タイムスクープハンター シーズン5「賄賂 談合 江戸の闇を暴け！」 その1

えー、アブソリュートポジション、
N635-W925-E344-S209。
ポジション確認。
えー、アブソリュートタイム、
B5133025年28時56分31秒。
西暦変換しますと、
えー、1659年11月4日8時16分12秒。
無事、タイムワープ成功しました。
コードナンバー136511、
これから記録を開始します


1659年の江戸。
町の一角でを男たちが高札見ている。
町触れだ。
それはとある公共工事の入札の応募についての告知だった。



今回、私、沢嶋雄一は江戸時代初期から採用されていた
入札制度の実態を密着取材する。

えー、この時代の人々にとって、
私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触する際には細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありうるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっており、お見せする事はできませんが、
今回も無事密着取材する事に成功しました。


高札を見つめている男たちは皆、建築業者だ。
その中に浮かない表情を浮かべている男、
彼は橋大工棟梁の源三郎。



新たに大橋を架け直すと書いてありやす。
このお触れにある作事の内容を目論見して、
入り札が行われるんでございやす

彼も入札するのだろうか？

今では、あっしらは入り札の土俵に上がることさえ出来ねえ。
作事奉行が変わってから、
何もかもが変なんでございやす。
実はよからぬ噂を耳にしやしてね。
…誰が落札をするか、予め持ち回りで決めていやして、
落札をした奴が儲けを仲間に分配しているようなんですよ。
真面目にやってるあっしらみてえな大工に仕事が回ってこねえ。
自分の利益を上げることしか頭にねえ輩が横行してる

入札制度は複数の業者が競い合い、
見積金額の一番安い業者が工事を落札する方式である。
だが、裏では既に落札者が決められていて、
いわゆる談合が横行しているという。


取材3日目。
私は所管の役人に接触し、
匿名を条件に取材する事が出来た。



作事において、商人たちは付け届けと称して、
手土産を持ってくるのじゃ。
酒が欲しい方には酒を持参するのだ。
酒樽の中にはびっしりと小判が敷き詰められておる。
よって、そこでお奉行様から作事の費用を聞き出すのじゃ。
商人たちは作事の費用の目論見に近い値で入り札をする。
そうすれば商人たちも儲かるであろう。
それだけではない。
商人たちは回り持ちをして儲けを得ておる。
昨晩も拙者の目の前で袖の下を通しておった

私は前日にタイムワープすることにした。
接触した役人に作事奉行の屋敷に隠しカメラを設置してもらう。



右にいるのは荻原半兵衛。
架け替え工事の担当役人だ。
そして、左にいるのが工事請負の伊勢屋。
伊勢屋が風呂敷包みをほどいている。

どうぞ、お召し上がり下さいませ

差し出されたそれを受け取る荻原。
中身は饅頭のようだ。



だが、その下には小判がびっしりと敷き詰められていた。

饅頭に喜んでいる荻原に、伊勢屋は続けた。

本日は上方のほうより、
珍しいものを手に入れてまいりました。
人形なのでございますが…

京人形だというが、その大きな箱の中身は…



なかなかよく出来た人形でございます。
いかがでございましょうか？

それは人形ではなかった。
生身の女性である。

それで、あの…

また、伊勢屋が口を開いた。

わかっておる。二千三百両じゃ
それが此度の作事の目論見だ

予算枠のギリギリの金額を書いて落札できれば、
大きな利益を得ることが出来る。
それを可能にするためには、
予算の上限を調べておくことと、
同業者との打ち合わせが必要だ。
つまり、談合である。

ここで本部のタイムナビゲーター、
古橋ミナミから連絡が入った。



彼女によると、どうやら誰でも入札に参加出来るものでもないらしい。
「たてもの」と称する賄賂を役人に贈っておかなければ、
参加すら出来ず、さらに落札して工事が完了した時には、
「礼物」として100～1000両の金銭を渡していたようだ。


