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今月は「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」 ~抗生物質が使えなくなる未来は間近か~

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また、仕事でAMRについて記事を作る機会があり、
こちらでもこの話題に触れておきます。

AMRとは「Antimicrobial Resistance」の略で薬剤耐性のこと。
主に抗生物質(抗菌薬)が効かなくなっている状態のことを指します。

人類が初めて手にした抗生物質はペニシリンでした。
やがてこのペニシリンが効かない肺炎球菌などが現れ、
新しい抗生物質が開発されていきます。

この薬剤耐性について報じられることはあまりないのですが、
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の時だけは

盛んにメディアが採り上げていましたので
ご記憶の方もいらっしゃるかと思います。
これはメチシリンという抗生物質が効かない黄色ブドウ球菌のことで、
新しい抗生物質・バンコマイシンの出現により、
対応可能となりました。
ただ、バンコマイシンに耐性を持つ腸球菌なども出てきて…

このように、耐性菌と新しい抗生物質の開発はいたちごっこで、
従来の抗生物質が効かない細菌の出現に、
新しい抗生物質により対応してきたのですが、
いつまでもこんなことは続けられません。
製薬業界における新薬開発のコストは高く、
さらに新しい抗生物質となると
もう既に出尽くしたという声もあります。
新しい抗生物質が開発されたとしても
限度があると考えるべきでしょう。

 


なぜ、耐性菌が生まれるのでしょうか?
ダーウィンの進化論を考えるとわかりやすいです。
ダーウィンは環境によりよく適応したものが子孫を残すという
自然淘汰説を唱えました。

たとえば、毛をびっしりと生やした動物種と
あまり生えていない動物種がいて、
その環境が寒冷化してしまうと、
生き残りやすいのは前者で、
以後は前者ばかりの環境になるでしょう。

私たちの体内の細菌でも同様で、
抗生物質の効き目は絶大ですから、
それを体内に入れますと、
多くの菌を死滅させることができるでしょう。
ただ、その中にその抗生物質が効かない耐性菌がいたとすれば、
あるいは発生したとすればどうでしょう?
それまでは多くの細菌に囲まれていましたが
もうそんなライバルたちはいません。
その人の体の中は耐性菌ばかりになってしまうでしょう。

大腸菌の場合、数十分もあれば分裂して増殖します。
その度に突然変異が起きる可能性があり
その中には一定の確率で耐性菌が発生する可能性があるでしょう。
この時点では無数の細菌の中に含まれるごくわずかな耐性菌に過ぎませんが、
ここに抗生物質が入ってくると
耐性菌にとってパラダイスを生み出してしまうことになってしまうのです。

漫画やドラマの「JIN-仁-」で描かれたように、
抗生物質は魔法の薬ともいえる人類の歴史を変えた物質です。
抗生物質を使わなければ、
命に関わるケースも多いでしょう。

このままでは、いずれ抗生物質が効かない未来が訪れることになってしまいます。
そんな未来では、抗生物質さえあれば治っていたはずの感染症が
命取りになってしまいます。

そんな未来にたどり着かないために、
抗生物質の乱用をやめなければなりません。

国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターの調査では、
2人に1人が風邪やインフルエンザに抗生物質が効くと思い込んでいて、
そんな疾患なのに
医師に対し抗生物質の処方を求める人が30%となっています。

風邪やインフルエンザのようなウイルス性の疾患に
抗生物質は効きません。
医師の方も、患者が求めるから処方する、
肺炎などに至らないように
予防的に処方するケースも多いようです。

後者の場合はケースバイケースで、
本当に必要な患者には処方すべきですが
そうではない処方も多いことでしょう。

抗生物質が使用されればされるほど、
耐性菌が増える可能性があります。
臨床の現場から聞こえてくる話では
「なんで薬をくれないんだ!?」と怒り出す患者もいるようで
そういった認識が耐性菌を増やしているといえるでしょう。

また、医師や薬剤師の指示を守らない服用やその中止も
耐性菌を増やすリスクを高めてしまいます。

脅しでもなんでもなく、
本当に抗生物質が効かない未来が訪れる可能性があります。
真に抗生物質が必要な人のために、
真に抗生物質が必要な時のために、
世界中が意識を改める必要があります。

 

 

 


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