージとは全く違う政治家もいて、
今の政治に繋がるという意味でも興味深い一冊でした。


太閤検地は豊臣秀吉による全国規模での農地測量です。
それまでの自己申告による収穫量、石高でなく、
太閤検地が行われた地域では
公的測量により算定し、農民が収めるべき税、年貢を決定することになります。
それと同時に、農民から領主へ渡るルートを明確にしていきました。
ただ、それらは表向きの事で、現実の収穫量よりは
低い値の年貢が課されていたことでしょう。
それは後の徳川政権でも同様で、
公的な年貢の割合が五公五民、50％という収めるべきというものだったとしても、
実際は四公六民だったり、もっと低くて三公六民、
二公八民程度だったりしたりしました。
時代が後になればなるほど、
人口が増えましたし、農業の技術は向上し、新田の開発も行われていきます。
そうして、取れ高も向上する訳ですが、再検地は行わず、
その上昇分をそのまま既定の割合に当てはめるのではなく、
そもそも新田の開発を領主が関知しないことにしておき、
その新田からの収穫はそのまま農民の収入とするなどして、
現実には娯楽時代劇のイメージとは違う農村の姿があったようです。



この小説では一揆の一つの現実に近い形が描かれているように思います。
最高に面白い時代小説ですので、
お読みでない方にはおすすめです。

施政者がこのように領民に対しての配慮を見せるのは、
一揆が怖いということがあるでしょう。
現実に農民の実力行使としての一揆が起これば、
年貢取り立て担当の代官などは失脚、悪くすれば切腹だったり、
藩主は政権に一揆を報告しなければならず、
こちらは悪くすれば改易に至る事もあります。
また、一揆の領民たちを殺せば、
そのぶんの生産力が減少することになります。
一揆の農民たちも命がけですが、
一揆を起こされた側にもダメージは計り知れないものでした。

今回の第36話では、
肥後に五十万石を与えられた佐々成政が太閤検地を行います。
これが肥後国人一揆を招きました。
新しい領地を早く名実ともに掌握しておきたかったのでしょうか。
その検地は性急なもので、結果、成政以前よりも、
領民には重い税が課されることとなりました。
まだ、全く新しい領主に馴染んでいない状態での増税ですから、
領民の反発も当然かもしれません。
数々の武功で知られる彼ですが、
そのあたりの事情には暗かったのかもしれませんね。
成政はこの一揆を自力で鎮圧することが出来ず、
その失政は彼に切腹の沙汰をもたらしました。
武家が治める世の中は、武力政権である訳ですから、
力ずくで領民を押さえつけていた訳ですが、
ただ、力のみに頼っていますと、
施政者側もただでは済まなくなるというお話でした。