竹内結子さんが亡くなりました。
現時点では自殺の可能性が高いとされています。
彼女は今年1月に男子を出産されていて、
産科医や助産師なら、産後うつも考えるかと思います。
実際に彼女に何があったのかは知る由もありませんが、
こちらでも前回、産後うつについてお書きしていて、
そこでご紹介している記事の内容だけでも、
認識が広まればと思います。
加えて「マタニティーブルー」という言葉の認識も変わればと思います。
日本で「マタニティー」といいますと、妊婦のイメージですが、
英語の「maternity」には「母性」「母らしさ」といった名詞や
「妊産婦の」といった形容詞として意味があります。
出産後も「マタニティー」ですので、
「マタニティーブルー」は周産期の女性全般が対象です。
きっかけもなく悲しくなったり、不安になったり、
身体的には涙が出たり、不眠になったりします。
ただ「マタニティーブルー」は病気ではなく、
一般的に長くても半月からひと月で脱け出すことができます。
これが長期間続く場合にはうつかもしれず、こちらは疾患です。
受診を考える必要があり、自治体には相談窓口を設けているところもあります。
産後うつは自身の問題だけでなく、赤ちゃんを含む家族の問題です。
妊娠から出産、授乳が行われる周産期は
ホルモンの変化が激しく、社会的環境の変化にさらされます。
単なる「心の問題」では片付かず、
心身に変調が現れても何の不思議もありません。
ここからイップスについてお書きします。
本当はこちらをお書きするつもりでしたが、
単なる「心の問題」ではないという点で共通していますので、
こちらについてもお書きしておきます。
イップスは特にスポーツの分野で使われることが多く、
それまでできていたはずのことが
突然できなくなってしまうことを言います。
元々はゴルフで言われていたことで、
グリーン上のパッティングに支障を来した状態のことでした。
今では野球、ダーツなど様々な分野で使用されています。
2日のEテレ「又吉直樹のヘウレーカ!」では、
「大舞台で実力を発揮できますか?」と題してプレッシャーを特集。
東京大学大学院情報学環・工藤和俊准教授が解説。
漫才のゆにばーすのお二人もご出演でした。
ゆにばーすの川瀬名人さんは完璧主義者ですが、あがり症で、
大きな舞台で稽古どおりの漫才が困っているというお話でした。
聞けば、舞台に上がるのに、
60回もの練習を繰り返しているといいますが…
工藤先生によれば、
イップスは同じ動きを何度も何度も繰り返すことで起きるといいます。
練習の過度の繰り返しが原因であると。
従来は心の問題として
イップスは強迫神経症や不安神経症と関連があると考えられてきました。
今は考え方が変わってきていて
先生は「脳の可塑的な変化」が原因だとしています。
イップスに陥った人は「メンタルが弱いからだ」などと言われてきましたが、
むしろ、上手くできなかったという事実によって、
その人が受けるストレスにより心が弱くなる、
心に問題を抱えるようになると解説されていました。
つまり、心に問題があるから上手くできなくなるのではなく、
上手くいかないから心に問題を抱えてしまうというのです。
かつての考え方とは因果が逆転しています。
また、過度な練習の繰り返しは「運動の自動化」を招きます。
自動化されることは日常生活における運動でも必要ですが、
いざ、意識的にその運動を再現しようとすると、
上手くできなくなってしまっている可能性があります。
自転車の運転は、いちいち右足を踏み込んで、
左足を乗せたペダルが上がってきたら左足を踏み込んで…
バランスが右に傾いてきたので左に重心を移動させて…
などといちいち考えて行うものではありませんが、
これをいちいち意識的に行おうとすれば、
とても難しい運動となりそうです。
先生は練習する場合でも「多様化」が必要だとしました。
「稽古は嘘つかない」「練習は嘘つかない」などといいますが、
それもやり方次第で、やり方によっては害になる可能性もあります。
パッティングの練習なら、
同じ位置から同じ距離を打ち続けるりのではなく、違う場所から、
あるいは途中でドライバーの練習をして、
また、パッティングの練習に戻るといった工夫が必要であるようです。
今、阪神タイガースの藤浪投手がイップスなのではないかといわれています。
実際のところ、どうなのかはわかりませんが、
昨夜見た投球は、本塁打を浴びたものの悪くなかったように思います。
イチローさんも高校時代にイップスを経験していて、投手から野手に転向。
ゴルフ・宮里藍さんの引退もパッティングにおけるイップスが原因の一つだそうです。
そのほか、タイガー・ウッズなどもイップスの治療を受けています。
番組から少し外れますと、イップスと似た概念に「ジストニア」というものがあります。
これは中枢神経系の疾患で、自身の意識とは別に部の筋肉が硬直し、
上手く制御できなくなってしまいます。
その中には職業性ジストニアというものもあります。
理美容師が上手く鋏を使えなくなったり、
文筆業の人が文字を書くときに震えてしまったりする症状があります。
イップスに陥っている人の中にも、
ジストニアである場合もあるかと思います。
「ヘウレーカ!」を見てから、調べてみますと、
考えを改める必要があると思いました。
もしも、思い当たる方がいらっしゃいましたら、
根本にあるのが「心の問題」ではない可能性についても
考えておく必要があるのかもしれません。