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東京医科大 女性受験者減点問題 ~医療者の義務感や使命感につけむ労働環境~

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以前から噂になっていた女性受験者の不利益

東京医科大学では、受験者の文部科学省科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者の息子を不正入学させたという事件がありました。佐野容疑者はその見返りに私立大学支援事業への便宜を図ったとのこと。代わりに不合格になった受験生もいるはずで、さらにまかり間違って国試に通ってしまえば、その能力がない者が命を預かることになってしまいます。

次々と出てくる文科省の問題。こんなところが根拠もなく獣医学部新設を妨害していたのかとあらためて思いますが、その東京医科大では、入試で女性受験者の得点を一律に減点していたと読売新聞がスクープしました。これが事実ならば男性受験者の中に優遇を受けていた者もいたことになるでしょう。

実は東京医大に限らず、「よほど高得点を取らないと合格できない」など、女性受験者は不利だという噂はありました。おそらく、入学の可否については面接も重要視されているはずで、客観的評価が難しい点があり、実際のところ、どうなのかはわかりません。ただ、東京医大の場合、ほかの大学に比べて、大きく女性受験者の合格率が低いことからこのような疑惑が出てきたのでしょう。

 

附属病院などで働くことを期待される医学生

東京医科大を含め、女性受験者が不利を被っていたのかは確認できませんが、その動機はあります。東京医科大の問題では「女性は出産や子育てで離職するケースが多い」からと報じられています。これは附属病院などを抱える医大、医学部共通の問題ではないかと思います。

ほかの分野の学生とは違い、医大、医学部の学生たちは将来附属病院などで医師として働くことを期待されています。女性の場合、医師となり附属病院に勤務しても、期待できる勤続年数は男性医師より低く見積もられているということでしょう。

女性医師では「1/3は結婚する。1/3は結婚して離婚する。1/3は生涯独身」と言われることがあります。これが本当なのかは不明ですが、女性には厳しい職場であるのは間違いないでしょう。当直があり、オンコールの呼び出しに応じなければなりません。どの現場も人手不足です。

現実に結婚による女性医師の離職はあり、さらに女性には妊娠、出産で働けなくなる時期があります。それが離職のきっかけになることもあり、現場は産休や育休などを設けて対応するのですが、何しろ人手不足ですから、じゃあすぐその間代わりの医師をとはいかない場合も多いのではないかと思います。また、復帰したとしても、子どもは何かと手がかかります。
 

男性医師ならこき使えるはずという皮算用

「女性は出産や子育てで離職するケースが多い」から敬遠されがちだとすれば、これは逆に男性医師ならこき使いやすいということにもなります。今回は東京医科大の入試が問題視されていますが、根本的な問題は現場の人手不足にあります。この問題はただ受験で不正が行われたというだけのものではないのです。

問題解決には出産や子育てと仕事を両立できる職場が必要になります。今後、大学の合格者数の男女比は5:5に近づいていくかもしれませんが、前述のように大学の合否には面接など不透明な部分があるため、不利益を被る女性が減ったとしてもゼロにはならないはずです。そして、それは明るみには出ないでしょう。

以前、牛丼チェーンの「ワンオペ」が話題となりました。アルバイトとして過重労働だった人は、なぜ辞めなかったのかと問われ「自分が辞めるとほかの人がもっと大変になる」という義務感を語っていました。医師たちならこれに加え「自分がやらないと救われるはずの命が救えなくなる」という義務感、使命感が加わってくることでしょう。
 

義務感や使命感につけこんでいる現場はいずれ崩壊する

私がずっと言い続けているのは、労働者の義務感や使命感につけこんでいる現場に未来はないということです。特に産科、小児科、外科、麻酔科などの人手不足は著しく、わずかな仮眠だけで36時間働きづめなんてことも珍しくありません。こんな職場、いずれ崩壊してしまいます。その時、困るのは私たちです。

まずは人手不足の解消を。そして、全ての診療科や地域を同じ条件にするのではなく、特に人手不足の現場については待遇をワンランク上のものにしていかないと、人が集まることはないでしょう。これには国の施策が必要です。東京医科大の女性受験者減点問題は、こういうことが実現されることでようやく根本から解決されるのではないかと思います。性差別の問題で終わらせてはいけません。

最後に常々勉強になるとして重宝しているTwitterで知った研究論文をご紹介しておきます。医療政策学者で、医師の津川友介氏によるものです。

女性医師の方が、男性医師よりも患者の死亡率・再入院率が低いことが明らかに
https://healthpolicyhealthecon.com/2016/12/19/physician-gender-and-patient-mortality/

難しい話ではありませんので、この紹介文だけでもご一読下さい。

 


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