私はまた源三郎を取材していた。
彼は入り札に参加するために、
作事奉行の役宅へ出かけるつもりらしい。
彼は入札に参加するにしても、
まずは「御仕様帳」を写し取らなくてはならないと言っている。
そのためには口利きをしてもらわなくてはならず、
つまりは作事奉行への付け届けが必要だという。
しかし、尋ねてみれば彼はそんな大金は工面できないという。
では、どうやって入札権を得るつもりなのだろうか？
彼は答えた。

既に手は打ってあります



奉行の役宅の門前に着いた。
役人が出てくる。
源三郎は御仕様帳を見たいという用向きを伝えるが、
役人は取り合ってくれない。
門前払いになるところを彼は、

荻原様のお口に合うか分かりませんが…

そう言って風呂敷包みをそれとなく示した。
どうやら、源三郎は中へ入ることが出来るようだ。
私も彼に続くことにする。

なんだ、お主は？

役人にぶつかってしまった。

…珍奇な身なり。何者だお主は！？




よし、入れ

私も中へ入ることが出来た。

賄賂をちらつかせ、部屋へと通された源三郎。
しかし、彼は大金など持ってはいない。
その時、廊下から足音が近づき障子が開いた。



彼女は伊勢屋が京人形として贈った遊女のようだ。

お富さん、すまない

どうやら、源三郎は彼女と知り合いらしい。
彼は彼女から伊勢屋が菓子箱の中に、
200両ほどの小判を入れていたことを聞く。
それだけを聞くと、

くれぐれも無茶だけはしないでくれよ

と、何かの念を押している。

彼女の両親は橋崩れで亡くなっており、
その橋は手抜き工事で架けられていたため、
その犠牲となっていた。
二度と同じ事故が起きて欲しくない。
だから、源三郎に協力しているのだという。
しかし、これからどうするつもりなのだろうか？

これから金を工面しやす

源三郎はただひと言、そう言うだけだった。

すると、伊勢屋が荻原に饅頭箱を渡していた
あの部屋の隠しカメラに反応が。



お富だ。
彼女が戸棚から取り出していたのは饅頭の箱。
源三郎が言う金の工面とは、
伊勢屋が渡した賄賂を盗み出すという作戦だった。
およそ200両を巾着に詰めるお富。
箱を元に戻し、部屋を出ようとしたその時、
襖の向こうから人の気配が。
慌てて物陰に隠れる彼女。
入ってきたのは荻原だった。
拙いことに戸棚に近づいていく。

荻原様、荻原様

彼の部下が呼んでいる。
部下が部屋に入ってきた。
どうやら、源三郎の訪問を伝えに来たらしい。
その隙にお富は部屋を出る。
源三郎の元へ戻ってくるお富は、
200両の入った巾着を渡した。
急ぎ、持参の菓子箱に小判を詰めなくてはならない。

荻原は部下に源三郎を「帰せ」と言っているようだ。
しかし、部下は彼が賄を持参していると告げ、
荻原も源三郎に会うことに決めたらしい。
そして、この部屋へ近づいてくる。
源三郎はまだ小判を箱に並べている…

彼が風呂敷を結んだ時、荻原が入ってきた。

お忙しいところ、お目通りを許していただき、
まことにありがとうございます。
あっしは長嶋町で大工棟梁をやっております
源三郎と申します。以後、お見知り置きを。
此度の入り札、是非とも請け負わせていただきたいと存じまして、
我々は腕のいい職人を抱えておりまして…

緊張で早口でまくし立てる源三郎を制止し、
「本題」に入ろうとする荻原。

荻原様のお気持ちに添えますかわかりませんが、
甘い物がお好きだとお伺いしたので、
外郎餅をお持ちしました

包んだばかりの風呂敷をほどき、
菓子箱を荻原に差し出す源三郎。



それを検め、自分の小判だとも知らず
ほくそ笑む荻原。

おい、千次郎。
此度の大橋の仕様帳を持って参れ

彼の前には策を講じて望んだ仕様帳が…




…続きます。

なお、この後、27時10分～27時40分に再放送もあります。