現在、新型コロナウイルスのうち、
世界で最も警戒されている変異株はインド発のB.1617ですが、
英国の高齢者施設でB.1617によるクラスターが発生したものの、
重症者や死者は出ておらず、
この施設では全入所者にアストラゼネカ製ワクチンが接種されていたとのことです。
他社製ワクチンの情報にも期待したいです。
さて、東京オリンピック出場が決定している池江璃花子さんに対し、
出場辞退を求める声が多数届いているとのことで、
福一事故後同様、人間の醜い部分を見せ続けられています。
一選手にそんなことを求めてどうするのか、
彼女が辞退しようがしまいが、開催に影響を与えるとは思えません。
それに、東京オリンピック開催が本当に不可能なのか、
しっかりと考えているのでしょうか。
前提として、私は長年頑張って、
さらに1年間余計に踏ん張り続けてきた選手たちのために、
できるものなら開催してもらいたいと思っています。
そして、開催か中止かを考えるのであれば、
軽々しく結論を出すべきではないと思っています。
それが選手たちへの礼儀だと考えます。
まず、現時点で海外からの観客は来られないことがわかっています。
次に国内の観客ですが、無観客という方法も残されています。
有観客の場合、客席を満員にすることはできないはずで、
ということは、人数制限をすることになりますが、
現実には、既に売られているチケットのうち、
どれを当選にして、どれを落選にするのか、
それを決めることは極めて困難でしょう。
開催するのであれば、無観客になると予想します。
問題は選手と関係者ですが、既に米NBAやテニスの全米オープン、
ハンガリーで競泳国際リーグ、エジプトでのハンドボール世界選手権、
カタールでの柔道マスターズ大会などの国際大会が行われています。
日本でも昨年11月に体操国際大会が開催されました。
いずれもオリンピック、パラリンピックと比べて規模は小さく期間も短いですが、
選手や関係者の外部との接触を遮断する「バブル」方式を採用し、
成功させています。
オリンピックにおいても、関係者を最小限にして、
うろうろ出歩かないようにすれば、
リスクは最小化できるかと思います。
問題があるとすれば、医療スタッフではないかと思います。
新型コロナウイルスの問題が起きる前に、
暑い盛りの中の開催で熱中症患者が多数出ることが予想されていて、
看護師だけでボランティア500人を募集するとしていました。
当時から現場の「そんなもん集まるか!」「ギャラ出せ!」
「事故があったら誰の責任? ノーギャラで責任負わされるの?」
という声を多数聞いていたんですが、
観客への対応がなくなるとしても、
新型コロナウイルス感染症などの重症者対応や、
ワクチン接種に人がとられている中ですから、
そんな人員がいるのか、ということになります。
選手村村長の川淵三郎さんは
コロナに従事しているお医者さんを横取りしようとしているわけじゃないでしょう
と語っています。
日本の医療では、診療科や急性期、慢性期、重症度によって、
医療機関が変わります。
これは平時であれば長所なのですが、
現在のように、感染症の患者が急増しますと、
特定の医療関係者や医療機関で医療が逼迫することになります。
コロナ禍では発熱外来やER、ICUあたりがたいへん厳しく、
一般外来が少なくなっています。
整形外科医など、専門外医師が
コロナ対応に駆り出されるようなケースもありますが、
そうではない医師を呼べるかどうかでしょうか。
ただ、普段からギリギリの人員でまわしているのも事実ですが…
看護師については、いわゆる潜在看護師、
看護師の資格を持ちながらも現場から離れている人たちを呼べるかどうか、
いずれにしても、無償で人数を揃えるのは困難かと思います。
また、ワクチン接種でもこういった人材が必要ですので、
それが可能かどうか。
オリンピックの議論とは別に、
ワクチンの普及を急ぐのであれば、
医師や看護師だけでなく、他職種も活用すべきとは思います。
既に歯科医師らも接種可能になりますが、
海外では、研修を受けた非医療職、
つまりその辺の一般人も接種に当たっています。
そこまで行かなくても、コメディカルの活用も考えるべきかと思います。
オリンピックについての要素といえば、
あとは真夏ということでしょうか。
夏は感染者数が少なくなるという季節性への期待です。
ただ、これも期待ですし、
変異株における季節性についての研究を、まだ見たことがありません。
かなり難しい問題です。
私が知る範囲の医師らの意見では中止が優勢でしょうか。
ただ、軽々に中止といえるほど単純ではないでしょう。
池江璃花子さんに無礼を働いた連中は論外ですが、
彼らを煽り立てたメディアの存在も考える必要があります。
東京オリンピックを開催できるのかどうかについて、
簡単に「開催できるわけがない!」と言いきれるほど、
単純ではないと思うのです。
川瀬巴水「山王の雨後」