軍師官兵衛第44話「落ちゆく巨星」その背景～母里太兵衛と黒田節・呑取日本号～

黒田節です。

酒は呑め呑め呑むならば
日本一のこの槍を
呑みとるほどに呑むならば
これぞまことの黒田武士

2番以降の歌詞についてはいろいろあるようで、
元々はこれだったのでしょうか？
確認出来ませんでした。

皇御国の武士はいかなる事をか
勤むべしただ身に持てる真心を君と親とに尽くすまで
峰の嵐か松風か尋ぬる人の琴の音か
駒をひかえて聞く程に爪音しるき想夫恋
君の晴着のお姿を寿祝う鶴と亀
松竹梅のよろこびを幾千代までも祈るらん

戦中、赤坂小梅が歌いヒットしたとのことで、
これが上の歌詞なのでしょう。
そして戦後、歌詞を変えて歌われさらに大ヒットということですが、

歌詞は複数あるようですね。
戦前、元々は「黒田武士」というタイトルで、
彼女が初めてレコード化、
元のタイトルをもじって「黒田節」に、
複数回レコーディングされてその度にヒットしているようですから、
バージョンが複数あるのもそのためでしょうか？

歌詞にも出て来る黒田武士というのが、母里友信(太兵衛/多兵衛)。
母里(元々はボリ)氏は先代の職隆の代から黒田家に仕え、

太兵衛は黒田官兵衛家臣の精鋭・黒田二十四騎、、
その二十四騎の中の黒田八虎に数えられる精鋭中の精鋭で、
官兵衛にとっては股肱の臣というべき人物です。
唐入り休戦の頃、太兵衛が主・黒田長政の命で、
伏見城に来ていた福島正則を訪れました。
この時、既に正則は酒に酔っていて、
太兵衛にも酒を勧めます。
しかし、長政から酒を出されても飲むなと言われていた太兵衛は
これを断りますが、正則はしつこく酒を飲ませようとします。
自分は使者であるからと、固辞し続ける太兵衛でしたが、
正則がこのようなことを言ってきました。

飲み干せたならば好きな褒美をとらす

それだけならともかく、

酒に酔えば何の役にも立たない。
だから、黒田武士は酒を飲めないのだ。

などと黒田家を蔑むような事まで。
ここまで言われては黒田の恥と、
大盃に注がれた酒を一気に何杯も飲み干し、
約束の褒美として豊臣秀吉より正則が拝領した槍・日本号を所望、
正則も最初は驚き断りますが、「武士に二言はなし」と
太兵衛に日本号を与えてしまいました。
翌朝、酔いが醒めた正則は事の重大さに気付き、
太兵衛に日本号を返すよう求めますが、
太兵衛は「武士に二言はなし」とそれを拒否し続けたとされます。

名槍・日本号は「呑取日本号」とも言われるようになり、
天下三名槍に数えられるこの槍の全長は
十尺六分余ということで3.2m以上の大身槍。
この後、朝鮮で危機を救われた太兵衛が
後藤基次(又兵衛)に贈られたと伝わっています。

この故事に雅楽の越天楽、

それに様々な歌詞を当てはめた越天楽今様の一つとして、
筑前で歌い継がれるようになりました。