軍師官兵衛第43話「如水誕生」その背景～老子「道徳経」旧約聖書「ヨシュア記」から～

文禄の役の後、黒田官兵衛は本当に死を覚悟していたらしく、
後事についての長政ら宛の遺書を遺しています。
そこにはそれでも豊臣家に尽くせと記されていたとか。
それは信仰よりも優先させるべきだと。
その他、長政の跡目について、
当時、黒田家には娘婿の子を松寿丸(長政幼名に同じ)と名付けて
官兵衛の養子としていましたが、
この時点で長政に子がなかったため、
長政に子が生まれなければ、この松寿丸に継がせることとしていますが、
但し書きとして、長政の子であれ、松寿丸であれ、
その者が黒田家当主としての器でなければ、
跡を継がせるなとしてもいます。

考えてみれば、以前、長政に家督を譲ったので隠居する、
官兵衛がそう言っていたのを、隠居は許さんとしたのは秀吉でした。
そして、傍に置いて参謀役を務めさせていたのですが、
今度は気に入らないことがあると、殺そうとするあたり、
秀吉は本当にめんどくさい主です。
死を覚悟した官兵衛は如水軒円清と名乗ることとなりました。
如水が出家名、あるいは号で、円清が法名となります。
黒田孝高は一般に通称の官兵衛と呼ばれますが、
その他、黒田如水とも呼ばれています。
この如水の由来とされているのが
老子の道徳経第八章に見られます。

上善如水
水善利萬物而不爭
處衆人之所惡
故幾於道

居善地
心善淵
與善仁
言善信
正善治
事善能
動善時

夫唯不爭
故無尤

ここで老子は水の姿こそ、理想の生き方であると説いています。
形を持たない水は器によりあらゆる形となり、
何者とも争うことはなく、
人が忌む場所にも水は流れている。
居においては低い地を潤す水のように高位を望まず、
心においては深い淵の姿を善しとし、
与においては仁愛を善しとし、
言においては真義を以て臨むを善しとし、
政においては治を善しとし、
事においては能力を善しとし、
動においては時を見て動くが善しとする。
ただ争わず、故にとがめもない。

もしも、これだけの意味を込めて如水としていたならば、
それは豊臣秀吉に対するメッセージもあったのでしょうか。
水としての己が収まる器は豊臣家。
その忠誠心を秀吉に見せようとしたのかもなんて思います。
ただ、水の威力は秀吉も知っていて、
それは如水とともに戦った備中高松城で武器にもなりました。
さて、如水の真意はどこにあったのでしょうか。
如水の由来については、この他に、
旧約聖書のヨシュアのポルトガル読みジョズエからだという説もあります。
関係あるのかないのか、ヨシュア記にも
水に関わりのある部分がありますよね。
約束の地、カナン、つまりパレスチナに入るためには
ヨルダン川を渡らなければなりませんが、
とても足が立つような深さではありません。
しかし、契約の箱(アーク)を担ぐ祭司たちが足を川の水に入れたとたん、