ダーウィンが来た！「“悪役”ハイエナ意外な素顔」その1 ～ハイエナのような奴はライオン？-

個人的に、人間の価値観のみで自然界を語るとか、
無闇な擬人化が好きではない私です。

百獣の王ライオン

なんて言葉も好きではありません。
引き合いに出されるハイエナについても、

ハイエナのような～

なんて喩えもあるぐらいで
明鏡国語辞典には

ハイエナ[hyena]-名-
インド・アフリカに分布する食肉目ハイエナ科の哺乳ほにゅう類の総称。体形はオオカミに似るが、前肢が後肢より長い。夜行性で、主に死肉をあさる。シマハイエナ・ブチハイエナ・カッショクハイエナなど。

とあり、大辞泉では

ハイエナ〖hyaena〗
1 食肉目ハイエナ科ハイエナ亜科の哺乳類の総称。体長80～160センチ。体形はオオカミに似るが、吻(ふん)が太く、腰部が低い。分類上はジャコウネコに近く、肛門(こうもん)付近に臭腺(しゅうせん)をもつ。歯やあごが丈夫で、死肉を骨ごとむさぼり食う。夜行性。灰色に黒い縞模様のあるシマハイエナ、黒い斑点のあるブチハイエナなど。主にアフリカに分布。たてがみいぬ。
2 《1が死肉にむらがるさまから》金銭や利権などに貪欲な者をあざけっていう語。

となっています。

事実とは言い切れない説明も含めて、
気に入らない言葉が並んでいます。
そんなことを気にしている私も、
人間の価値観で彼らを見てしまっているのですが。

アフリカのサバンナで最も繁栄されている肉食獣とされているのがハイエナ。
ハイエナとはハイエナ科の総称ですが、
この分類を見て見ますと、

哺乳綱 - 亜綱 - 獣亜綱 - 下綱 - 真獣下綱 - ローラシア獣上目
- ネコ目 - ネコ亜目 - ハイエナ科

ということで、どちらかといえばネコに近く、
ジャコウネコから進化したと考えられています。

特にテレビでよく映し出されているのはこのブチハイエナでしょうか。
雨期のアフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園。
草が繁るこの時期にはたくさんの動物たちでサバンナが賑わいます。
ブチハイエナの体重は70kgほど、
これはチーターやヒョウよりも重く、
サバンナではライオンの次に大きい肉食獣になります。

この穴。この穴に向かって1頭のブチハイエナが低いウシのような声を出しますと、
出てきました。

ハイエナの子供です。
この巣穴は元々ツチブタなどが掘ったもので、
それをハイエナが入口を広げるなどして改修、
子育ての時に使用しています。

中はこのようになっていて、
通路は狭く、外からの侵入者を拒否しています。
また、体の細長いイタチの類いなどが入ってきても、
他の出入り口から出られるようにもなっています。

ハイエナの授乳期間は長く、1年以上。
この巣穴を使用するのは10ヵ月ほど。
その長期間子育て専用の巣穴に守られて、
ハイエナの子供たちは育ちます。

ハイエナの群れが食事中のライオンを見つけました。
彼らはそれを遠巻きして近づきます。
そのうち、ライオンは満足したのか、
その場を立ち去り、そして群がるのがハゲワシとハイエナたちです。

ライオンにはもう食べられないものでも
ハイエナたちにとってはご馳走です。
骨の1/4は蛋白質で、
骨髄には脂肪や貴重なビタミンなどの栄養がたくさん含まれています。
多くの肉食動物は骨を食べることが出来ませんが、
ハイエナは違います。
番組で動物園のハイエナのアゴの力を計測してみますと、
1.78kN(1kN≒100kg重)で、
ライオンの場合は0.86kNと、
2倍もの咬合力があります。
これは肉食動物最強クラス。
また、ハイエナの消化能力も格別です。

これはハイエナの糞。
ハイエナは肉も骨もほとんど消化吸収出来るため、
体外に排出される糞にはカルシウムぐらいしか含まれていません。
他の肉食動物は獲物の30％を残してしまいますが、
ハイエナたちはそのほとんど100％を
無駄なく栄養にすることが出来るのです。

ハイエナたちが最も活動的になるは夜です。
優れたハンターでもあるハイエナたちは、
60km/hのスピード、並外れたスタミナに加えて、
群れのチームワークで獲物を捕らえています。

そうして仕留めた獲物を食べていると、

ライオンたちがやってきました。
ライオンたちはハイエナを追い払うと我が物とした食料を食べ始めます。
この時、ライオンに追い立てられて、
殺されてしまうハイエナもいます。
ライオンが食料を自らの狩りで獲得している割合は半分以下。
対してブチハイエナの場合は60％以上を自分たちで獲得しています。
少なくともブチハイエナから見れば、
力尽くで獲物を横取りしているのはライオンということになり、
人間の価値観でいえば、
ライオンこそ、「ハイエナのような奴」なのかもしれません。

…続きます。