政治家は常に、諸問題に対し、
具体的な方法論、政策を議論すべしと考えていますが、
この問題は難しいです。
本日、ギリシャではEUなどが求める
財政緊縮策に同意するかどうかの国民投票が行われる予定です。
「反対」となり、政権はそれをバックにEUと交渉、
緊縮NOのまま、さらなる支援を引き出したいようですが、
EUも嫌気をさしているようですし、
この後も数々の負債が償還期限を迎えることになります。
仮に近い将来ギリシャがEUからの離脱ということになりますと、
当然、ユーロを使い続けるというのはムシがよすぎますので、
新ドラクマか何かの独自貨幣を新造して流通させるのでしょうけれど、
(ユーロ導入に際し、輪転機は破壊したそうですが)
その新通貨に国際的価値があるかといえば、
やはり、難しいのでしょうね。
確実に物価高になるのでしょう。
それがどれぐらいになるのか、
ジンバブエほどにはならないとは思っていますが…
頼みの綱は観光業、治安が悪くならなければ、
…悪くなるでしょうけれど、回復すれば
通貨安で観光客が押し寄せるはずですので、
ギリシャ経済が持ち直すまで我慢できるか、
それがどのぐらいか、本当に持ち直すのか、
苦しく不安な選択になろうかと思います。
チプラス首相は「欧州の中で尊厳を持って生きることを決める」、
バルファキス財務相は、
「債権団はギリシャに恐怖心を植え付けるために
銀行休止に追い込んだ。まさにテロだ」
として、「反対」の意思表示をするよう、
強く国民に訴えかけていますが、
少なくとも、当面の間、地獄を見ることになるとは思います。
財政緊縮策に賛成という結果になった場合、
とりあえずはEUに残留ということになるのでしょう。
緊縮財政ということで、政府の支出は減らされ、
国民の収入も抑制されます。
内需も減少し、GDPも下がります。
現在、失業率は27%程度、
若年層となりますと、5割近い失業率だという報道もあります。
ここが回復しない限り、国民の消費は増えませんよね。
収入が誰かの支出である限り、
国民の消費が増えなければ、国民の所得も増えない、
引き続き、ギリシャは独自の経済政策を打てませんので、
ギリシャの力で、これを回復させることは不可能になります。
当面、マシなのはこちらで、
国民もこちらを選択しそうですが、
これはこれで地獄ですね。
(追記:逆の目が出ました)
現在のギリシャ危機の根本的な原因は、
国家が国家、国民のための経済政策を打てないという
EUの構造的欠陥が問題であるということは既にお書きしましたが、
具体的には、金を貸してやるからお前ら金を使うなということを、
EUなどは求めてきていて、
つまりはプライマリーバランスを黒字化しろと、
ギリシャに言ってきていた訳です。
それで、どうなったか?
昨年のギリシャのプライマリーバランス、GDP比0.4%の黒字
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0N613520150415
黒字になっています。
この前年も黒字ですので、2年連続の黒字です。
プライマリーバランス、基礎的財政収支は
債務に関わる元利払い以外の支出と公債発行などを除いた収入との収支で、
収入が増える、支出が減ることで黒字になります。
ギリシャの財政収支の推移
http://ecodb.net/country/GR/imf_ggxcnl.html
ギリシャの歳入・歳出の推移
http://ecodb.net/country/GR/imf_ggrx.html
こちらのデータで見てみますと、
2009年以降、歳出を"順調"に減らし続けています。
実は、ギリシャはEUの言うことを真面目に実行していたんですね。
そして、増税したものの歳入は増えていません。
プライマリーバランスは歳出カットで成し遂げたということになります。
プライマリーバランスが黒字化されたことで、
ギリシャに何がもたらされたのか?
何もないんですよね。
生活は苦しくなっているはずですが。
悪いのはギリシャだ
たしかにそうだと思います。
旧ドラクマ時代に経済状態を粉飾してEUに加盟、
"忠誠を誓う"べく輪転機を破壊してユーロ導入、
ドラクマ時代よりも低い金利で資金調達が出来るようになったため、
以前よりも増して国外からの負債を増やしてしまいました。
しかし、それだけではないんです。
そもそものEUとユーロの構造的欠陥に加え、
EUなどがギリシャに財政再建を求めるに際し、
ただただ、歳出削減しろと、緊縮財政を迫り、
プライマリーバランスの改善を求めたことで、
ギリシャ国内の経済はさらに悪化してしまいました。
この問題はEU、ユーロの構造的欠陥から始まり、
元々ギリシャが抱えていた
問題をさらに深刻化させたのもEU
なんです。
おそらく、PBを黒字化するだけでは、
ただ単に景気が悪くなって経済規模が縮小、
ギリシャは負債の返済の目処も立たないため、
債権者にとっても不利益となるはずです。
プライマリーバランスのみにこだわることの危険性、
そこが認識されないといけません。
国民が不幸になるだけです。
これは日本の財政にもいえること。
プライマリーバランスを黒字化させることなんて簡単です。
ギリシャのように大増税の上、歳出をカットすればいいんです。
国民が泣こうが、飢え死にしようが、
国家としての責任である国民の生存権などの
基本的人権を守ろうとしなければいいだけです。
それで何が起きるのか、それはギリシャを見ればよくわかります。
産経のコラムにも、"借金漬けの日本はギリシャを他山の石として~"
というようなことが書かれていましたが、
ギリシャのプライマリーバランスが黒字であることは無視しています。
PBが黒字なのに、と、
そこを考えずに、歳出削減を実行すると、
こんなことになってしまいます。
日本は
ギリシャのようになるな
そういうことですね。
最後にギリシャ危機による国際的な影響について。
冷静に考えれば、前回のギリシャ危機とは違い、
ギリシャの負債のほんどは、ECBやIMFが抱えています。
前回は民間機関も大量に抱えていましたので、
たいへんなことになったんですが、
今回は違います。
ただ、あくまでも"冷静に考えれば"です。
今まで、冷静に考えられないことで、
世界経済は危機は陥ってきています。
予断を許さないのは事実だろうかと思います。
それよりも、気になるのは上海ですねえ…
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