http://ameblo.jp/thinkmacgyver/entry-11613246452.html
こちらからの続きです。
目撃者の話から似顔絵を描いていく似顔絵捜査官ですが、
相手は一般人ですので、
なかなかうまくいかないこともあります。
坂本啓一さんがある事件で20代女性目撃者の証言を聞いていると…
犯人は男でしたか? 女でしたか?
「男の人でした。切れ長の目で髪の毛は長くて…、
なんだか、爽やかな印象でした」
よく憶えていますね。そんなに格好よかったんですか?
「はい」
たしかに多くの情報が得られたものの、
それを絵に描けるかどうかには疑問が残ります。
この事件で同じ犯人を目撃したという20代男性は…
「ちょっと古い感じの髪型をしていて、
年齢は30代ぐらいかと。」
お洒落な感じでしたか?
「いえ、そうは思いません。ボーッとして、冴えない奴でした」
同一人物についての説明とは思えない内容です。
どうやら、先の女性目撃者にとって、
好みのタイプだったらしく、
そういった場合、人は相手を美化してしまうことがあります。
特に結婚詐欺など恋愛が絡んだ事件では、
目撃者が犯人を美化する傾向があり、
事件によって証言の見極めが重要となります。
これでは真実に近い証言は得られません。
そういう時に行われるのが
代替法
と呼ばれているもの。
坂本さんは犯人と年格好が近いと考えられる
一人の警察官を呼び寄せました。
そして、女性証言者への質問を再開します。
その男前さんは、彼と比べて顔の輪郭はどうでしたか?
「犯人のほうが四角かったかな」
目はどっちが細かったですか?
「犯人のほうが細かったと思います…、犯人は一重でした」
比較対象の人物を用意することで、
より正確な記憶を導き出す工夫も行われています。
では、目撃者が子供の場合はどうでしょうか?
坂本さんは「有り難い」と語ります。
大人の場合、一定以上の時間を
相手の顔を注視し続けることには抵抗を感じ、
視線を逸らすものですが、
子供の場合は長時間、顔を見続けていることがあります。
よって、子供の目撃者は
有力な証言が得られやすいということになります。
目撃者の記憶の中に必ず犯人はいる
それが坂本啓一先生の信念。
そのために彼は似顔絵で犯罪捜査を行おうとしました。
しかし、警察は初めから彼の意見を取り入れた訳ではありません。
彼が似顔絵の有用性について、
警察組織に認めさせたある事件、
最後にそんなお話を。
1984年、銀行に包丁を持って押し入った銀行強盗事件が発生、
犯人は3000万円を奪って逃走しました。
坂本さんは鑑識課として現場に急行、
しかし、指紋も遺留品も見つかりませんでした。
ただ、犯人は変装をしていなかった…
現場には何も残されていない、
それならと彼は考え、こう言いました。
似顔絵、僕、描きましょうか?
それを聞いた刑事は
「似顔絵?」と怪訝そうな顔を向けてよこしました。
他に証拠がないならやってみるべきです
「…好きにしろ」
坂本さんの似顔絵が期待された訳ではありませんでした。
似顔絵の捜査実績が少なく、
まだ重要性が認められていなかったこの時代、
その手法を馬鹿にする捜査員も数多くいました。
しかし、彼は似顔絵が有効な捜査方法だと、
信じて疑いませんでした。
目撃者である行員から話を聞きます。
そして、似顔絵を作っていきましたが、
出来上がった3枚の絵には共通点がありませんでした。
実は、この銀行では予めこのような事態に備えて、
それぞれの行員が「目」「身長」「髪型」などと、
憶えるポイントが割り当てられていたんです。
しかし、目を憶えることになっていた女性行員は、
包丁を突きつけられたことで、
犯人の目を直視できず、
他の行員も予め指定されていた箇所以外は見ていません。
確かに多くの行員が強盗犯の顔を見ているはずなのに、
それを描くことができない…、
どうすれば絵にすることができるのか、
そう考えている時に、一報が入りました。
強盗犯が逃走中に事故を起こしたらしい
至急現場に向かう坂本さん。
しかし、犯人が乗り捨てたクルマは盗難車。
ここにも遺留品や指紋はありません。
ただ、このクルマに衝突されたクルマの女性なら、
犯人の顔を見ているかもしれません。
頭と左腕に重傷を負った被害者女性に面会するため、
入院中の病院を訪ねます。
幸いにも、彼女の意識ははっきりしていて、
しかも、犯人の顔を確かに見たといいます。
早速、病室で似顔絵の作成にとりかかります。
しかし、相手は怪我人。
長時間の証言には無理があります。
…そういえば、犯人が着ていたポロシャツの襟元に
"M"というイニシャルがありました。
痛みをこらえつつ証言してくれる女性の話を元に、
坂本さんは30分ほどで似顔絵を描き上げました。
この似顔絵も捜査資料に加わります。
しかし、一向に犯人へつながる情報が得られません。
事件から間もなく3ヵ月。
有料情報が得られないまま、月日は過ぎていきました。
そんなある日…
坂本さんの元へ一人の刑事がやってきました。
この写真の男、お前の似顔絵の男と同一人物じゃないか?
たしかに写真と似顔絵は酷似していました。
実はこの男、同じ管内で起きた空き巣事件の被害者。
しかし、彼の話を聞くうちに、
あの似顔絵に似ていることに気付いたため、
写真に撮っておいたのでした。
もしも、この男が銀行強盗の犯人なら、
部屋を捜索すれば何かが見つかるかもしれない、
そう考えた刑事と坂本さんは
家宅捜索令状を請求するために上司の元へと向かいました。
しかし…、
馬鹿か、お前たちは。
こんな似顔絵一枚だけで家宅捜索なんて出来るか
そう言われてしまいました。
それが当時の常識だったんです。
似顔絵以外の証拠がなく令状の請求は出来ません。
家宅捜索が出来なければ、
あの男が犯人かどうかを確認出来ない、
どうすればいいのか…?
俺はお前を信じる! 任せておけ
刑事はそう言うと、その空き巣被害者の部屋へと向かいました。
家宅捜索は出来なくても、
空き巣被害の状況を捜査するためなら、
部屋の中を検めることが出来ます。
ただし、相手は"被害者"。
何度も部屋を見ることは出来ません。
既に正式な検分は済ませているため、
チャンスはこの1回きり。
ここで何も出なければ…
あった…
刑事は笑みを浮かべました。
背後で刑事を見ていた"被害者"は焦れていました。
「何してんすか。いいかげん帰って下さいよ」
その言葉に刑事は答えます。
帰りますよ。でも…
あなたも一緒に来てもらいますけどね
刑事が見つけたのは、
坂本さんが描いたポロシャツそのものだったのでした。
取り調べで彼は銀行強盗の犯行を自供、
彼は捜査状況を知りたいと考え、
警察官に接触するために空き巣被害を偽装、
実は、犯行後に警察と接触したがる犯人は多いといいます。
手掛かりのない事件で、
唯一の手かがりとなった1枚の似顔絵。
ここから似顔絵捜査の認識が大きく変わったそうです。
現実には、坂本さんが似顔絵捜査の意義を説き始めてから、
30年の年月を要しているそうです。
↧
ビーバップ!ハイヒール「1枚の絵で犯人を追い詰める!似顔絵捜査官の事件簿」 その2
↧