軍師官兵衛最終回「乱世ここに終わる」その背景～晩年の如水と黒田家のその後～

2014年の大河ドラマが終了しました。
終始手堅い作りで、現代の時代劇の描写の限界も感じつつも、
1年間通して楽しめる内容となっておりました。
関ヶ原の時に如水は天下を目指していたものの、
息子で黒田家当主の長政が武働きに謀にと、
大活躍したためにたった1日足らずで関ヶ原に家康は勝利し、
その影響で、如水の天下取りの野望は打ち砕かれた…、
という話になっていましたね。
そして、それを父として嬉しく思うと。
このあたりも今の時代劇かなと感じました。

関ヶ原の戦いについては、
以前の大河の時に作った多数の記事がございますので、
よろしければ「関ヶ原の戦い」としてあるそれらの記事をご覧下さい。

江～姫たちの戦国～各ページリンク
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10778257446.html

徳川家康と石田三成の対立が明らかになってきた頃、
如水は毛利の分家・吉川広家に手紙を送り、
その手紙から、既にの時点で
その衝突は避けられないことを見通していたことがわかります。
自分のお古の武具などを下賜ではなく、
家臣に金銭で売却していたほどのケチ…、ではなく倹約家の彼でしたが、
この時に溜め込んだお金で私兵を雇い入れ大友軍を破りました。
関ヶ原は長期戦になるはずで、
そこを突いて九州の諸大名を味方にして天下取りへ…
はたして実際はどうだったでしょうか?
関ヶ原の後の晩年の如水に対し、
家康は長政への褒賞とは別に
如水に対し、上方と東国への領地を与えようとしています。
しかし、彼はそれを固辞。
努めて政治からは遠ざかるようにしていました。
彼の死は59歳の時。

おもひをく言の葉なくてつゐに行く道はまよはじなるにまかせて

辞世の句とともに、イエズス会への寄付を言い遺し、
ロザリオを胸にして亡くなっています。
この時代、主が亡くなると家臣たちは後を追うことがありました。
それが臣下としての倫理観でしたけれど、
予め如水はそれを禁止していたんです。
それはキリスト教徒としての考えからかもしれませんが、
こんな話もあります。
黒田家といえば鉄の結束で知られていましたが、
晩年の彼は乱心されたかと家中でささやかれるほど、
家臣たちに辛く当たっていたと言われます。
それは忠義心は自分に向けるものではなく、
長政に向けられるべきものだと如水は考えていたからだと。
そして、自分の死に当り、
家臣たちが殉死しないための予防策だったのかもしれません。

長政の力となるよう家臣たちにその願いを托した如水でしたが、
その後の黒田家は大騒動に見舞われます。
長政は自分の跡継ぎとして三男の長興を考えていました。
長男の忠之はわがままで粗暴で酒に溺れ、
その器にはないという判断だったようです。
長政は忠之に対し、一定の資産は与えるので、
百姓か商人か出家するか選べと迫っています。
これに反発したのが栗山大膳、栗山善助利安の子で、
忠之に対し、こんな辱めを受けるぐらいなら腹を召されよと切腹を勧めます。
大膳はさらに家中の主立った藩士の嫡子達たちから
三男の廃嫡がなければ全員が切腹する旨の血判状を集めて、
主の長政に迫りました。
これを重く見て、長政は大膳に後見を任せて、1623年に死去。
大膳の考えのまま忠之が長政の跡を継ぎ福岡藩第2代藩主となりますが、
長政が心配したとおりの乱暴者で傲慢だったようです。
近くで諫言するものは大膳のみとなり、
その説教が気に入らぬと彼も遠ざけてしまいました。
ここで、大膳もついに彼を見限ったようです。
忠之には以前から可愛がっていた小姓がいて、
その小姓に1万石を与えてさらに多くの兵を雇い入れました。
徳川幕府成立後、それぞれの大名には軍縮が命じられていて、
それに反する軍拡に幕府から咎められるまでに。
さらには大膳は忠之が幕府に対し謀反を起こそうとしていると上訴、
慌てた藩は大膳一人の乱心ということにして、
なんとかお家取り潰しは免れていますが、
黒田家の幕府での存在感は薄れてしまいました。
これを黒田騒動、栗山大膳騒動などといい、
栗山大膳は二代目、黒田忠之は三代目、
大膳のほうは黒田家に対する忠義の心からかもしれませんが、
忠之のほうはどうだったでしょうか？
似たような話は他の大名家でも起きていて、
韓国のナッツ姫の騒動からも、
特に三代目あたりで世襲は難しくなるのかもしれません。