太平洋の向こうでは、いよいよトランプ大統領が終わりの時を迎えようとしているのでしょうか。これまでも目を疑うような政策を行ってきた彼ですが、これまでとは異次元のFBI長官解任がありました。この問題では共和党内にも彼に味方する者はいないとされ、第2のウォーターゲート事件で、幕引きとなるのでしょうか。それとも、北朝鮮で軍事行動に出て、目をそらそうとするのでしょうか。
PB黒字化にどのような意味があるのか
前回はEUが求める財政均衡化により、失業率改善のための財政出動を行えないフランス政府と、ルサンチマンにより前政権が倒れ、新政権が誕生した韓国についてお書きしました。そこで、日本はどうなのかというのが今回のお話です。
安倍政権下で日銀は金融緩和が行われ、現在も継続しています。だからなのか、現政権は積極財政を行っているという印象を持っている人もいるのかもしれません。第二次安倍政権時にはたしかに積極財政路線を打ち出していましたが、現在は民主党政権時よりも、財政は緊縮状態にあります。現政権は不景気な中で、消費税増税を行い、政府の支出を削減しました。景気改善の芽を枯れさせただけでなく、次なる種も苗も植えずにいる訳です。
プライマリーバランスとは、財政健全化の指標である基礎的財政収支のことですが、現政権は2020年度の黒字化実現を掲げています。その期限についてはともかく、プライマリーバランスのために、緊縮財政が続けられている訳ですが、それを黒字化することにどのような意味があるのでしょうか。あまり認識されていないと思いますが、不景気は人の命を縮めます。自殺者も増えます。命よりも大切なのがプライマリーバランスなのでしょうか。
民間が投資しないなら公共事業を
政府側の人に限らず、何かしらの公共事業を行おうという話になると、財源はどうするのかという疑問を出してきます。消費税増税か、なんて話にもなるのですが、こんな状態でまた増税が行われれば、また、私たち国民はさらに支出を削減することになり、不景気は続くことになります。
不景気化においては民間の設備などへの投資意欲が低下します。日本はこんなことを20年間も続けていて、それでなんとかやって来ているように見えるので、なおさら、投資は行われません。日本は経済指標以上に設備投資が冷え込んでいるのです。
民間にその意欲が低いときには、政府が公共事業として、それを行えば良いのです。民主党政権では「コンクリートから人へ」が失敗に終わりましたが、何も投資は箱物のような土木建築の分野だけではありません。現在、なぜか憲法改正に高校授業料無償化が盛り込まれるのどうのと意味のわからない話が聞こえてきますが、高校授業料無償化も未来への投資ではあります。
ろくでもない経済政策でも最もマシな安倍政権
こういった公共事業の障害となるのが、プライマリーバランスです。私は何度説明されても、その大切さが理解できません。よく言われるのが、日本という国が信用を失い、国債の引き受け手がいなくなるというもの。高い利率の設定が必要となり、このパターンで、ギリシャは破綻、または破綻寸前にまで至りました。
しかし、日本は自国独自の通貨を、自国で発行している国です。現在、世界経済に不安要素があると、我先に買われるのが日本円です。そして、10年ものの国債利回りはマイナスのままです。もしも、既に日本が「国の借金」とやらで信用を失っているなら、なぜ、その国が発行している通貨が買われるのでしょうか。そして、国債が買われ続けるのは、ほかに投資先がないからなのではありませんか。だから、どんな金利でも安全な国債へと資本は流れ続けることになっています。
日本は直ちに積極財政へと転換すべきだと私は考える訳ですが、ここで現政権を批判しつつも、現時点で最もマシな経済政策を行っているのも事実だと考えています。民進党では、野田幹事長が超緊縮型の思考の持ち主ですし、党内からも「無駄な公共事業をなくせ」は聞こえてきても、積極財政を行うべきだという声は聞こえてきません。
与党内でも少しはいるとは思うものの、安倍政権が強すぎて、全く声が上がりません。小泉進次郎氏は昨年6月末に消費税増税延期の話が出たときに、「増税延期は無責任だ。若者は騙されない」と主張。全く希望を持てない政治家になってしまいました。
安倍政権を倒そうとするなら
民進党などが与党に勝とうと思えば、積極財政を訴えることです。フランスでも韓国でも、最重要視されたのは国民の暮らしであり、国内経済です。内需を高め景気を浮上させ、国民の所得を増やして、消費を活性化させること。そのために必要な公共事業を行うことを公約するべきです。もちろん、消費税についても、増税は論外で減税か廃止が妥当でしょう。
それと、別の話になりますが、フランスとの絡みで言えば、移民政策。以前から「移民政策は行わない」と何度も明言してきた安倍総理ですが、外国人労働者の数と基準は緩和し続けています。高度人材の受け入れもあります。それは、産業界からの要望でもあるのですが、現在、ヨーロッパを中心に移民政策でトラブルが起きている国も、産業界の求めに応じ、徐々に受け入れの数が増え、国民の一部となっていきました。
産業界が人手不足なのは、労働者が労働に見合う対価が得られないのも原因の一つで、なぜ、厳しくて辛い現場で働く人が低収入なのかを考える必要があるでしょう。そして、本来、高度人材は自国民の教育でまかなうべきで、大学など、教育機関からどんどん予算を引き上げている政府はそれに逆行しています。ろくに少子化対策も行わず、教育から予算を削り続けておいて、海外から人材を集めるのはあまりにも安易で無責任なのです。