渡瀬恒彦さんが亡くなられました。
4月から「警視庁捜査一課9係」の新シリーズにご出演中だったものの
その撮影現場復帰は不可能となりました。
渡瀬さんのお兄さんは渡哲也さんで、
渡さんが芸能界入りしたのは渡瀬さんがきっかけだったとか。
当時、日活は「浅丘ルリ子出演100本記念」として、
浅岡さんの相手役を公募、
渡瀬さんと仲間たちが無断で応募したというもの。
渡瀬恒彦さんといえば、
元々、特別好きな役者さんではありませんでした。
度々ドラマや映画で拝見してはいたものの、
どちらかといえば、
そんなに印象に残るようなことはありませんでした。
私が彼のお芝居を好きになったのは、
2008年の連続テレビ小説「ちりとてちん」で、
かつては上方四天王と呼ばれていたけれども
落ちぶれて一人を除き弟子も去ってしまっているという
大御所落語家徒然亭草若の役でした。
「愛宕山」を得意としていて、
再起して再び高座に上がった姿は
大師匠の風格がありました。
もしも、叶うなら一席通して聞いてみたいと思う
華やかさをまとった噺家さんの姿でした。
ドラマではもう一度、
「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」をかけるんだと、
稽古に励む中、病で床につきます。
噺家の執念を見せる草若でしたが
地獄八景は1時間の大ネタ。
病人に務まるものではない中、
大ネタを分割して、
高座で地獄八景を披露したのが
彼の元に戻ってきた弟子たちでした。
そして、草若は亡くなります。
草若が再び高座に上がる件、地獄八景へ見せた執念、
そして、その死と、
今でも思い出せば目が潤みます。
渡哲也さんにより
当初から渡瀬さんがステージIVと診断され
余命1年の告知を受けていたことが明かされました。
それでも現場に戻ろうとした役者としての執念に
徒然亭草若として見せた噺家としての執念が重なります。
享年72。
ご冥福を心からお祈りいたします。
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