東京都における新型コロナウイルスの新規感染者数ですが、
連日、三桁が続いております。
連日の大きな数字により、多くの都民、
国民の心理にインパクトを与えたことでしょう。
そのことにより、行動が慎重になるかもしれません。
その効果が現れるとしても、
検査態勢、検査数、検査対象が変わらなければ、
ここ2週間弱、同様の数字が続くと考えるべきでしょう。
大阪府なども増加傾向にありますが、
同じ理由でここ2週間弱、同様の数字が続くと考えるべきかもしれません。
ただ、先の2回の記事にお書きしたように、
これら東京都の数字を以て
緊急事態宣言前に戻ったとはいえません。
戻りつつあるともいえないでしょう。
当時とは検査態勢、検査数、検査対象の全てが違います。
あの頃の数字と比べること自体、意味がないんです。
昨日の朝日放送「正義のミカタ」にて、
元厚生労働省医系技官で、
米国CDC多施設研究プロジェクトコーディネイターも経験された
木村盛世医師は
本当の感染者数を明らかにすることが重要
としました。
全体像がつかめない中で数字に踊らされてはいけない
検査数を増やせば増えるわけで、減らせば減るわけなので
それに一喜一憂してはいけない
と解説。木村先生は無作為抽出による検査で、
どの程度、感染者がいるのかを知ることが重要だとしました。
それにより、今、感染が拡大しているのか、
感染が収まってきているのかを知る必要があります。
今、再び大きな数字を見て、
危機感を覚えている人が多いと思いますが、
これが、東京都全体で感染者が増えているとはいえないのです。
原理的には感染者数が減っている可能性だってあります。
もしも2か月前からこれまでに、同様の検査が行われており、
その数字があれば比較できますが、それがないので意味がないんです。
問題なのは、東京都がこの数字を前面に出して、
何をしたいのかよくわからないことなんです。
「夜の接客業」ということで、
このひとつの要素を以て検査対象にするような検査で
どうしたいのかもよくわかりません。
たくさん検査をして、「で?」なんです。
大きな数字を出してきたことで、
「東京アラート」を再び出してくるかと思えば、
それもありません。
国も同様で、どうしたいのかがよくわかりません。
現状、重症者が増えた、ICUが逼迫している、
人工呼吸器が足りなくなりそうという話は聞こえてきません。
そのほか、増加速度が緊急事態宣言前の3月の頃よりも緩やかで、
退院基準も変わって病床が占有される期間が短くなり、
今の感染者は低リスクの若年層に多い。
だったら、現在の方針を続けつつ、
経済優先で社会活動を続けましょう、
というのもひとつの考えです。
ただ、若年層を感染させたウイルスは
いずれ高齢者などの高リスク群にたどり着きます。
その対応も必要となります。
また、熊本などで起きているように水害、地震などの際、
避難と感染予防という難しい課題もあります。
今朝のNHK「日曜討論」で、
政策研究大学院大学特別教授・大田弘子氏の
「安心、安全のために検査を増やせ」との主張に、
諮問委員会会長の尾身茂先生は、
・症状がある人
・症状はないが、事前リスクが高い人たち
・症状もなく、事前リスクが低い人たち
の3グループに分けて考えるべきだとご発言。
至言であります。
既に何らかの症状が出ていて感染が疑われる人に対する検査と、
無症状ながらクラスターの場所、感染者と関わりがある人に対する検査、
感染者と接触したことが確認されていない無症状の人に対する検査では
検査の意味が全く異なります。
今後もリスクはゼロにはなりません。
検査を行うにしても、
どういう目的で、誰に検査を行い、
その検査で得られた結果を
どう活かしていくかが重要です。
戦略もなしに検査数を増やしても意味がありません。
誰に何の目的で検査をするのか、
そして、その結果を社会にどう活かしていくのか、
国や自治体に求められるのはそのプランではないかと思います。