軍師官兵衛第48話「天下動乱」～残された人質・妻女たちの戦い光と栄、そしてガラシャの死～

上杉討伐のため、徳川家康は東へと向かいます。
それに合わせて、背後の石田三成が挙兵の動きを見せ、
この時、豊臣恩顧の大名たちは
どちらに味方するかの決断を迫られました。
三成は徳川に味方する大名への牽制として、
あるいは自軍への味方とすべく、
大坂にいる各大名の妻女を人質に取ることにします。
実際のところ、ここで人質に取ったとはいうものの、
大坂に住まわせている大名の家族たちには、
元々、そういう性質もあったのでしょう。
後の徳川政権でも、大名の正室を江戸住まいさせて、
それを人質としていましたし。

徳川に味方することにした大名は、
その人質のことも頭に入れておかねばなりませんでした。
細川家の場合、忠興は大坂の屋敷に残した家臣に対し、
「その際には妻を殺し、腹を切り供をせよ」と言い残していて、
いざという時には、自身と細川家の足枷となるなということなのでしょう。
黒田家の場合、長政の生母・光と正室・栄が大坂にいて、
彼女たちを脱出させることにしていました。
そのために、黒田家家臣の中でも
最も信頼のおける栗山利安(善助)、母里友信(太兵衛)、
宮崎重昌(助太夫)を大坂に残していました。
これは元々、長政の発案ではなく、如水からのものだったといいます。
黒田家の外交としても、徳川家から娶った栄を死なせるわけにはいかない、
そういう考えもあったことでしょう。
そして、もしもそれに失敗した場合、
光、栄を殺し、三人にも自害せよと命じてあったようですから、
細川忠興の命令も当時としては特異な考え方ではなかったかもしれません。
忠興の場合は家臣にすら、妻の身を託せないという
独特の嫉妬心もあったかもしれませんが…
その脱出劇の劇中の描写は概ね「黒田家譜」に沿ったものだったようで、
(井上九郎右衛門の名はない)
光、栄に俵に入ってもらい、家臣らも屋敷から脱出することが出来ました。
しかし、最終目的地の中津までは遠い道程、
差し当っては、舟番所に咎められず目の前の木津川を越えねばなりません。
ここで足踏みをすることになったものと思われますが、
そんな時、背後に大きな炎が見えました。
火元は細川家の屋敷。
正室・ガラシャ(玉)が家臣に胸を突かせ、
放たれた火が周囲に広がり大火となっていたのです。
豊臣の家臣たちは狼狽し、川の番人も監視どころではなくなってしまいました。
その隙を逃さず、黒田家一行は無事木津川を渡り、
遠く九州へと向かったのでした。
他にも徳川についた多くの大名家で人質を逃がそうと苦心していたようです。
きっと、その中には、細川家から出た火によって助かったものたちもいることでしょう。
三成もガラシャの死後は強硬な人質作戦は中止にしているとも。
ガラシャたちの自死により、救われたのは
光や栄だけではないのかもしれませんね。

歴史秘話ヒストリア「強く！激しく！美しく！戦国を生きた女たち」その2
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