いろいろとブラジルが大変です。
昨年暮れだったか、ブラジルについて調べていた時、
現地でジルマ・ルセフ大統領の弾劾裁判があるのかが
大問題になっていました。
それより少し前の彼女の支持率はわずか9パーセント。
現在は職務停止中で、大統領の権限を振るえません。
ルラ前大統領からルセフの汚職に関する話にはあきれるばかりですが、
鉄鋼や石油輸出を中国に頼り切っていた影響で、
経済は悪化の一途をたどり、
治安もさらに悪化、渡航を控えるべきではないかという話も出ています。
BRICSがもてはやされた時代でも、ツアーコンダクターの中には、
ブラジルの空港に着いたら、
まず、現地の店で
現地の人が着ているような服を買って着替えてくださいと
話している人もいたぐらいですから、
今はさらに用心しなければならないのでしょう。
そしてジカ熱。
私がジカ熱について調べた時の資料を見てみますと、
今年初めの頃のもので、
その時点では小頭症とジカウイルスの関連は
「強く疑われる」ものでしたが、
その後、研究が進み、ほぼ間違いないという状況になりました。
簡単にジカ熱についてお書きしておきますと、
ジカウイルスによる感染症であるジカ熱は
デング熱やチクングニア熱も媒介するネッタイシマカなどにより感染します。
ジカウイルスに感染しても、多くの人は無症状です。
発症する場合も程度は重くなく、
その症状である発熱や発疹など、風疹に似た症状については
体力に問題がある人以外は過剰に心配する必要はないでしょう。
ただ、最大の問題は小頭症との関連です。
妊婦がジカウイルスに感染すると、
胎児が小頭症になってしまう可能性があります。
小頭症とは生まれつき頭部が小さい先天性の疾患で、
その原因は多数あるものの、
日本産婦人科医会では
流行地域ヘは渡航をお控えください
とアナウンスしています。
この流行地域とは、
中米南米カリブ海地域東南アジア(タイ・ベトナム・フィリピン)太平洋諸島、
アフリカの一部地域のことを指しています。
そして、ジカ熱の性感症としての側面も重要です。
居住地域が流行地域ではなく、
流行地域に渡航歴がない女性がジカ熱を発症し、
パートナーに渡航歴があったという例が数例あり、
その頃は「もしかしたら」というレベルだったものの、
今は精液中に長期間ジカウイルスが存在していると考えられていて、
ジカウイルスは性交渉でも感染すると思っておいたほうがよいでしょう。
日本産婦人科医会は
・流行地滞在中は適正なコンドーム使用か性行為を控える
・流行地渡航された方については
男性; 帰国後少なくとも4週間は性行為時にはコンドームを適正に使用
女性: 帰国後最低4週間は妊娠を控える
としています。
重要なのは、「帰国後発熱がある場合は」などではなく、
「帰国後」となっている点です。
ジカウイルスに感染しても、
8割は発症しないとされています。
しかし、体内にはウイルスがあり、
無自覚なまま、パートナーを感染させてしまうおそれがあります。
妊婦のジカウイルス感染症(ジカ熱感染)と小頭症の発生のおそれについて (2016年5月24日改訂版)
http://www.jaog.or.jp/news/160524zikavirus.pdf
なお、国立感染症研究所のサイトで確認してみましたら、
注意すべき期間を長く設定していました。
ジカウイルス感染症のリスクアセスメント 第7版
http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/2358-disease-based/sa/zika-fever/6531-zikara-7-160616.html
・性行為感染及び母子感染のリスクを考慮し、
・流行地に滞在中の男女は、症状の有無に関わらず、
性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えること
・流行地から入国(帰国を含む)した男女は、
ジカウイルス病の発症の有無に関わらず、
最低8週間(パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中)は
性行為の際にコンドームを使用するか、性行為を控えることす
蚊による感染も同様で、
ジカウイルスはネッタイシマカだけでなく、
ヒトスジシマカも媒介します。
ヒトスジシマカは秋田と岩手以南、
日本のほとんどの地域に分布しています。
ジカ熱の潜伏期間は2 ~12日、
感染に気づかず帰国することもあるでしょう。
渡航先でジカウイルスに感染した人が帰国し、
その人をヒトスジシマカが吸血、
その血液とともに、ウイルスがヒトスジシマカの体内に入り、
次の吸血の時に、誰かを感染させることになります。
渡航歴のない人が
日本で発症する可能性は充分にあります。
流行しないとも言い切れませんので、
各自、流行させないように努力が必要です。
ブラジルは冬。
しかし、熱帯であるために夏よりは少ないながらも、
蚊の成虫がいます。
リオデジャネイロ・オリンピックなどでいらっしゃる場合は、
良くない治安に対する備えとともに、
蚊に刺されないようにしなければなりません。
虫除け剤や長袖などを着用しましょう。
そして、流行地に渡航し、
発熱や発疹がある場合には医療機関を受診してください。
身近な人をジカ熱に感染させないために。
日本でジカ熱を流行させないために。
日本の防疫システムにも問題がありますし、
また、そんなお話をお書きしたいです。
そういえば、今月4日、フマキラーとアースが
高濃度ディートの製品の製造販売に向けて
その承認を求めて申請書を厚生労働省に提出しました。
ディートは人体用虫除け剤です。
アメリカなどでは一般に販売されているものの、
日本では濃度12パーセントまでの低濃度のものしか売られていません。
これを海外並みに30パーセントのものを製造販売したいということで、
今回の申請になりました。
高濃度ディートを厚労省が制限していたのは、
ごくまれに神経障害や
皮膚炎などの副作用を引き起こすことがあるとされているからで、
子供にも問題があるともされてきました。
子供に対しては、今年ぐらいから
イカリジンという成分が配合されたものが販売されていて、
こちらは子供への使用制限はありません。
ただ、その濃度は5パーセント程度で、
こちらも15パーセントの高濃度のものを製造販売したいようです。
池田模範堂や大日本除虫菊なども、
新しい虫除け剤の製造販売に前向きです。
デング熱やジカ熱予防のために需要が増えると考えているのでしょう。
※追記
15日、米疾病対策センター(CDC)が
女性から男性へのジカウイルス感染例を確認したと発表しました。
ジカ熱、女性からの性交渉感染を初確認…CDC
http://www.yomiuri.co.jp/science/20160716-OYT1T50075.html
女性は流行地からニューヨークへ、
そして、男性は米から出ておらず、
性交渉の1週間後に発熱したとのこと。
この感染の流れは初めてですが、
予防方法は男性から女性への場合と同じでよいはずです。
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今年の夏はジカ熱に注意が必要かもしれない ~性感染症としての一面も~ ※追記あり
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