ビーバップ！ハイヒール「神様になった日本人」(5)～台湾の教育に命を賭けた六氏先生～

これは6年前に出かけた大阪市天王寺区の一心寺にある本多忠朝の墓。
徳川家康配下随一の勇将・忠勝の次男です。
忠朝は大坂冬の陣で活躍したものの、
深酒の影響で失態を演じ、家康から叱責されます。
このあたりが戦地となった次の夏の陣では汚名返上のために奮起しますが、
単騎で敵陣へ斬りこんで戦死します。
死に臨んで彼はこれまでの酒での過ちを悔い、
さらに

戒むべきは酒なり、
我が墓に詣でる者は、必ず酒嫌いとなるべし

と遺言したとされ、
「酒封じの神」として、酒弊の除滅の御利益があり、
今も断酒祈願のために納められたしゃもじが並んでいます。


さて、白駒妃登美さんがカシコブレーンの1月26日、

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神様になった日本人～名も無き男たちが起こした奇跡の物語

この日の放送分はこれで最後になります。




台湾にある「六氏先生之墓」。
今回は彼らのお話です。


1894年(明治27年)、日清戦争により、
台湾は日本に統治されることとなりました。
当時の台湾の産業といえば農業で、
それまで統治していた清朝の方針からか、
産業、文化の面では遅れていました。
特に教育面の遅れは深刻で、
当時の台湾人の識字率は0.5％に過ぎませんでした。
どんな産業を興すにしても、
その下地となる教育が必要になります。

翌年、日本政府は7人の教師を現地に派遣することにします。
それが政府の募集に応じて参加した楫取道明、関口長太郎、
中島長吉、桂金太郎、井原順之助、平井数馬に山田耕造です。
なお、楫取道明がリーダー的存在となりましたが、
彼は大河ドラマ「花燃ゆ」にも登場した
長州の志士で初代群馬県令・楫取素彦の次男です。
これに文部省の役人だった伊沢修二が加わり現地入りします。

8人は芝山巌学堂(しざんがんがくどう)という
台湾初の学校で教育を開始することにします。
しかし、生徒はわずか6人でした。
それも、ここに来れば何か食べ物がもらえるらしいという噂があったから。
日本に対する不信感から、
日本人から何かを教わろうとする者はなく、
なぜ、教育を受ける必要があるのかも理解されていませんでした。

教師たちは日本語を教えることになりますが、
彼らとの意思の疎通には現地の言葉が必要です。
現在の台湾も、多くの少数民族が暮らしていて、
共通語はあるものの、それぞれ言語が違います。
そこで、彼らは現地の言葉を子どもたちから学ぶことにしました。

そんな時、孝明天皇の義弟、明治天皇の義理の叔父である
在台湾近衛師団長の能久親王がマラリアで薨去。
遺体とともに伊沢修二と山田耕造も一時帰国します。
当時、日本は現地の匪賊、
抗日ゲリラに悩まされていて、
一度は台湾入りした日本人の多くが帰国していました。
しかし、楫取道明以下6人の教師たちは学校で子どもたちと寝食を共にし、
授業を続け、彼らの熱意は次第に周辺住民にも伝わり、
生徒は21人になりました。

ただ、現地の治安はさらに悪化していて、
住民たちも避難を勧めました。
それでも、彼らは学校に残ります。

死して余栄あり、実に死に甲斐あり

自分たちが死んでも、
台湾の教育に情熱を注いだ日本人がいたことを
後世の人の心に残せるならばと。

1896年(明治29年)1月1日芝山巌。
6人の教師たちと用務員は約100人の抗日ゲリラに取り囲まれ、
説得しようと試みましたが聞き入れられず、
7人は惨殺されてしまいました。
ゲリラたちは命だけではなく、
彼らが身につけていた金品や衣服、
学校の備品などを持ち去っています。

この事件の後、台湾における教育に命を賭けた心は
「芝山巌精神」として語られるようになります。
1930年(昭和5年)には台湾の教育の神として
「芝山巌神社」が創建されることとなります。
日本政府は台湾の教育にさらに力を入れ、
識字率は90％にまで上昇しています。
ただ、先の大戦で大陸からやってきた中国国民党により神社は破壊、
代わりに国民党軍統局副局長のための「雨農閲覧室」が建設されました。
遺骨も危機的状況かと思われましたが、
破壊前に神社隣の芝山巌恵済宮の住職が密かに別の場所に安置させており、
李登輝政権による民主化で「六氏先生之墓」が復元、
それは1995年(平成7年)、芝山巌学堂開校100年の出来事でした。

この墓には献花が絶えず、
ここに至る道は整備されていて常に美しく、
それは現地有志の方の清掃によるものだそうです。




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