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NHKガッテン! 糖尿病患者に適用外処方の睡眠薬を勧める

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私がチェックさせていただいている
医師や薬剤師の方々のアカウントが騒がしくなっていて、
何やらNHKが「ガッテン!(旧ためしてガッテン!)」でやらかしたようです。

私は番組を見ていないので、
この時の放送を「肯定的」に紹介しているいくつかのブログを参考に
内容を想像してみましたが、
仮にそれらのブログが五割増しだったとしても、
あの日の放送は完全にアウトだったと思われます。

最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎

これがその日のタイトル。
主旨としては糖尿病の予防と治療に「睡眠」をというもので、
もしも、その目的が「血糖値を下げること」
あるいは「血糖値が上がりすぎないようにすること」で、
そのために睡眠の質の改善というのであれば、
問題はないと思います。

血糖値とは血中のブドウ糖の濃度で、
食事、特に炭水化物や糖分の多い食事で数値が上昇します。
ただ、ほかにも血糖値を上昇させる要素があり、
風邪などの感染症や過労、ストレス過多、
PMS(月経前症候群)の症状にも血糖値の上昇があります。
そして、睡眠不足でも血糖値は上がる傾向にあり、
睡眠時間とその質を高めることで血糖値を下げましょう、
この放送の主眼はここにあるのでしょう。

しかし、そのために特定の睡眠薬(不眠症治療薬)を、となっていたようで、
ここは完全にアウトです。
絶対に言ってはいけません。
不眠症治療薬は文字通り、
不眠症を治療するための薬で、
糖尿病の治療などに使用するものではありません。

承認されていない効能や効果で
医薬品を使用することを適応外処方といいますが、
この適用外処方では、海外では承認されているのに、
日本ではまだというケースで致し方なくということもあるものの、
今回はそういうケースではありません。

適用外処方は自由診療であること以上に、
その目的に使用するために欠かせない
臨床試験などの必要な手続きがない段階で、
こんなことを言っていいという世の中になってしまうと、
私たちの身の回りの薬は限りなく毒に近づいていくことでしょう。

今回、番組で推奨されたのは
「オレキシン受容体拮抗薬」というタイプの不眠症治療薬です。
これに該当するのが「スボレキサント(商品名:ベルソムラ)」。
不眠症治療薬には薬理(作用機序)別にいくつかのタイプがあり、
中でもオレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラは2014年に発売されました。

どの薬でも副作用が心配されますが、
ベルソムラの場合、眠気、夜間の行動異常、
自殺念慮、ナルコレプシー様症状が挙げられています。
眠気や夜間の行動異常はほかの不眠症治療薬でも同じで、
自殺念慮も高容量のものでは懸念されているものの、
低容量であれば可能性は極めて低いという評価があります。
ナルコレプシーは突然眠ってしまう、脱力するという病気のことで、
ナルコレプシー様症状はそれに似た症状という意味です。
臨床試験においいて、ナルコレプシー様症状は見られなかったようですが、
薬理としては起きてもおかしくないという程度の評価です。
ただ、臨床試験が300例未満だというのは心配です。

不眠症治療薬としては優秀な薬なのかもしれません。
ただし、それは不眠症の患者のうち、
これが処方されるのが適当であると判断された患者に限られます。
糖尿病患者ではありません。
糖尿病はその病そのものの症状もありますが、
それに加えて、様々な合併症が現れるのが常です。
糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症の三大合併症に加え、
心筋梗塞や脳梗塞、認知症や骨粗鬆症のリスクを増大させます。
合併症にはそれぞれの症状があり、
それらそれぞれの患者にベルソムラが処方された場合、
どういう影響があるのか、
調べられたことはないと思います。

私も病後、不眠で苦しんだことがあり、
不眠症治療薬のお世話になったことがあります。
不眠で苦しんでいる人は不眠症治療薬を服用してもいいかと思います。
ただ、それが改善した時には
手放すべきだと思います。

ベルソムラは従来のものよりも、
依存性は低いという評価があるものの、
完全にないとはいえません。
臨床試験が少なめなので
そういう評価になっているのかもしれません。
これも、症状が改善したときには手放すべきものなのです。

糖尿病患者がこれを使用した場合、
その点ではどうなのか、
この問題をNHKはどう考えているのでしょうか。
怪しげな健康情報が蔓延する中、
医薬品の情報は特に慎重に取り扱うべきです。

水素水はインチキ業者を儲けさせ、
腹立たしい限りですが、
健康被害が出る可能性は低いです。
納豆なんかでも、その可能性はあまり心配しなくてもいいでしょう。
しかし、医薬品は違うのです。

この番組では睡眠改善のために、
「筋弛緩法」という睡眠前にお勧めの運動が紹介されています。
個人的には価値があろうかと思いますし、
これなら、健康被害も心配しなくても良いでしょう。
なぜ、NHKがベルソムラを推薦したのか、
まだエビデンスが皆無の説を
大々的に採り上げたのか、
一部にはMSD社との関係を疑う声もありますが…
MSDは講演でベルソムラと糖尿病の関係を話していたという参加者の声も。
処方外の効用について
関係者が話してはいけないはずですので怪しさ満点です。

間違うことはあってもいいと思いますが、
殊に命と名誉に関わる問題は慎重であるべきです。

再放送は2月28日(火)午前0時10分から。
私も見てみるつもりですが、
再放送はしないほうがよさそうだと思います。

NHKは原発事故でも、総合がデマをばらまきつつ、
Eテレがまともなことを言うというヘンな局ではありますが、
既に開発されている医薬品を
別の病気や症状に使えないかという研究について
昨年夏の「サイエンスZERO」から、
来週中にでも記事にしたいと思います。



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