予定としましては、引き続き「フランスと韓国の大統領選挙と日本」をお書きしようかと思っていましたが、状況が変わりましたので、北朝鮮のミサイルについてお書きしておきます。
マッハ10で落下してくる新型ミサイル
昨朝、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは高高度のロフテッド軌道(ロフト弾道)だったと判明しました。北朝鮮は「新型ロケット」の「火星12型」発射実験に成功したと発表。日本の安全保障のさらなる脅威となりそうです。あの時、私は政府からの発表を見ていたんですが、飛行距離が800km程度なのに、飛行時間は30分間と聞いて、もしやと思いTwitterの軍事評論家や軍事マニアなどから、既に「ロフテッド軌道」という言葉が出ていました。
「火星12型」の高度は2,000kmを超えたと考えられます。国際宇宙ステーションの軌道で278~460km、かつてのスペースシャトルの衛星軌道としての高度が190~960kmでした。「火星12」はその最高高度の倍以上はるか高くに打ち上げられたことになります。
高高度に打ち上げられたミサイルは地球の引力により加速。マッハ15以上で大気圏へと突入、大気との摩擦で減速されるも、速度はマッハ10程度ではあるでしょう。気温15℃、1気圧の大気中の音速がマッハ1で、340m/s、1200㎞/h超。その10倍ですから、1秒で3.4kmも進むことになります。現状、迎撃は不可能です。
迎撃する"技術"はあるが
ただ、今年2月、日米共同開発の「SM-3ブロック2A」が迎撃試験に成功しています。これなら、到達高度が1,000km以上ですので、対応が可能かもしれません。
しかし、この時の迎撃イメージとしてはムスダンの高度1000km。ムスダンであれば、弾道頂点で迎撃できるはずですが、「火星12」の場合はどうでしょうか。北朝鮮は既に、こんな兵器を製造するだけの技術を持っているのです。
このミサイルはアメリカ本土への脅威にはなりません。ただ、韓国と日本にとっては脅威です。北朝鮮はアメリカが「決断」しないようなポイントを突いていることになります。これでも韓国は「同じ民族を攻撃するはずない」などと高をくくったままなのでしょうか。
在留邦人を救出できない自衛隊
日本でも「SM-3ブロック2A」を配備するにしても、短期的にどうにかなるものでもありません。先制攻撃は無理だとしても、開戦となった時に、敵の軍事拠点を攻撃できるぐらいの構えが必要でしょう。そして。韓国の在留邦人の問題もあります。現時点で韓国には3万8,000人の日本国民が暮らしています。最も多いのはソウルです。第二次朝鮮戦争ともなれば、軍事的に北が楽に狙える位置にある首都・ソウルが真っ先に標的となるでしょう。3万8,000人の日本国民は誰が救出するのでしょうか。自衛隊は行けません。それが「崇高な日本国憲法」の理念です。
自衛隊法の改正により、在外邦人の救出についての規定が新設されましたが、それも派遣先が「安全で秩序が保たれている」状態である必要があります。さらに相手国の同意、相手国関連当局との連携が必要になります。こんな規定では、救出を必要とする紛争地で助けられる国民が助けられるはずはありません。
生存権を守れない日本国憲法
北朝鮮にも拉致被害者を含む多数の日本人がいます。どこの国に自国民の生命を守ることに、自ら足枷をはめている国があるでしょうか。予算にしても、GDP1%などという意味のわからない足枷を自らはめて、もしも、ロフテッド軌道のミサイルに対応しようとすれば、新しい装備や施設のために、現時点で運用している何かを削る必要があります。それは自衛隊員の福利厚生や生活環境に関わる物資であることも珍しくありません。
この状況に安穏としていられる韓国にも信じられませんが、国家としての国民に対する義務を放棄し、憲法が保障する生存権を危機にさらしたまま、いっこうに安全保障を他人事のままにしている日本政府も信じられません。
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