#がんばれ塩崎厚労相 #負けるな塩崎厚労相
考えを変えました。私は個人個人、好きなように行動していればいいという考え方で、喫煙についても、大きな迷惑でない限り、各人が好きなようにすればいいと考えてきました。しかし、日々、医療に関するニュースや資料に触れていると、これは考えを改めるべきだと思うようになりました。
先週ぐらいから、Twitterの医療クラスタでは「#がんばれ塩崎厚労相」「#負けるな塩崎厚労相」というハッシュタグだらけになっていました。医療関係者には煙草の害を何とかしたいという共通の思いがあるのでしょう。
大西氏ががん治療中の人を養うのか仕事を斡旋するのか
受動喫煙を防止するために、飲食店を原則禁煙にすべきという厚労省案に、自民たばこ議連が反発。そして、ご存じのように、三原じゅん子参議院議員ががん患者の職場環境について訴えていた時に、大西英男衆議院議員が「働かなくていいんだよ!」とヤジを飛ばしました。
これが論外であることについての説明は不要だと思いますが、一応お書きしておきますと、だったら、がん患者の「働く権利」はどうなのか、また、働きたくなくても、ほとんどの人は働かねば生きていけません。全てのがん患者を大西議員が養ってくれるのかという話になります。
大西議員はこのヤジについて謝罪。しかし、撤回はしませんでした。その理由について、彼は「願わくば、そういう方にはもっと健康な受動喫煙のないところで働いていただいた方がその方のためになります」としています。ならば、憲法が保障する職業選択の自由はどうなるのか、大西議員が全てのがん患者にそういう職場を斡旋するのかという話になります。
「がんとともに生きる」時代
治るがんが増え、がんが必ずしも死の病でなくなっている今、多くの人ががん治療を続けながら、職場復帰を果たしています。私もそんな記事をいくつかお書きしましたが、その方面の調べ物をしている時に必ず出てくるのが「がんとともに生きる」という言葉です。
日本人の「2人に1人はがんになる」とも言われます。加齢とともに、がんを患う確率は高まりますので、この言葉に過剰な反応は無用ですが、誰もががんにかかる可能性があり、がんにかかった場合、当然その人は「がんとともに生きる」ことになるのです。
桂歌丸さんもCOPD
私は呼吸器疾患で入院したことがあります。私の周りは肺がん患者ばかりで、少ないながらもCOPDの人もいました。彼らはどこに行くのもボンベと一緒でしたが、当時の私はCOPDに対する知識が薄く、後に調べてみて、この病気の過酷さを知ることとなりました。
慢性閉塞性肺疾患は「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」の頭文字からCOPDと呼ばれます。先日、落語家の桂歌丸さんがボンベとともに、車椅子で移動されてらっしゃるのをテレビで拝見しましたが、やはり、彼はCOPDと診断されていました。喫煙歴は50年以上とのこと。藤田まことさんも生前、COPDと診断されていましたね。厚生労働省「平成26年患者調査の概況」によれば、26万1,000人がCOPDで治療中となっていますので、喫煙者にとっては他人事ではないはずです。
歌丸さんは在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy)、通称HOTを続けられていますが、生命のためには酸素供給源から鼻カニューレを通して、酸素供給を受けなくてはなりません。外出時には命綱のボンベとともに行動することになります。
どれだけ呼吸しても息苦しさが消えない苦しみ
煙草には有害な微粒子が多量に含まれていますが、それが肺に入り気管支を刺激、炎症が起きることで気道が狭くなります。そして、微粒子は肺胞壁を破壊、肺胞壁は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換が行われていますが、これが破壊されることで、その機能が充分に果たされなくなります。
ガス交換が上手く行われなくなると、より多くの空気を吸い込まなければなりません。COPD患者は呼吸に多量のエネルギーを必要としますが、ほぼ例外なく食欲が落ちることで、筋力は衰え、さらに吸う力、吐く力が弱まっていきます。そうなると、さらに酸素を取り込む力が弱まるという悪循環に陥ります。
強い息切れや呼吸困難の苦しみは、呼吸したくても充分な呼吸ができず、吸っても吸っても息苦しさが続くことから、「陸で溺れるような苦しみ」と喩えられます。またイギリスでは「死よりも悲惨」とも。中国の大気汚染が話題になっていた頃に、それがCOPDを引き起こすかもしれないという話を聞いたことがありますが、現状、日本ではほぼ喫煙が原因です。そして、肺がんとの合併率も高くなっています。2012年、世界の死因の6%はCOPDというのデータがありました。
乳幼児突然死症候群(SIDS)に関わっているというデータも
愛煙家の中には肺がんと喫煙の因果関係が証明されていないと主張する人もいますが、疫学的エビデンスは昔からあります。ただ、愛煙家が見たくないものを見ず、見たいものだけを見ているに過ぎません。そして、他人に、そして身近な人に迷惑をかけずに喫煙することは極めて困難です。受動喫煙が乳幼児突然死症候群(SIDS)に関わっているというデータもあります。
受動喫煙は間違いなく、健康被害の原因になりうるのです。さらにCOPD。その苦しみを体験しないためにも、万病の元となる煙草はやめるべきだと思います。ここでは、ほぼ肺だけに限ってお書きしましたが、動脈硬化の因子にも喫煙はあるのです。
大西議員は「私はもう50年、煙草を吸い続けています。そして我が家でも、自由にタバコを吸い続けておりまして、子供が4人、孫が6人、一切誰も不満は言いませんし、みんな元気に頑張っております」と言っていました。程度はわかりませんが、彼がご家族の肺がんリスクを上昇させたのは間違いありません。彼の喫煙歴は50年。非喫煙者よりも肺がんやCOPDのリスクがかなり高くなっているはず。彼が肺がんやCOPDになった時、ご自身の発言をどう顧みるのでしょうか。