江～姫たちの戦国～最終話「希望」その背景保科正之伝～徳川260年に欠かせなかった男～

最終回が終わりまして、
保科正之が出てきましたね。
今夜はそんなお話を。

なぜか江戸城に現れた佐治一成については、

江～姫たちの戦国～第14回「離縁せよ」その背景佐治一成伝～真の悲しみは晩年に？～
http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-10870592629.html

こちらをご覧下さい。

保科正之については、このブログでも少し触れたことがあるんですが、
あらためてお書きしてみましょう。

保科正之は徳川秀忠の四男。
幼名は幸松(ゆきまつ/こうまつ)。
母は大工の娘・静(志津)、
あるいは秀忠の乳母大姥局の侍女・北条家家臣の娘とされています。

江戸城には入れられないという事情から、
武田家家臣・穴山梅雪の正室、見性院に養育(出産も？)、
7歳の時、信濃国高遠藩主・保科正光の子として育てられることになります。

この秘密は秀忠側近数名のみ知るところであり、
もちろん、江には知られていません。

養父の跡を継いで高遠3万石の藩主となり、
この頃、兄で三代将軍となったばかりの徳川家光と対面、
また父・大御所の秀忠にも会っています。
この直前に、彼の母は亡くなっているとも。

家光はこの正之を重用し、出羽国山形藩20万石を与えます。
正之も兄の右腕として彼を支え、
陸奥国(岩代国)会津藩23万石初代藩主となります。
また、家光は徳川将軍家一門の「松平」姓と三葉葵紋を許します。
しかし、彼は養育してくれた保科家への恩のため、
生涯、保科姓を名乗り続けています。

家光48歳、彼に死期が迫ります。
家光は正之を枕元に呼び、

徳川宗家を頼む

これを受けて保科正之は会津家訓十五箇条を定め、

一、大君の儀、一心大切に忠勤に励み、他国の例をもって自ら処るべからず。若し二心を懐かば、すなわち、我が子孫にあらず　面々決して従うべからず。
一、武備はおこたるべからず。士を選ぶを本とすべし　上下の分を乱るべからず
一、兄をうやまい、弟を愛すべし
一、婦人女子の言　一切聞くべからず
一、主をおもんじ、法を畏るべし
一、家中は風儀をはげむべし
一、賄をおこない　媚を　もとむべからず
一、面々　依怙贔屓すべからず
一、士をえらぶには便辟便侫の者をとるべからず
一、賞罰は　家老のほか　これに参加すべからず
　　もし位を出ずる者あらば　これを厳格にすべし。
一、近侍の　もの　をして　人の善悪を　告げしむ　べからず。
一、政事は利害を持って道理をまぐるべからず。
　　評議は私意をはさみ人言を拒ぐべらず。
　　思うところを蔵せずもってこれを争うそうべし　
　　はなはだ相争うといえども我意をかいすべからず
一、法を犯すものは　ゆるす　べからず
一、社倉は民のためにこれをおく永利のためのものなり　
　　歳餓えればすなわち発出してこれを救うべしこれを他用すべからず
一、若し志をうしない　
　　遊楽をこのみ　馳奢をいたし　土民をしてその所を失わしめば
　　すなわち何の面目あって封印を戴き土地を領せんや必ず上表蟄居すべし
　　右１５件の旨　堅くこれを相守り以往もって同職の者に申し伝うべきものなり

　　　　　　　　　　　　　　　　　　寛文八年戊申四月十一日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(会津若松市観光公社)

会津藩は徳川宗家を守るための存在であり、
仮に時の主がそれに背くようなことがあれば、
家臣はそれに従うべきではないとしています。
余談ですが、これが幕末の戊辰戦争(会津戦争)の白虎隊の悲劇に関わってきます。

4代家綱の補佐役としても辣腕を振るう保科正之は、
玉川上水の開削も手がけ、これにより、
江戸の人たちは飲料水を得る事になります。

保科正之で特に有名なのはいわゆる振袖火事の後についてでしょうか。

これは現在の江戸城天守跡。
1657年に焼失し、以後、ずっとそのままです。
それは、大老・保科正之が再建を止めたからなんだそうです。
なぜ、天守を立て直させなかったのでしょうか？

この頃から幕府は財政危機に陥り始めており、
お金がかかるからなんですけれど、

天守は織田信長が岐阜城に築いたのが始まりであって、城の守りには必要ではない

として、厳冬に起きたこの大火に、
米倉を開くなど、焼け出された人の救済に当たっています。
また、上野広小路などの火除け地を設け、
芝と浅草に堀を、神田川を拡張するなどして、
江戸の町の防火性を高める工夫をしています。

享年は63。
跡継ぎの正経も保科姓を貫き、
その後の正容になって、ようやく松平姓となります。