貴重な連続娯楽時代劇である木曜時代劇、
現在は岸谷五朗さん主演の「ぼんくら」が放送されています。
この作品は原作が宮部みゆきさんということで、
最近の時代小説らしく、ところどころ当時の現実に沿った表現、
内容となっています。
そこで「差配人」という言葉がわからなくなる訳ですね。
従来、時代劇では「大家」「大屋」「家主」という言葉がよく使われていました。
「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然」なんていう台詞を
今までに何度聞いたことでしょうか。
私も子供の頃には気付かなかったんですが、
この「大家」は私たちが知る「大家」ではありません。
江戸時代、町人地の私有が可能になりますと、
地主という人たちが現れました。
細かくいえば、己が所有している土地に住んでいる人を
地主といいますが、こういう地主の中には、
他にも所有地を抱えている人たちもします。
そういう土地に家屋を建てて、表通りのようなところには、
商いの出来る店を、その裏には長屋を建てて庶民に貸していました。
この地主が大家かといいますと、そうではありません。
大家とは、そこを管理する人のことを言います。
現代の集合住宅では管理人が雇われていることがありますが、
それに近い存在です。
地主に代わり、店賃、地代を集めて、
さらには公私ともに店子の面倒を見ますし、
自身番に詰めて保安、警備の業務も行っていました。
この大家のことを大屋、
差配人、家主(いえぬし/やぬし)、家守(いえもり/やもり)などと呼んでいて、
もめ事があれば解決を図りますし、
町奉行所などから町方同心がやって来た場合も、
まずはここを通すこととなります。
いろいろと気を回さないといけない立場ですので、
「ぼんくら」で新しい差配人が若すぎると反発が出る訳です。
そういえば、藤沢周平著「橋ものがたり」
文庫版巻末の井上ひさし氏による解説に
大衆小説の変質は、読者が小説に物語の祖型を求めなくなった途端にはじまったというのが、ぼくの意見です。では読者は物語のかわりに小説になにを求めたのか。情報です。つまり、読者はいつの頃からか物語よりも情報を読みたがりはじめた。作者の方も読者の好みの変化をいちはやく見抜いて、時代小説の中にさえ各種の情報を盛り込むようになりました。
このような部分があります。
だからなのか、近年の時代小説には伝奇を除き、
昔のような荒唐無稽なものはほとんどなくなっているように思います。
特にこれが書かれた時よりも今の方が、
その傾向は強くなっているように感じています。
馴染みではない職業から書き始めたのであろう作品も多いですよね。
読者はどういう職業なんだろうかと、その情報部分も楽しめるわけです。
かといって、完全に時代考証に沿ったものかというと、
それもまた違っていて、どこかで妥協しているのも事実で、
どこで線引きするかということなのでしょう。
たとえば、時代劇でも時代小説でも「お歯黒」はほとんど描かれません。
小説の場合、あってもいいとは思うんですが、
なぜか触れられることは滅多にありません。
おそらく、お歯黒に触れなくてはならなくなるので、
既婚女性の歯自体に触らないようにしているのでしょう。
だから、和田はつ子著「口中医」シリーズではどうだろうかと読んでみましたら、
こちらでは「鉄漿親」などという知らない言葉も勉強できました。
いろいろと足りなさすぎるので、勉強中の私ですが、
このあいだ「江戸時代の生活便利帖」なんていう本を買いました。
これは幕末に書かれた「民家日用廣益秘事大全」という
生活の知恵のようなものをまとめた本の現代語版なんですけれど、
なるほどと思うこともあったり、
なぜ、こんなことが紹介されているのか理解出来ないものもあります。
まだ読み始めたばかりですが、
旅行中などで用いる蒲団
わらの袴の部分をよく柔らげて蒲団の中に入れておけば一枚でも寒気を防げる。又、白鳥の腹毛を入れてもよい。甚だ柔らかくて寒さを防げる。衣服、脚絆などに入れてもよい。
これなんか気になりますよね。
そうか、昔はハクチョウを捕まえていたんだと。
ツルの肉の話は時代劇でも描かれたことがありますが、
ハクチョウも食肉として食べられていたのでしょう。
ただ、高級食材だとは思いますし、
その腹毛を用意するのは相当困難ではないかと思います。
小池の魚をいたちに食べられないようにする
瓢箪を吊っておくと二度と来ることはない
本当でしょうか?
井戸を掘る時、水がある場所を知る方法
井戸を掘ろうと思った時は夜気晴明な時にいくつもの桶やたらいに水を入れ、井戸を掘ろうと思う辺りに並べておき、いずれかの水に星の光が大きく鮮明に映るかを見て、そのところを掘れば必ずよい水が出る。
本当でしょうか?
雀を飼って白雀にする
雀の子が殻を出てまだ羽が揃っていない時に蜜を飯に混ぜて餌にする。飼っているうちに白雀となる。
どういう経緯でこういう話が出てきたのかが気になります。
ここで言っている「蜜」とは蜂蜜のことでしょうか?
その他、書籍紹介によりますと、まだ読んでいない部分に
大便をこらえるには、男は左、女は右の掌に指で大と書き、舌で三度なめる
十二月にブタの耳をとり、梁の上にかけておくと、必ず富貴になる
餅が喉につまったら、もぐらを黒焼きにして呑ます
なんかもあるみたいで、
餅が喉に詰まるような緊急事態にモグラを捕まえてくるのでしょうか?
それを黒焼きにする時間も必要ですし。
それとも、常にモグラの黒焼きを常備しておけと?
モグラの黒焼きはいろいろ効くとのことですから、
常備していた家も多かったのでしょうか?
ところどころ、現代でも役立ちそうな生活の知恵もあるものの、
面白いのはこういう部分ですね。
訳の分からない話である一方、池の魚がいたちに襲われることを心配していたんだとか、
変わった雀を飼いたがっていたのかとか、
そういう想像も楽しい一冊になりそうです。
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