先日、国勢調査における人口減が明確になり、
特に地方での人口減が深刻であるという現実が数値となって現れていました。
政府は東京一極集中を放置、
東京の出生率は1.06で、全国ワースト1。
東京に人が集まれば集まるほど、
子供は生まれにくくなるというのに、
政府はそれを本気で解消しようとはしません。
丁度1年前、長野県大町市にある市立大町総合病院は
同病院における分娩休止を発表しました。
この市立大町総合病院は大北医療圏において唯一分娩を取り扱う医療機関です。
それまでは2名の常勤医がいて、
そのうち1名が退職、もう1名の60代医師が長期療養のために、
現場には立てなくなってしまいました。
これまでも信州大学医学部附属病院の協力を得て、
分娩を取り扱ってきましたが、それも難しくなったのでしょう。
ここで分娩できないということは、
長野県大町市、池田町、松川村、
白馬村、小谷村では子供が産めないことを意味します。
このような事態に陥る地域が出ないための施策が
行われなければなりませんが、
私は周産期医療において、
抜本的な何かが行われたという事実を知りません。
産婦人科医は激務で、さらに他の診療科よりも、
高い訴訟リスクを抱えています。
分娩には常勤の産婦人科医師2名が必要です。
何があるのかわからないのが出産で、
産科医にさえ、その分娩が確実に安全に終えられるかなんて、
わからないこと。
そんな環境で仕事をしていても、
労働環境としては恵まれず、
辞めてしまったり、過労で体調を崩したりして、
ますます現場に産科医がいなくなってしまっています。
助産師のみの分娩もありますが、
何かが起きた時のために、産科医は必要です。
結局、今現在も産科の現場で頑張っておられる医師は、
「自分がいなくなったら」とか「私がやらなければ」といった
その義心や正義感で激務をこなしています。
しかし、それも市立大町総合病院の常勤産科医のように
医師自身が体を壊してしまえば、
もう分娩は行えなくなってしまいます。
結局、市立大町総合病院については、
地域住民などの4万の署名活動を経て、
10月にその常勤医の体調が回復、
ドクターバンクを利用して新しく60代の男性医師が加わり、
計2名の常勤医を確保したことで、
分娩を再開することが出来ました。
ただ、ともに若くはありません。
大北医療圏という広域の分娩全てを
彼らに頼らなければならないという問題は、
今も残っているのかもしれません。
日本中にはギリギリ産科の現場に踏みとどまっている医師も多いのかもしれません。
もしも、彼らをそこにつなぎ止めているのが、
義心や正義感だけだったとすれば、
それが切れた時、
その地域の出産はどうなるのでしょうか。
国にとって、子育ての環境整備が必要なのは当然ですが、
それ以前に、子供を地域で埋めないようなことにならないための
対策が必要なのです。
皆が皆「コウノドリ」の鴻鳥先生のような活躍を期待するべきではありません。
医師も人間なのです。
周産期医療は国の未来を担う医療です。
国の未来のために、
周産期医療を支えなければならないのです。
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その人の義心や正義感のみに頼るシステムはいずれ崩壊する -周産期医療-
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