ジャーマンウイングス機の墜落の原因については、
ボイスレコーダーの内容が報じられているとおり、
かなりの確率でルビッツ副操縦士の意思が関わっているように思います。
また、報じられているのは、
彼が精神科の通院歴があり、
医師からは「勤務不可能」と記述のある診断書が出ていたと。
そして、一部報道ではその病名が深刻なうつ病だったとしています。
仮に墜落が副操縦士の故意によるものだとして、
また、彼がうつ病を患っていたとして、
はたして、この病が彼のこの行動にどう関係していたかについては、
よくよく調査と考察が行われた上で、
慎重に結論を求めなくてはならないでしょう。
うつ病が彼に考えられない行動を起こさせたのかもしれませんが、
そうではないのかもしれませんし、
そうだとしても、それだけではないのかもしれません。
私たちの多くは精神医学の知識を持ちません。
判断材料となる情報も少なく、
この事件について報じられる多くの情報は
精神医学の知見がどの程度生かされているかも不明です。
ジャーマンウイングス機墜落事件の原因はうつ病だ
そう考えると見事なほど腑に落ちるのは事実です。
ただ、事実を知ろうとする時に、
不充分な材料で結論を求めるのは危険です。
それが、未だ偏見や誤解の多いうつ病だとされているなら、
その結論については慎重に考えられたものでないといけないでしょう。
ここのところ、私は徳川時代以前の日本の風俗の勉強をしています。
残念ながら、私の能力では一次資料には当たれませんが、
それでも、今まで知らなかった
当時の日本人の姿に触れることが出来ます。
精神疾患といいますと、
何やら現代病のような扱いを受けますが、
実際は千年前にもそれらの病はありました。
現代でも、たとえばうつ病の原因については仮説が様々で、
確定できない部分があり、複合的である可能性もあります。
それが大昔ならば尚のこと、
理解不可能だったことでしょう。
だから、その原因を神仏や天狗、妖に求めました。
憑き物が神憑りならシャーマンのような扱いにもなりましたし、
狐憑きのような妖怪ならば、
攻撃もされてきたことでしょう。
西洋の魔女狩りの中にも、
そういった患者がたくさん含まれていたはずです。
よくわからないから、
精神疾患の原因を超日常的な世界のものにしてしまい、
その結論を得ることで、一種の安心感を得ていたのだと思います。
日本でも私宅監禁、座敷牢が行われていたのは、
遠い昔のことではありません。
よくわからない
という状態を私たちは嫌います。
だから、よくわからない事柄については
不確かでも何かしらの結論を求めようとします。
いちいち疑うよりも、何も考えずに
周りの人が言っていることを信じる方が楽だからです。
今、私たちはうつ病についてどれほどのことを知っているでしょうか?
今もうつ病の原因は確定できていませんが、
現代の知見は昔とは比較にならないぐらいに進歩しています。
たとえば、神経伝達物質がうつ病の原因かもしれないと考えられ始めたのは、
50年程前のことです。
以後、研究が進められ、うつ病は脳の神経伝達物質の失調が原因という
一つの考え方がされるようになり、
だから、それらの何かが足りないなら、薬で補ってやればいい、
調整してやればいいというアプローチが生まれてきました。
鉄欠乏性貧血患者には鉄剤が処方されますが、
これは血中に鉄分が足りないので、
鉄分を薬剤で補給しているわけですが、
原理的にはこれと変わらないでしょう。
とかく、偏見や誤解の多いうつ病で、
この事件が現段階で早計な結論に至り、
誤った認識が広がることを懸念しています。
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ドイツ機墜落事件の原因について結論を急ぎすぎない -うつ病の合理的な知見を-
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