軍師官兵衛第39話「跡を継ぐ者」その背景～秀吉のダークサイド聚楽第落首事件～

主人公ではないので、同じ竹中直人さんでも、
豊臣秀吉のダークサイドが見られるのが
今作の魅力の一つかもしれませんね。

人は子ができると、ここまで耄碌するとは思いもよりませなんだ

黒田官兵衛の台詞どおり、
豊臣秀吉の暗黒面が強く出て来るのは、
鶴松(棄)、秀頼が生まれてからのことになります。
鶴松が生まれて、聚楽第南鉄門に貼られたとされる落首がこれ。

　大仏のくどくもあれややりかたな釘かすがいは子宝めぐむ

　ささ絶えて茶々生い茂る内野原今日は傾城香をきそいける

当時、秀吉は方広寺で大仏を建造中、
刀狩で集めた刀などはその材料になり、
そのおかげで(子種のなかった秀吉が)茶々を懐妊させたというもの、
そして、先年に佐々成政を自害させ、
茶々の力は内野原にある聚楽第で、
今日、京で国を傾ける程の美女が権勢を繁らせているというもの。
他にも落首はあったとされてはいるものの、上の二首を含めて
その内容については史料的価値が疑問視されている出典からですので、
怪しげではあります。
そういえば、淀城の主で茶々は淀殿と呼ばれる訳ですけれど、
当時、豊臣にはそういう認識はなかったという話もあって
これも産屋として城まで建てさせたという、
後の徳川からの皮肉が込められて、
淀殿、淀君という呼び方が出来たんだとか。

落首の"犯人"を豊臣政権は尾藤道休だとし、
彼を匿っているとして本願寺は秀吉を恐れ、
道休の首を差し出しました。
道休を含めて、117人が秀吉に殺され家屋も焼き払われました。
門番などは鼻を削ぎ落とし、一日留置、
そして、耳を削ぎ落として、また一日留置、
そうして苦しませるだけ苦しませて、
翌日に磔刑にて処刑と、秀吉の尋常ではない憎悪が感じられます。

秀吉は鶴松が生まれたことで、
可愛がっていたはずの養子、徳川家康次男・羽柴秀康を
結城家に養子に出してしまいますし、
秀頼が生まれてからは関白の座を譲った豊臣秀次と、
一族、妻妾、息子、娘、家臣のことごとくを殺しました。
黒田家では官兵衛が長政に家督を譲り、
秀吉は家督相続は認めるものの、隠居は許さんと、
官兵衛を傍に置くこととしました。
相談役といったところでしょうか。
すると、このドラマでは利休切腹、秀次事件、
唐入りなど、官兵衛が諫言するべき事件が起き、
それを防げなかった主人公の苦悩と無力感が描かれるのでしょうか？