天橋立は京都府宮津市。
安芸の宮島、陸奥の松島とともに
日本三景に数えられる天橋立は、
このように、宮津湾の内海を南北に隔てる砂州が形作る奇観が有名です。
ここでこの景色を楽しむ方法の定番が
股のぞき
です。
後ろ向きに海に背を向けて立ち、
脚を広げて、股の間からこの砂州を見るというものです。
なぜ、こんな見方をするのでしょうか?
股のぞきをすることで、天地が逆さまに見え、
砂州が天空にかかる橋のように見えるとされています。
画像を180度回転させてみましたが、
いかがでしょうか?
山々が地面として、海が空のように見えるとされます。
見え方は人それぞれかもしれませんが、
逆さまの画像のほうは、
奥行がわからなくなっているように見えませんか?
なぜ、股のぞきだと、
奥行が分かりづらくなるのでしょうか?
実験で確かめます。
このような3つの図形のパネルを用意、
この3枚のパネルは
前から三角、丸、四角の順番で、
奥行をつけて設置しています。
これを20m離れた位置から15秒間見てもらい、
どれが一番奥に置かれているかを答えてもらいます。
結果、さすがに簡単だったため、
10人中10人全員が「四角」と答え、正解しました。
次は別の10人に股のぞきで見てもらいます。
すると、こちらでは正解者はたったの1人だけでした。
やはり、股のぞきでは奥行がわからなくなってしまうようです。
女子美術大学・視覚心理専門の坂田勝亮教授によりますと、
私たちは普段視野の上にある、
下にあるという位置関係で奥行を見ています。
たとえば、下にある地面は近くに、
この場合の森は遠くに見える訳ですね。
これが股のぞきをすることによって、
上下が逆転してしまって、
下にあるものほど遠く、
上にあるものほど近いという状況が生じてしまいます。
そうすると、私たちの脳がもともと想定しているような
見え方と違う見え方になっていますので、
奥行き感がわからなくなったという事が
起きているんだろうと、
丸、四角、三角の3つの奥行き関係がよくわからなくなって、
平面的に見えて間違えてしまう
ということが起きたと思われます。
いかがでしょうか?
次。
妙に人気の京都弁。
特に女性の訛りの中で、
男性に好評価なのが京都弁と博多弁ではないかと思います。
東京で京都弁の魅力を訊いてみますと、
・柔らかくてゆっくりという感じ
・ゆったりおっとりな感じだと思います
というような答えが。
京都の人はどれぐらいゆっくりと喋っているのでしょうか?
早口なイメージの大阪弁と比較してみます。
30秒間自由に話してもらい、
その文字数を数えます。
まずは大阪。
彼女の場合は178文字でした。
次に京都です。
大阪の時と同じぐらいの年代の女性を捜します。
結果、174文字。
大阪とあまり変わらないようです。
たまたまかもしれませんので、
10人ずつの平均で比較します。
大阪は184文字だったのに対し、
京都は181文字とほとんど変わりません。
どうやら、京都弁はゆっくりという訳ではないようです。
それなのに、ゆっくりと喋っているように
聞こえるのはなぜでしょうか?
東京大学・総合文化研究所言語情報科学専攻、
広瀬友紀准教授のお話です。
京都弁というのは、同じ内容を伝えるにしても、
大阪弁に比べて文字数が増えてしまうんです。
京都弁では、同じ事を話すにしても、
多くの言葉が必要だというんです。
そこで、ニュース原稿を用意、
これをアナウンサーさんに共通語で読んでもらいました。
この原稿は487文字。
これを大阪と京都で、それぞれの方言に直して文字数を比較します。
大阪弁の場合は466文字となりました。
共通語よりも21文字少なくなりました。
そして京都弁では505文字と、
標準語よりも18文字増えています。
そして、大阪弁との比較では39文字差です。
これも10人で行ったところ、
大阪弁の平均は470文字だったのに対し、
京都弁では、499文字と、
29文字の差がつきました。
広瀬友紀准教授は、
元の原稿になかった遠回しな表現や、
敬語の表現がよく見られます。
全体的に長くなっているのは、
そのためだと思います。
とのこと。
先ほどの原稿を見てみますと、
標準語では
ジョギングで汗を流しました
を、
大阪弁では、
ジョギングで汗を流したんや
と変わっているものの、文字数は変わりません。
しかし、京都弁では、
ジョギングで汗を流してはりました
と、丁寧な表現になっているため、
文字の数が増えることに。
そして、
スポーツ婚活試してみてください
という標準語では、
スポーツ婚活試してみーや
とくだけた表現になって、
文字数が減っているの対し、
スポーツ婚活試してみはったらええんとちゃうかな
と、婉曲的な表現になり、文字数が増えています。
大阪人の私が感じるのは、
京都人気質として、物事を間接的に、婉曲的に、
曖昧に表現する傾向があるように思います。
京都の長い歴史の中で、近隣とのあからさまな対立を
避ける知恵として、このような言葉遣いが根付いたのではないかと
考えられる、とのことでした。
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所さんの目がテン!「京都の科学」その2 ~天橋立の股のぞきで何が見える? 京都弁はゆっくり?~
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