今回のビーバップ!ハイヒールは、
関西人も知らない大阪 ~街に埋もれたミステリー~
と題して、大阪の地名が取り上げられました。
地名には歴史が封じ込められているんですね。
また、番組にはなかった余計な事を加えつつ、
記事にしてみたいと思います。
江戸とは違い、かつて町人が大多数だった大坂。
町人は武家よりも識字率が低く、
地名は音によって認識されてきました。
口伝えなので変化が起こりやすく、
他所の人にはわかりづらい地名がたくさんあります。
杭全
知らないとまず読めません。
大阪市東住吉区にある町名で「くまた」と読みます。
これは渡来人がかつて湿地だったこの地域に、
杭を打って自らの土地の境界を主張、
全ての杭を打ったことから「杭を全く打った」
「杭全」となったという説があります。
また、杭を打ったのは、
この湿地の地盤安定のためだという話も。
あと、番組では触れられませんでしたが、
渡来人の故郷「百済」からの転訛だという説もあり、
東住吉区今林にはそれを思わせる百済貨物ターミナル駅があります。
今回のゲストブレーンは、若一光司さん。
この種のお話は十八番中の十八番です。
放出
大阪の難読地名ではこれが最も有名です。
昭和生まれの関西人なら、このCMはご存じのはず。
今や、ビッグモーターに飲み込まれてしまいましたが、
形を変えてもなお「8710」は健在です。
大阪市鶴見区と城東区にまたがるこの地名、
杭全もそうですが、現在の大阪市の多くは、
古代、潟や湿地で、現在の放出には湖沼がありました。
そこから旧淀川へ水を放出、それが地名になりました。
元々は「はなちいで」と発音していたのが、
「はなちで(あるいははなちてん)」
「はなて」「はなてん」と転訛していったのでしょう。
その他、番組以外の話では、
7世紀の天智天皇の頃に起きた
草薙剣盗難事件に由来するという説もあります。
新羅の道行という僧が熱田神宮(名古屋市)から、
三種の神器である草薙剣を盗み出したものの、
船での逃走中に嵐に遭って、戻って来たとあります。
その道中、この災難を神の怒りだと考えた彼は、
剣を投げ放ったと日本書紀にはあり、
それが現在の放出の辺り。
また、熱田神宮には、道行が剣を投げ捨てようとしたものの、
手から離れなくなり、自ら出頭したところ、
死刑になったという記録があります。
立売堀
大阪市西区にこの地名。
これと放出が大阪難読の一二を争います。
昔、上岡龍太郎さんもその由来を説明しておられましたね。
江戸時代、ここに存在していた堀の脇には材木市がありました。
この時のここの商習慣では、
立ったまま商い「立売(たちうり)」が行われましたので、
この堀川は「立売堀」と呼ばれます。
この読みの由来については、
1614年からの大坂の陣にあります。
この地には仙台伊達家の陣があり、彼らは堀を設けました。
これは伊達家が掘った堀なので、
「伊達堀」で「だてほり」であるはずが、
皆が皆、この「伊達」を「だて」と読めたわけではありません。
おそらく、読めない人のほうが多く、
そのまま「いたち」と読んだのでしょう。
ここから「いたちぼり」という読みが定着し、
後に材木の立売から、「立売堀」となっても、
その読みは「いたちぼり」のままとなり、
堀がなくなっても、その由来は地名として生き残っています。
喜連瓜破
これは地名というよりは谷町線の駅名。
「きれうりわり」と読みます。
この駅は平野区喜連2丁目にあります。
当時の渡来人である高句麗人、
この「句麗」を昔は「くれ」と読み、
これが転訛して「きれ」に、
いつしか「喜連」の文字が当てられました。
そして、「瓜破」。
孝徳天皇の頃といいますから、7世紀の前半。
ここに住んでいた僧侶・道昭の前に突然天神像が現れます。
道昭はここに神社を創建、瓜を供えました。
すると、なぜか瓜が真っ二つに割れ、
ここから現在もその地にあり続けている瓜破天神社の名前となり、
やがて、地名にもなりました。
この瓜が割れたという件、
道昭自身が割って供えたという話もあるようで、
ただ、この道昭、続日本紀によれば、
遣唐使に伴い唐の国に渡り、
玄奘三蔵(いわゆる三蔵法師)から薫陶を受けて帰国、
諸国をまわり、教えを説いたとされています。
では、なぜこの2つの地名が合わさった名前の駅が出来たのでしょうか。
この駅は喜連2丁目ですので、
大阪市交通局は「喜連駅」とする予定でした。
しかし、その地が喜連と瓜破の間にあるのに、
なぜこの喜連駅なんだと瓜破側から反発があり、
結局、難読地名を2つ並べた奇妙な駅名になったのでした。
駅名は地域にとって極めて重要ですので、
揉めることもあり、近年では北区梅田の北新地駅。
これは元々、桜橋駅になるはずが、
飲み屋街のほうからの要望により、この駅名になりました。
このあいだも、北新地とは関係のない店主から、
この時の愚痴を聞かされました。
2つの地名が合わさった駅名ですと、
西中島南方があります。
これだけ見ると、西なのか、中なのか、南なのかというヘンな感じですが、
これは「西中島」と「南方」を合わせたものです。
元々、この地には阪急京都線の「南方駅」がありました。
大阪市交通局がここに駅を作る時に、
同じ名前にしようとしたところ、
西中島側からクレームが出て、
双方丸くということで現在の駅名になりました。
ただ、この駅名で複雑なのは、
阪急の駅は「みなみかた」なのに対し、
御堂筋線のほうは「にしなかじまみなみがた」と「が」が濁ります。
周辺の「南方」の読みも一定ではなく、
西中島南方駅前の「西中島南方駅前交差点」は
「にしなかじまみなみかたえきまえ」と濁らないそうです。
なお、この合体型の駅名はここが全国初とのこと。
…続きます。
余計な事を書きすぎて、
この時点で1時間番組の開始から10分過ぎぐらいのあたりです。
次は「大阪市久太郎町四丁目渡辺」について。
皇居が東京都千代田区一番一号であるように、
「丁目」の後には数字で
「○番」と「○号」と続くことが多いですが、
この「渡辺」は「番」の番地にあたります。
数字ではない番地です。
全国の渡辺さんは必見の番組では
スルーされたお話などもお書きする予定です。
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