また自然科学のお話です。
自然科学では時に、
わかりきっている事
でも、実験、観察を経て、
それを証明しないことはに厳密には真実だと
認められません。
たとえば、数年前に「イヌも夢を見る」ということが
ほぼ実証されたという論文が発表されましたが、
そんなことはイヌと暮らしていれば、
誰だって寝言や痙攣などでわかるものなんですが、
まあ、自然科学というものはそういうものです。
今回ご紹介する
わかりきっている事
は、
赤ちゃんを抱いて歩けば赤ちゃんは落ち着く
というものです。
わかりきっていますよね。
赤ちゃんがぐずったり泣き始めると、
本能なのか学習からなのか、
お母さんは抱き上げて軽くゆらしながら、
歩き始めるものです。
動物でも同じで、ネコが子供を運んでいて、
その間、子猫はじっとしています。
下の動画はかなり大きくなった子猫ですが、
母ネコが首の後ろを噛み、
歩き始めると動かなくなります。
それだけではなくて、
体を丸くして運ばれやすい姿勢を取ります。
これは多くのネコ科やネズミ、リスなどでも見られます。
これを
輸送反応
と呼ぶらしく、
そういう現象が起こることは知られてはいたものの、
その反応の意味と、
どういうメカニズムなのかは研究されていなかったようです。
先々月の発表は理化学研究所によるものでした。
それは人間の赤ちゃんとその母親12組と、
それとは別にマウスでの実験です。
お母さんには赤ちゃんを抱いている状態で30秒ごとに
「座る」「立って歩く」という動作を繰り返してもらい、
座っている時と歩いている時の赤ちゃんの状態を比較します。
まず泣く量が座っている時に比べて、
歩いている時には約1/10に減少しました。
次に、脚をばたつかせるなどの運動量が約1/5に。
そして、心拍数は歩き始めてから3秒で急激に低下しました。
次はマウスです。
ネズミも上のネコと同じように、
母親は子ネズミの首の後ろを噛んで運びますので、
それを真似て、研究者が指で首の後ろをつまみます。
すると、鳴き止み、自発的な動きと心拍数が低下、
体を丸めました。
どうやら、体を丸めるためには、
小脳皮質の反応が必要らしく、
また「おとなしくなる」ためには、
首の後ろの皮膚の触覚、
体が持ち上げられ運ばれているという感覚の両方が
重要であることが判明しました。
赤ちゃんの輸送反応は、
運ばれている時に運ばれやすくするための反応でした。
それは母親にとって都合のいい状態である訳ですが、
今回の実験では、抱いて歩いている時には落ち着いていたのに、
立ち止まったとたんに
また泣き出すようなことが起こる理由もわかります。
以上、
わかりきっている事
ことの素晴らしい研究のお話でした。
抱っこして歩くと赤ちゃんがリラックスする仕組みの一端を解明
↧
抱っこして歩くと赤ちゃんが落ち着く理由とは?
↧