大村智先生がノーベル医学生理学賞受賞、
大村先生についてはその研究そのもの以外の部分で
いずれお書きすることもあるかもしれませんが、
まずは昨夜のクイーンズ大名誉教授で、
サドベリー・ニュートリノ観測所の
アーサー・マクドナルドディレクターとともに
ノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生の研究、
ニュートリノについて記事にしてみたいと思います。
個人的には、小柴昌俊先生の受賞時に次ぐ興奮となりました。
小柴先生は私が初めて受賞前から著作を読んでいた研究者で、
上がその改訂版なんですけれど、
今回受賞の梶田先生は小柴研究室のメンバーでした。
多くのメディアでも取り上げられましたけれど、
この小柴先生から梶田先生へという研究の流れの中に、
もうひと方、戸塚洋二先生という方がおられまして、
2008年に直腸がんで亡くなられているんですが、
今回、梶田先生が受賞されたのであれば、
きっと、戸塚先生も同時受賞されていたことだろうと思います。
戸塚先生は小柴先生の弟子ともいえる方で、
梶田先生にとっては師匠に相当する方でした。
今回の受賞は、ニュートリノにまつわるお三方の努力の賜物です。
戸塚先生については、
をご覧下さい。これは抗がん剤の使用記録なのですが、
私はこれを、がんの治療研究の資料として、
後世へ戸塚先生が遺されたものだと思っています。
さて、ニュートリノとは何ぞやという話なんですが、
私もこのブログで検索してみますと、
3つの記事で「ニュートリノ」という言葉を出してはいるものの、
この素粒子自体に触れたことはありませんでした。
「説明出来ないのは、理解出来ていないから」だと、
私は思うことがあります。
今、書き物をしている私でもありますし、
ここでニュートリノの説明を試みてみることとします。
ニュートリノを理解するには、
まず素粒子についての説明が必要になります。
今の中学でどのような教え方をしているのかわかりませんが、
私たちの時代は、物質は原子から出来ており、
原子が物質の最小単位だと教わりました。
しかし、実際には原子は原子核と電子により構成されているもので、
さらに原子核は陽子と中性子から出来ています。
では、これが最小かといえば、
陽子はアップクォークとダウンクォークで構成され、
これら、これ以上小さく出来ない粒子を素粒子と呼んでいます。
歴史的にいえば、原子が最小単位だと考えられていた時代は、
原子が素粒子でした。
素粒子とはそれ以上分解出来ない最小の粒子のことで、
もしも、仮に現在でいう素粒子が分解されたならば、
素粒子という言葉が指すモノは違うモノとなるでしょう。
その素粒子の一つがニュートリノです。
ニュートリノの概念は1930年代には既に予言されていて、
その後も研究は続き、実際に原子炉からのニュートリノの発見や、
太陽からのニュートリノの観測に成功、
そして、大マゼラン星雲内で起きた超新星爆発からの
ニュートリノ観測に成功したのが、
1987年のカミオカンデ、小柴先生らのチームになります。
カミオカンデは広い意味での望遠鏡の一つです。
3000トンの超純水タンクと壁面の1,000本の光電子増倍管で構成され、
岐阜県の神岡鉱山地下1000mに建造されました。
実はニュートリノはありふれた素粒子です。
私たちの周りを常に飛び交っています。
東京工業大学理学部物理学科の久世正弘先生の喩えによれば、
私たちの指先の面積で毎秒660億個とのこと。
ニュートリノは常に直進する性質を持ち、
私たちの体だろうが地球だろうがすり抜けてしまいます。
ただ、他の物質とまれに衝突することがあり、
衝突が起きると、高速で移動する電子から光が放出されます。
これをチェレンコフ放射といいますが、
このチェレンコフ光を観測するための施設がカミオカンデでした。
観測には成功したものの、
その性質などについてはわからないことだらけのニュートリノ。
小柴先生らはさらなる巨大施設による観測を計画します。
それが同じ神岡鉱山に建造されたスーパーカミオカンデです。
スーパーカミオカンデは、
その理論は共通ながら、規模が桁違いとなりました。
タンクに蓄えられる超純粋は50,000トン、
チェレンコフ放射を観測する光電子増倍管は11,200本にもなりました。
ここで梶田先生らが、ニュートリノが周期的に変化している、
即ちニュートリノ振動を観測、
変化には時間が関わることから、
質量を持っていることを確認、
今回の受賞となりました。
現在、梶田先生はら東大宇宙線研究所の所長です。
その東大宇宙線研究所が力を注いでいるのがLCGT。
LCGT、愛称KAGRA(かぐら)は
100年前にアインシュタインが提唱した重力波を捉えるための装置で、
年内の試験運転開始が予定されています。
重力波を観測出来れば、
これもノーベル賞級の成果といわれそうですね。
そのLCGTなどについて、昨年の7月24日、
梶田先生がニコ生でインタビューを受けておられたらしく、
その書き起こしが以下のページでご覧になれます。
神岡発!アインシュタインの波を捕まえる〈WEBRONZA地底から科学カフェ1〉
http://webronza.asahi.com/science/articles/2011081800004.html?ref=fb
この研究にも注目しておいてください。
梶田先生は30秒ぐらいからのご登場です。
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